化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

【理系就活】2025年に求められるスキルと修士・博士課程の過ごし方

2025年版 トップ10スキル 少し古い話ですが、2020年10月に世界経済フォーラムで発表された主にビジネスパーソンに2025年に求められるトップ10スキルの内容を、どこかで目にした方は多いのではないでしょうか。 そのスキルの内容は以下の10種です。 引用 Worl…

男子理系学生は大学教員になる進路は諦めよ!!

大学関連のニュースを目にする方は、最近は、東京大学の女性教員300人採用計画のような、女性教員の採用を加速させる取り組みのニュースを目にした方もいるのではないかと思います。 まずは現状を整理しましょう。 2022年現在、大学では女性研究者や女性教員…

【分析化学】過マンガン酸カリウム滴定とCODの測定

過マンガン酸カリウム滴定法 過マンガン酸カリウム滴定法は、頻繁に用いられる滴定法の1つである。 過マンガン酸カリウム滴定法の利点の1つは、終点の検出に指示薬がいらないことである。過マンガン酸カリウム標準溶液は、それ自体がMnO4-の赤紫色をしてお…

博士号は足の裏の米粒ってイヤミなの?

大学などで研究を行い、論文を執筆し、1st author(第一著者)の論文を2報や3報とacceptまで準備し、さらに博士論文の執筆や、海外ではDefense(ディフェンス)とも呼ばれる審査会や公聴会をやり遂げて得ることのできる資格が博士号です。 修士課程などの大学院…

【理系研究発表】卒論発表のスライド具体例とポイントをわかりやすく解説

大学の理系の学部4年生は1年間程度研究室に配属され、卒業研究を行い、卒業論文を執筆し、その内容を審査する教員の前で発表することが多いと思います。この記事では、参考文献のnature communicationに発表されている論文を題材に使用して、卒論発表(研究発…

ゼミで質問が思いつかないときは"なぜ"を活用するといい3つの理由

この記事は研究室やゼミに配属されて日が浅い学生を主な対象にしています。 大学で研究室に配属されると、順番に発表者が教科書の一部の担当部分や最近の論文、本人の研究の進捗などを発表するゼミやセミナーなどが実施されていることが多いです。 発表者が…

【分析化学】分配平衡・分配係数・分配比と抽出

分配平衡・分配係数・分配比 分配について考えるために、物質が溶媒に溶けることについて考える。 塩や極性分子は水によく溶ける。一方で、無極性の有機分子は水に溶けにくい。 反対に、ベンゼンのような無極性の有機溶媒には、塩や極性分子は溶けにくいが、…

【分析化学】錯滴定の原理と最適な試薬の条件

錯滴定の原理 錯生成反応を利用することで、金属イオンを滴定する方法を錯滴定という。 特にキレート試薬を用いるキレート滴定は一般に広く知られており、その中でもエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いるEDTA滴定はよく知られている。 ただし、全ての錯生成…

【そのD進、ちょっと待った!】学振DC不採択者へのメッセージがTwitterで話題に!

そのD進、ちょっと待った! いわゆる学振の結果が出たタイミングで博士課程への進学(D進)について、学振に不採択だった学生へのメッセージが話題になっているので紹介します。 ※記事内容は特に学振(DC)不採択者にとって、酷な内容となっている可能性がありま…

【学会発表】研究発表ポスター製作の時の8つのポイント

初めての学会発表は、まずはポスター発表と促される学生も多いのではないでしょうか? 一般的に、プレゼンテーションソフトを用いる口頭発表と比べると、ポスター発表の方が、発表件数も多く、敷居が低い傾向があります。この記事では、ポスター製作するとき…

データから見る、"化学の研究は化学の分野でしか利用されていない"のか?

例えば、触媒の開発の研究を行うとき、触媒分野の論文だけを読んで、参考にしながら研究を進めていくのでしょうか? 実際は、ほとんどの研究者は違う分野の論文も読みながら、研究を進めることでしょう。 例えば、高効率、高耐久な排ガス触媒の開発を行うと…

企業の新規採用研究職における博士号保持者の割合は減少傾向が続く

2022年8月に公開された科学技術指標2022の結果から、メディアを中心に日本の科学技術力の低下が話題になっています。 学生にとっては、論文数やTop1%論文数と同じくらい、以下のデータも気になる人がいるのではないでしょうか? 引用文献より引用 企業の新規…

【有機化学】二分子求核置換反応(SN2反応)

二分子求核置換反応(SN2反応) ハロアルカンの炭素-ハロゲン結合は、炭素原子とハロゲン原子の電気陰性度の差によって、大きく分極している。 炭素原子は正に帯電しているため、孤立電子対をもっている求核剤と反応することで新しい結合が生成する。 ハロゲン…

研究の申請書が"新規性"だけではダメなワケ

研究を行ううえで、研究費や予算を獲得するために、申請書を書くいたり、プレゼンをすることがあります。こういった場合には、その研究内容を申請書にまとめたり、研究内容をプレゼンテーションすることでしょう。 このとき研究テーマは、これまで研究された…

【放射化学】核反応に関わる粒子の種類・核反応式

核反応に関わる粒子の種類 核反応には多くの粒子が関わります。 最も一般的なものは、図1に示すように、陽子、中性子、アルファ粒子、ベータ粒子、陽電子、ガンマ線です。陽子(、とも表される)と中性子()は原子核の構成要素です。 アルファ粒子(、で表…

【放射化学】概要・原子核結合エネルギー・質量欠損・原子核の安定性の解説

原子核の化学 放射線や核に関する化学は、1896年にフランスの物理学者アントワーヌ・ベクレルが発見した放射能に始まります。その後、20世紀から21世紀にかけてエネルギー、医療、地質など様々な技術の基礎となりました。 原子の原子核は陽子とを除く中性子…

有機金属構造体(MOF)の合成方法の概要

有機金属構造体 MOF (Metal-Oraganic framework) 有機金属構造体(MOF, Metal-Oraganic framework)は、ここ30年ほどの間、材料分野で注目されている材料の1つです。 MOFは分子サイズで見ると、穴(細孔)を有しており、金属と有機配位子の組み合わせによって細…

冷やした果物がおいしい理由・ぬるい清涼飲料水が美味しくない理由

糖と温度の関係 甘さを感じる主成分は糖である。 フルクトースは最も甘い糖のうちの1つであり、グルコースと比べると約2倍甘いと言われており、スクロースよりも甘い。 このフルクトースは、熱すると甘味が減少する。これは低温では甘味を強く感じるピラノー…

【物理化学】理想気体の混合の各変化

理想気体の混合の変化 2つの系に入ったmolの気体Aとmolの気体Bの混合を考える。 ここでどちらの系も温度、圧力であるとする。ここでは気体を理想気体とする。 ここでは混合前を、混合後をで表す。 混合前の状態では、それぞれの気体の化学ポテンシャルは以下…

【物理化学】ギブズ-デュエムの式:示強性変数の変化に関する式

ギブズ-デュエムの式(ギブス・デュエムの式) 2成分の混合物のギブズエネルギーは以下の式で与えられる。 この全微分は以下のようになる。 この式を次の多成分系のギブズエネルギーの全微分式と比較する。 このようにして次のギブズ-デュエム式(Gibbs-Duhem式…

【物理化学】化学ポテンシャル(部分モルギブズエネルギー)

化学ポテンシャル(部分モルギブスエネルギー) 部分モル量は、体積以外の示量性の状態量について定義することができる。 溶液を構成する物質については成分の部分モルギブスエネルギーは、その成分の化学ポテンシャルとして以下のように定義することができる…

【物理化学】部分モル体積の求め方の図的方法

部分モル体積の求め方 部分モル体積の求め方として、図的方法といわれるものがある。 ここでは、2成分系の場合について考える。この時、平均モル体積は以下の式で求めることができる。 は全体積である。とは成分AおよびBの物質量 (mol)である。とは成分Aおよ…

【分析化学】難溶性固体の溶解度積と共通イオン効果・異種イオン効果

難溶性の塩と共通イオン効果 難溶性の塩の場合、溶解平衡は以下の式の左側に非常に大きく偏った溶解平衡と考えることができる。 難溶性の塩の溶解度積はとすると、以下のように取り扱うことができる。 溶解度積は、それぞれのイオンの濃度が変化した場合でも…

【論文紹介】Ca-Sn合金二次電池の充放電時の電極の構造変化が解明

カルシウム(Ca)二次電池は、理論エネルギー密度が高い、安全性が高い、原料である天然資源が豊富であるといった点から、ポスト・リチウムイオン電池として注目されている。しかしながら、実用化には課題が残っており、今も研究が世界中で行われている。 今回…

【電池用語】ハーフセルとフルセル:リチウムイオン電池の用語解説

ハーフセルとフルセル リチウムイオン電池やポスト・リチウムイオン電池の研究開発において、ハーフセルとフルセルが使われる。 ハーフセルは正極や負極にLiなどを用いたセル(電池)である。 フルセルは正極と負極の両方に通常の電極材料が用いられているセル…

【物理化学】ギブズの相律と自由度・ギブズの相律の導出

自由度 物理化学や熱力学において、系の状態は温度、圧力、モル分率などの組成などの示強性変数によって決定される。こういった変数の中で、系の状態を決定するために自由に(独立に)定めることのできる示強性変数の数を自由度という。 ギブズの相律の導出 こ…

【分析化学】緩衝液と緩衝作用・緩衝液のpHの一般式

緩衝液と緩衝作用 溶液に酸や塩基を加えたり、溶液を薄めても、pHが大きく変化しない溶液を緩衝液という。 そして緩衝液によるpHを一定に保つはたらきのことを緩衝作用という。 緩衝液は弱酸とその共役塩基、もしくは弱塩基とその共役酸の混合溶液である。 …

【論文紹介】Ni触媒による鈴木クロスカップリングによって有機フッ素化合物の合成が報告

ここ数十年で、フッ素を含む分子は薬として利用されるようになっており、その割合は全体の30%以上になっている。特に、gem-ジフルオロメチル類のような有機フッ素化合物は、薬効作用から薬に用いられる化合物として注目されている。 図1の(a)に紹介されてい…

【分析化学】電解質の溶解の水の比誘電率とイオンの水和の影響

水が電解質を溶かす理由 水が電解質を溶かす理由については、未解明な点もあるが、水の大きな誘電率とイオンの水和が主な要因であると考えられている。 比誘電率の効果 距離((m))離れた電荷、と(C)の間に働く力(N)はクーロンの法則で考えることができる。 は…

【化学ニュース】水へ塩素と紫外線の処理で有害な物質の生成が促進される可能性

有害性が危険視されているハロベンゾキノン類 ハロベンゾキノン類(HBQs)は水の消毒の副生成物として、飲料水やプールから検出されることが最近報告されている。さらに、ハロベンゾキノンは毒性が高く、ハロベンゾキノン類は、現在規制がかかっているトリハロ…