化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

電位の貴と卑

電位の貴と卑 電位を比較するときに"貴"と"卑"と表現することがある。 一般的に貴は身分や位などが高いことを表し、卑は身分などが低いことを表す。 化学でもこの"貴"と"卑"が高低を表す際に利用されることがあり、例えば、貴金属と卑金属といった言葉はよく…

パルス法・パルス吸着法

パルス法 パルス法は、試料に気体分子をパルス状 (断続的) に導入し、導入した気体の量と排出された気体の量の差から 、試料の金属量や活性点量を測定する方法である。 パルス法は気体分子の吸着を利用する方法と触媒反応を利用する方法がある。 パルス吸着…

ラマン分光分析法とラマン散乱現象

ラマン分光分析法 ラマン分光分析法は分子振動に由来するラマン散乱スペクトルを測定する分析方法である。 分子振動による散乱スペクトルを測定するため、赤外吸収法と類似した測定方法である。 レーザー光を試料の局所部分に照射し、散乱ラマン線を測定する…

原子散乱因子の位相差

原子散乱因子 原子にX線を照射すると、X線の散乱が生じる。特にX線の波長 (エネルギー) が散乱によって変化しない散乱は弾性散乱といわれる。そして、この散乱されたX線の強度は原子散乱因子に比例する。 まず原子に照射するX線の波数ベクトルをとする。波数…

結晶の格子と基本単位格子・基本並進ベクトル・並進対称性

格子と基本単位格子とは 結晶を原子や分子の配列の繰り返しと考えることができる。これは具体的には、原子や分子の配列のうち1つの区間を考え、その区間の繰り返しによって結晶が構成されていると考えている。この1つの区間である単位構造が繰り返し配列され…

ウィグナー・ザイツセルとブリルアンゾーン

ウィグナー・ザイツセル ウィグナー・ザイツセル (Wigner-Seitz cell) とは、格子の格子点同士を結ぶ線分を垂直に二等分する面で囲まれた領域のことである。 結晶格子のウィグナー・ザイツセルは基本単位格子である。 ブリルアンゾーン 逆格子空間におけるウ…

原子によるX線の散乱と原子散乱因子

原子によるX線の散乱 原子は正の電荷をもつ原子核と、負の電荷をもつ電子から構成されている。 一方でX線は電磁波であるため、振動する電場をもつ。そのため、原子にX線を照射するとX線の振動する電場が荷電粒子を振動させる。この振動された荷電粒子が波源…

胃のレントゲン写真の撮影でバリウムを飲む理由

病院の検査ではレントゲン写真が使われる。 このレントゲン写真はX線を物質に照射し、透過したX線の透過像を撮影したものである。そのため、レントゲン写真は物質のX線の透過しやすさや吸収しやすさが反映される。そして、X線が物質に吸収された部分は白い影…

固有X線のKα1線とKα2線 

L殻の電子がK殻に移動する際に発生する固有X線がKα線である。 このKα線にはKα1線とKα2線がある。 まず、L殻には2s軌道のL1準位、2p1/2軌道のL2準位、二重に縮退した2p3/2軌道のL3準位が存在する。 このうち、L1準位からK準位への電子の遷移は禁制遷移である…

特性X線とモーズリーの法則

特性X線 (固有X線) 気体や金属に高エネルギーの電子などの粒子を当てると、物質の構成原子のエネルギー準位の低い内殻電子が原子外にはねとばされる。その結果、内殻電子が存在した軌道に空きが生じる。その内殻の空きへエネルギー準位の高い外殻の電子が入…

X線回折法(XRD法)

X線回折法 (XRD法) X線回折法 (X-ray diffraction法、XRD法) とは結晶や粉末にX線を照射し、そこで起きるX線の回折像やパターンを解析することで、結晶の原子の配列や分子の構造を調べる方法である。 結晶や分子にX線を照射すると、X線は結晶を構成する原子…

連続X線・白色X線と単色化の原理とシリコン結晶の関係

連続X線・白色X線 電磁波のうち、波長が0.01 nm~数十nmの電磁波をX線という。 X線の中でも、制動放射やシンクロトロン放射によって発生する連続スペクトルを示し、光のような広帯域のX線を連続X線もしくは白色X線という。そして、この白色X線から特定の波長…

X線回折・ブラッグ反射とブラッグの条件

X線回折・ブラッグ反射 X線が原子に当たるとX線は散乱される。そのため、多くの原子の集団にX線を入射すると、それぞれの原子によるX線の散乱が起きる。 このとき、散乱されたX線は、X線の波としての性質により干渉が起こり、X線の強度の強め合いや打ち消し…

動的共有結合化学を用いた正四面体の分子かごについての論文解説動画の紹介

www.youtube.com 今回は、Chemistry Wednesday (けむすい) さんによる論文解説動画を紹介します。 この動画は、動的共有結合化学 (Dynamic covalent chemistry, DCC) に関する論文*1を紹介している動画です。 動的共有結合化学 (DCC) とは、結合が非常に強い…

香水の香りの物質についての解説動画の紹介

www.youtube.com 今回はもろぴーさんの動画の紹介です。 この動画の内容は、一言でいうと”香水に含まれている成分について”の解説です。 香りは、香りの素となる香りの分子と鼻の粘膜にある嗅細胞の相互作用によって感じるといわれています。動画では、この…

錯体の配位数

錯体の配位数 錯体にて、中心金属原子に配位する原子または原子団の数を配位数という。 中心金属を取り囲み、中心金属と配位結合している原子や原子団を配位子という。その配位子の数は配位数となる。 金属イオンの種類によるが、配位数は2、4、6などである…

結晶の配位数と充填率

最近接原子と配位数 結晶を考える。このとき結晶中の、ある原子の中心から別の原子の中心までの距離を最近接原子間距離という。 例えば、単純立方構造では最近接原子間距離は格子定数となる。 また、結晶では、ある原子を中心として最近接原子間距離に位置す…

塩化ナトリウムのマーデルング定数の近似値の計算

塩化ナトリウムのマーデルング定数の近似値の計算方法 塩化ナトリウムのマーデルング定数を近似的に求める。 ここでは第三近接イオンまでのマーデルング定数への寄与について考える。 まず、塩化ナトリウムの構造のCl-イオンを原点とする。また、最近接イオ…

回折格子の格子定数

回折格子の格子定数とは、隣り合う二つのスリットの中心から中心までの距離である。 一方で、結晶格子の単位格子の大きさを表す定数のことも格子定数という。

結晶格子の格子定数:大きさを定める定数

格子定数とは 格子定数 (lattice constant, lattice parameter) とは、結晶格子の単位格子の大きさを表す定数である。 格子定数は単位格子の三つの稜 (辺) a、 b、 cの長さと、三つの稜 (辺) a、 b、 cがなす三つの角α、 β、γの6つで表される。一般的にa軸と…

導体・半導体・絶縁体:電気伝導性による分類

物質は電圧をかけた場合の電流の流れやすさである電気伝導性によって導体、絶縁体、半導体の3つに分類することができる。 導体 導体 (conductor) は電気をよく通す物質である。金属の電気伝導性は高く、金属は導体として知られている。また、金属のように電…

電子軌道の遮蔽と有効核電荷・貫入とは

遮蔽とは 原子は原子核とその周りの電子によって構成されている。 そして原子核と電子の間にはクーロン力が働き、電子は原子核に引き寄せられている。 まずHe原子を考える。He原子は、1s軌道に2個の電子を持っている。そして、この1s軌道の電子は原子核の+2…

バーチャルケミストYouTuberの"ゆれあ"の自己紹介動画

www.youtube.com バーチャルYouTuber、通称VTuberも多くなってきたのではないでしょうか。 新たな化学系のVTuberが誕生したようですので、ここで動画とともに紹介いたします。 今回、紹介している動画は、バーチャルケミストYouTuberのゆれあさんの自己紹介…

マーデルング定数:イオン結晶の静電ポテンシャルを表す定数

マーデルング定数 マーデルング定数とは、イオン結晶の結晶構造によって定まる結晶格子の静電ポテンシャルを定める定数である。 結晶内のあるイオンを原点とし、クーロン力による反対符号イオンとの引力、同符号イオンとの斥力を無限遠まで順次計算すると、…

2019年ノーベル化学賞・リチウムイオン電池の解説動画紹介

2019年のノーベル化学賞はリチウムイオン電池の開発に寄与した3人に贈られました。 授賞したのはジョン・B・グッドイナフ教授、M・スタンリー・ウィッティンガム教授、吉野彰氏の3名です。 さて、最近は、YouTubeに様々な動画を投稿する方が増えていますが、…

化学系VTuber:Twitterでも有名な"元素学たん"の自己紹介動画

www.youtube.com バーチャルYouTuber、通称VTuberも非常に多くなってきていると思いますが、化学系に限定すると動画を投稿する人はまだまだ少ないと感じています。 Twitterにて〇〇たんという名前で主に学術や様々な分野に関することをTweetする学術たんとし…

金属酸化物のバンドギャップと伝導帯の関係:Scaifeの報告

金属酸化物の半導体 金属酸化物などの半導体は、伝導帯と価電子帯がある。そして、この価電子帯と伝導帯の間の電子状態密度が0であるエネルギー領域をバンドギャップという。 金属酸化物の価電子帯は、主に酸素の2p軌道によって構成されていると考えられる…

フォノンと格子振動・フォノンのエネルギー

フォノンと格子振動 フォノンとは、固体を構成する原子の振動である格子振動を、エネルギーをもつ粒子と考えたものである。つまり、フォノンは格子振動の準粒子である。また格子振動を量子化したエネルギー量子がフォノンであると説明されることもある。 フ…

電気浸透流:キャピラリーに電圧を印加すると生じる流れ

電気浸透流とは 電気浸透流 (electro-osmotic flow, EOF) とはキャピラリーの両端に電圧を印加したときの溶媒自体の流れのことである。特にキャピラリー電気泳動において起こる。 キャピラリーとして用いるフューズドシリカキャピラリーにアルカリ性の溶液を…

準粒子:量子化された振動や波動を粒子とみなす

準粒子とは 準粒子とは、相互作用をもつ多粒子の集団による運動の中で、振動や波動が量子化され、粒子のように振る舞うため、粒子のように扱うことができるもののことである。 数学的には多粒子系の集団による運動は、空間的に広まった場として考えることが…