錯滴定の原理 錯生成反応を利用することで、金属イオンを滴定する方法を錯滴定という。 特にキレート試薬を用いるキレート滴定は一般に広く知られており、その中でもエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いるEDTA滴定はよく知られている。 ただし、全ての錯生成…
そのD進、ちょっと待った! いわゆる学振の結果が出たタイミングで博士課程への進学(D進)について、学振に不採択だった学生へのメッセージが話題になっているので紹介します。 ※記事内容は特に学振(DC)不採択者にとって、酷な内容となっている可能性がありま…
初めての学会発表は、まずはポスター発表と促される学生も多いのではないでしょうか? 一般的に、プレゼンテーションソフトを用いる口頭発表と比べると、ポスター発表の方が、発表件数も多く、敷居が低い傾向があります。この記事では、ポスター製作するとき…
例えば、触媒の開発の研究を行うとき、触媒分野の論文だけを読んで、参考にしながら研究を進めていくのでしょうか? 実際は、ほとんどの研究者は違う分野の論文も読みながら、研究を進めることでしょう。 例えば、高効率、高耐久な排ガス触媒の開発を行うと…
2022年8月に公開された科学技術指標2022の結果から、メディアを中心に日本の科学技術力の低下が話題になっています。 学生にとっては、論文数やTop1%論文数と同じくらい、以下のデータも気になる人がいるのではないでしょうか? 引用文献より引用 企業の新規…
二分子求核置換反応(SN2反応) ハロアルカンの炭素-ハロゲン結合は、炭素原子とハロゲン原子の電気陰性度の差によって、大きく分極している。 炭素原子は正に帯電しているため、孤立電子対をもっている求核剤と反応することで新しい結合が生成する。 ハロゲン…
研究を行ううえで、研究費や予算を獲得するために、申請書を書くいたり、プレゼンをすることがあります。こういった場合には、その研究内容を申請書にまとめたり、研究内容をプレゼンテーションすることでしょう。 このとき研究テーマは、これまで研究された…
核反応に関わる粒子の種類 核反応には多くの粒子が関わります。 最も一般的なものは、図1に示すように、陽子、中性子、アルファ粒子、ベータ粒子、陽電子、ガンマ線です。陽子(、とも表される)と中性子()は原子核の構成要素です。 アルファ粒子(、で表…
原子核の化学 放射線や核に関する化学は、1896年にフランスの物理学者アントワーヌ・ベクレルが発見した放射能に始まります。その後、20世紀から21世紀にかけてエネルギー、医療、地質など様々な技術の基礎となりました。 原子の原子核は陽子とを除く中性子…
有機金属構造体 MOF (Metal-Oraganic framework) 有機金属構造体(MOF, Metal-Oraganic framework)は、ここ30年ほどの間、材料分野で注目されている材料の1つです。 MOFは分子サイズで見ると、穴(細孔)を有しており、金属と有機配位子の組み合わせによって細…
糖と温度の関係 甘さを感じる主成分は糖である。 フルクトースは最も甘い糖のうちの1つであり、グルコースと比べると約2倍甘いと言われており、スクロースよりも甘い。 このフルクトースは、熱すると甘味が減少する。これは低温では甘味を強く感じるピラノー…
理想気体の混合の変化 2つの系に入ったmolの気体Aとmolの気体Bの混合を考える。 ここでどちらの系も温度、圧力であるとする。ここでは気体を理想気体とする。 ここでは混合前を、混合後をで表す。 混合前の状態では、それぞれの気体の化学ポテンシャルは以下…
ギブズ-デュエムの式(ギブス・デュエムの式) 2成分の混合物のギブズエネルギーは以下の式で与えられる。 この全微分は以下のようになる。 この式を次の多成分系のギブズエネルギーの全微分式と比較する。 このようにして次のギブズ-デュエム式(Gibbs-Duhem式…
化学ポテンシャル(部分モルギブスエネルギー) 部分モル量は、体積以外の示量性の状態量について定義することができる。 溶液を構成する物質については成分の部分モルギブスエネルギーは、その成分の化学ポテンシャルとして以下のように定義することができる…
部分モル体積の求め方 部分モル体積の求め方として、図的方法といわれるものがある。 ここでは、2成分系の場合について考える。この時、平均モル体積は以下の式で求めることができる。 は全体積である。とは成分AおよびBの物質量 (mol)である。とは成分Aおよ…
難溶性の塩と共通イオン効果 難溶性の塩の場合、溶解平衡は以下の式の左側に非常に大きく偏った溶解平衡と考えることができる。 難溶性の塩の溶解度積はとすると、以下のように取り扱うことができる。 溶解度積は、それぞれのイオンの濃度が変化した場合でも…
カルシウム(Ca)二次電池は、理論エネルギー密度が高い、安全性が高い、原料である天然資源が豊富であるといった点から、ポスト・リチウムイオン電池として注目されている。しかしながら、実用化には課題が残っており、今も研究が世界中で行われている。 今回…
ハーフセルとフルセル リチウムイオン電池やポスト・リチウムイオン電池の研究開発において、ハーフセルとフルセルが使われる。 ハーフセルは正極や負極にLiなどを用いたセル(電池)である。 フルセルは正極と負極の両方に通常の電極材料が用いられているセル…
自由度 物理化学や熱力学において、系の状態は温度、圧力、モル分率などの組成などの示強性変数によって決定される。こういった変数の中で、系の状態を決定するために自由に(独立に)定めることのできる示強性変数の数を自由度という。 ギブズの相律の導出 こ…
緩衝液と緩衝作用 溶液に酸や塩基を加えたり、溶液を薄めても、pHが大きく変化しない溶液を緩衝液という。 そして緩衝液によるpHを一定に保つはたらきのことを緩衝作用という。 緩衝液は弱酸とその共役塩基、もしくは弱塩基とその共役酸の混合溶液である。 …
ここ数十年で、フッ素を含む分子は薬として利用されるようになっており、その割合は全体の30%以上になっている。特に、gem-ジフルオロメチル類のような有機フッ素化合物は、薬効作用から薬に用いられる化合物として注目されている。 図1の(a)に紹介されてい…
水が電解質を溶かす理由 水が電解質を溶かす理由については、未解明な点もあるが、水の大きな誘電率とイオンの水和が主な要因であると考えられている。 比誘電率の効果 距離((m))離れた電荷、と(C)の間に働く力(N)はクーロンの法則で考えることができる。 は…
有害性が危険視されているハロベンゾキノン類 ハロベンゾキノン類(HBQs)は水の消毒の副生成物として、飲料水やプールから検出されることが最近報告されている。さらに、ハロベンゾキノンは毒性が高く、ハロベンゾキノン類は、現在規制がかかっているトリハロ…
セリワノフ反応 セリワノフ反応 (Seliwanoff's test or Seliwanoff's reaction) はケトースとアルドースを識別する呈色反応である。 セリワノフはロシアの化学者 Feodor Feodorovich Selivanovに由来している。 糖のうち、ケトン基を含む糖はケトースであり…
試薬を実験に用いる際や、未知試料の分析を行う際には、正確な濃度の測定が重要となる。この決まった濃度の溶液を調製するために、欠かせないものが測容ガラス器具である。ここでは、精密な測容器であるメスフラスコ、ホールピペット、ビュレットについて解…
物質波 ミクロな視点では、電子のような粒子が波の性質をもつ。 アインシュタインの相対性理論によると、エネルギーと運動量の間には次の関係が成り立つ。 ここでは質量、は光の速さ、は運動量である。 光子の場合は、となるため、となる。 そこでとを用いる…
1eVのエネルギーをもつ光子の波長は何 nmとなるか? まずは 1eV J となります。 次に の式を用いることによって計算することができます。 は振動数、は波長、は光の速度、はプランク定数です。 nm となり1240 nmと求めることができます。
基底状態と励起状態 水素原子のスペクトルを観測すると、飛び飛びの波長のスペクトル線が観測される。これは、原子のエネルギー準位によって考えることができる。 エネルギー準位のうち、量子数の状態はエネルギーが最低の状態である。これを基底状態という…
ボーアの原子模型 ボーアは1913年に原子模型(ボーアの原子模型)を提案した。 ボーアは水素原子のスペクトル線の波長が飛び飛びの値で観測されることから、原子の構造を解明しようとした。このとき、ボーアが着目した原子模型は1911年にラザフォードが提案し…
水素原子のスペクトル線 水素ガスを入れた放電管に高電圧をかけると、放電して光が放出される。この光を分光器で波長毎に分けると、飛び飛びの波長のスペクトル線となっていることが観測される。これは、水素原子のスペクトル線であり、この波長は以下の式に…