化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

ハイエントロピー合金とその特徴

ハイエントロピー合金とは ハイエントロピー合金もしくは高エントロピー合金 (High entropy alloy, HEA) とは、合金を構成する元素が5成分以上であり、その5成分以上の多成分がほぼ等原子組成比で、そして単相固溶体を形成する合金である。従来の合金の多く…

熱力学の第2法則:エントロピー増大の法則・クラウジウスの原理・トムソンの原理

熱力学の第2法則:エントロピー増大の法則とは エントロピーとは乱雑さの程度を表す量である。 そして、熱力学の第2法則はエントロピー増大の法則ともいわれ、膨大な数の粒子が関与しているときには、エントロピー(乱雑さ)が減少する方向には現象は進まな…

エントロピー:系の乱雑さの程度を表す量

エントロピーとは エントロピー (entropy, ) は熱力学的状態量の一つであり、系の乱雑さ、もしくは無秩序さの程度を表す量である。エントロピーが大きいほど乱雑さが大きいということができる。 エントロピーは、1865年にR.J.E. クラウジウス (Clausius) に…

エチレンジアミン四酢酸:EDTA

エチレンジアミン四酢酸:EDTA よく知られている多座配位子 (キレート試薬) として、エチレンジアミン四酢酸 (ethylenediaminetetraacetic acid, EDTA) があり、多くの金属イオンと安定な錯体を形成することが知られている。 エチレンジアミン四酢酸は、(HOO…

キレートとキレート効果:キレートの生成定数が大きい理由

キレート 一つの金属イオンに対して、配位することのできる配位原子 (錯形成官能基) を一つしかもっていない配位子を単座配位子、一つの配位子が配位原子を二つもっているものをニ座配位子という。そして、一つの配位子が配位原子を二つ以上もっているものを…

活量係数を求める式:拡張デバイ-ヒュッケルの式・デービスの変形式

デバイ-ヒュッケルの式 デバイ-ヒュッケルの式は活量係数を計算することができる理論式である。しかし、デバイ-ヒュッケルの式は非常に希薄な溶液でなければ適用できない。 デバイ-ヒュッケルの式はイオンiの電荷を、イオンの活量係数を、溶液のイオン強度を…

イオン強度とデバイ-ヒュッケルの極限法則(イオン強度の法則)

イオン強度とは イオン強度 (ionic strength) とは、水溶液の中に溶けている1種類のイオンまたは数種類のイオンの合計の示す働き (相互作用) の強さの尺度のことである。 イオン強度は、イオンの濃度を、個々のイオンの電荷数をとすると、次のように表される…

活量と活量係数・平均活量と平均活量係数

活量と活量係数とは 活量とは、混合理想気体や希薄な溶液などの理想体系の化学ポテンシャルと、実在溶液などの現実の系の化学ポテンシャルとの差を補正するために導入される熱力学的濃度のことである。濃度の表し方として、モル分率、質量モル濃度、モル濃度…

イオン反応とイオン反応式

イオン反応とは イオンの関与する反応のことをイオン反応 (ionic reaction) という。 主に電解質溶液内での反応をイオン反応というが、高温での溶融塩の反応、イオン移動による固相反応、X線やγ線などのイオン化放射線の照射による気体分子のイオン化などの…

核反応のクーロン障壁とクーロン障壁の大きさ

核反応のクーロン障壁 入射粒子が標的核に入射し、複合核を形成する核反応を考える。 このとき、複合核を形成するために必要なエネルギーの最低値をQ値といい、さらに複合核を形成する段階で必要となる運動エネルギー分も考慮した核反応を起こすために必要な…

モル濃度・容量モル濃度・モーラー

モル濃度 モル濃度は溶液の濃度の表し方の一つであり、単位は一般的にmol/Lである。(SI組立単位ではmol m-3である。) 1モル濃度 (mol/L) は1 Lの溶媒中に溶質1 molの物質を含む溶液である。 モル濃度の単位であるmol/Lは、Mとも表されることがあり、また、物…

【2019年 時事問題】ヘリウムが不足する"ヘリウム危機”の話

ヘリウムの特性と利用 周期表の18族の希ガスの中で最も軽いガスがヘリウムです。ヘリウムは軽いことや、不活性であることや、熱伝導性が高いことが特徴です。 このヘリウムを液化させた液体ヘリウムは原子量が小さく、原子間引力が弱いため、量子力学的零点…

スピルオーバー現象と逆スピルオーバー現象

スピルオーバーとは 金属と担体からなる固体触媒で、金属や金属化合物の表面に吸着された水素などの物質が、拡散によって触媒表面上や触媒の担体の表面上などを移動し、炭素や金属酸化物、固体酸などの担体へと移動する現象のことをスピルオーバー現象 (spil…

触媒回転頻度(TOF)と触媒回転数(TON)

触媒の性能を評価する際に活性、選択性、寿命の三点が重要視される場合が多い。 この触媒の活性を評価する基準として反応速度、触媒回転頻度 (触媒回転効率、ターンオーバー頻度、turnover frequency、TOF) 、触媒回転数 (ターンオーバー数、turnover number…

モル (mol):物質量の単位

モル (mol) とは モル (mole, mol) とは原子や分子、イオンの物質量の単位(物質の量の単位)です。モルは記号はmolで表されます。またモル (mol) は国際単位系 (SI単位系) のSI基本単位の1つであり、基本的な単位であるといえます。 1 molは約6.02 × 1023 (正…

ルシャトリエの原理:平衡移動の法則

ルシャトリエの原理とは 外部条件の変化と平衡の変化 温度変化の場合 圧力変化の場合 (気体による反応の場合) 平衡に関わる物質の濃度変化の場合 平衡に関わらない物質 (希ガスなど) の濃度変化の場合 触媒もしくは阻害剤を加える場合 アンモニア合成反応の…

滴定の反応による分類

滴定 容量分析を行う際に用いられる操作に滴定がある。一般的に滴定は、分析を行う目的物質を含む試料溶液に、濃度が既知であり、目的物質と定量的に反応する物質の溶液である標準液をビュレットから滴下する。そして、目的物質の全量が定量的に反応し終わっ…

逆滴定:反応が遅い試料に行う滴定法

逆滴定とは 逆滴定 (back titration)とは、容量分析における滴定法の一種であり、間接的に試料の量を求める方法である。残余滴定もしくは余剰滴定ともいう。 逆滴定では測定の対象となる試料溶液に、試料に対して過剰量となるように既知量の標準液を加えて十…

規定度:溶液1L中の溶質のグラム当量

規定度とは 濃度単位の一つに規定度 (nomality、N) がある。規定度とは、溶液1 L中に物質何グラム当量(eq) が含まれているかを表している。SI単位ではないため、モル濃度などと比べると使われる頻度は少ないが、定量分析などでは規定度が用いられていること…

オストワルトの希釈律:弱電解質の濃度と電離度の法則

オストワルトの希釈律とは オストワルトの希釈律 (オストヴァルトの希釈律、希釈律、希釈の法則) とは弱電解質の濃度と電離度に関する法則である。 ドイツのF・W・オストワルトによって提唱された。 弱電解質の電離していない電解質分子と電離したイオンの間…

希釈と計算式・希釈度・希釈熱

希釈とは 溶液に純溶媒を加えて濃度を薄める操作を希釈という。 純溶媒と溶質を混合することを溶解というが、希釈も混合の一種であるといえる。 希釈するために、採取する元の溶液 (濃い溶液) からとる物質量と希釈溶液中の物質量は等しくなる。そのため、元…

希釈効果:滴定の体積増加による影響

希釈効果とは 滴定などの容量分析を行うとき、滴定液を滴下することによって、測定する溶液の体積が増加し、この体積増加によって濃度が低くなる。このことを希釈効果 (dilution effect) という。 この希釈効果は理論滴定曲線からのズレに相当する。しかし、…

チンダル現象:微粒子による光の散乱現象

チンダル現象とは 微粒子による光の散乱現象のことをチンダル現象 (ティンダル現象、チンダル効果) という。 特にコロイド溶液やエアロゾルなどに光を当てたときに、微粒子によって光が散乱されることで、光の通路が光って見える。 このチンダル現象は分子や…

分析濃度と平衡濃度

分析濃度と平衡濃度 分析濃度とは、溶解した物質の全濃度のことであり、と表される。よって、溶液中の物質のすべての化学種の濃度の和がとなる。 平衡濃度は、溶解した物質のある一つの化学種の濃度でありと表される。 分析濃度、平衡濃度はモル濃度で表され…

質量モル濃度:温度や圧力に依存しない濃度

質量モル濃度とは 質量モル濃度 (molality, m) は濃度を溶媒1 kg中に溶けている溶質の物質量 (mol) で表すものである。 単位は mol/kg となる。 また、1 mol/kg を1モーラル (molal) ということがある。 質量モル濃度は、体積に関する量を使用しないため、温…

原子量・分子量・式量とは

原子量とは 元素の原子量とは、各元素の原子の相対的な質量を炭素原子を基準に表した値である。 炭素原子の同位体のうち、軽い質量数12の炭素12 (12C) の質量の1/12が1となる。相対的な質量を表すことから、相対原子量、相対原子質量ともいわれる。 以前は、…

ドルトン:Daとは

ドルトン:Daとは ドルトン(ダルトン、Da)とは、質量の単位であり、原子や分子、イオンなどの粒子の質量を表す際に使われる単位である。原子質量単位(amu)と同じである。 質量数12の炭素原子の質量(1.993 × 10-23)の12分の1の質量を1 Daとしている。 そのた…

チタンとチタニア・アルミニウムとアルミナの違い

チタンとチタニアの違い チタン (titanium) チタニア (titania) は別の物質です。 チタン(Ti)は金属、チタニアは酸化チタン(TiO2)であり金属酸化物です。 アルミニウムとアルミナの違い アルミニウム(aluminium)とアルミナ(alumina)も別の物質です。 アルミ…

フォルハルト法:銀滴定法

フォルハルト法とは 銀滴定の一つにフォルハルト (Volhard) 法がある。 フォルハルト法は銀と沈殿を形成する陰イオン(Cl-、Br-、SCN-)を定量する間接的な滴定方法である。 フォルハルト法は酸性溶液(HNO3)中で行われ、チオシアン酸塩の標準液を用いて銀イオ…

滴定の力価

滴定の力価とは 滴定を行う際に、力価 (タイター、titer)を利用することがある。滴定の場合の力価とは滴定剤1 mLと反応する分析成分の重さのことであり、通常単位はmgが用いられる。 ニクロム酸カリウム溶液の力価が1.325 mg Feという力価である場合を考える…