化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

ミラー指数・面指数(面を示すミラー指数・4つの整数のミラー指数と方位を示すミラー指数)

ミラー指数

結晶の性質は結晶の方位や面によって異なることがある。そのため、結晶の方位や面について議論をすることも多い。このときに、結晶の方位や面を指定するために、ミラー指数というものが用いられる。このミラー指数は鉱物学者のW・H・ミラーが結晶面を表す記号として採用したものである。

面を示すミラー指数

結晶中の座標軸を、互いに独立な3つのベクトルa_1, a_2, a_3で表す。

また、結晶中の面がそれぞれのベクトルのu倍、v倍、w倍の位置で座標軸と交わると考える。もし座標軸と交わらない場合は、u, v, wのいずれかは\inftyとなっている。

ここで、\left( \frac{1}{u}, \frac{1}{v}, \frac{1}{w} \right) のそれぞれを整数倍し、その整数を共に割り切る正の整数が1のみである(互いに素である)整数の組(h k l)を求める。

こうして求められる整数の組は、ある面に対してただ一つとなる。

この整数の組をミラー指数もしくは面指数という。また、面を示すミラー指数は3つの数字を丸かっこで囲んで表し、数字の間には","などは入れずに表記する。

ミラー指数の整数が負の数である場合は、その指数の上にバー (ー) をつけて ( 0 \overline{1} 0 ) (ゼロ イチ バー ゼロと読む) のように表記することが一般的である。

また、ベクトルa_1, a_2, a_3は基本並進ベクトルである必要はない。

結晶の構造の対称性から同等な結晶面全体を表す場合のミラー指数は{h k l}のように、数字を波括弧で囲んで表す。

 4つの整数の組のミラー指数(三方晶・六方晶)

三方晶や六方晶は、ある軸を中心として120° 回転させると同一の結晶構造となる。こういった結晶では、慣用的に4つの整数の組のミラー指数が使われる。

ベクトルcを回転軸に平行な座標軸とする。回転軸と直交し、ぞれぞれが角度120° をなすような座標軸をa_1, a_2, a_3とする。そして、a_1, a_2, a_3, cで表される座標軸と結晶中の面がどの位置で交わるかを考える。

ここで、結晶中の面がそれぞれのベクトルのu倍、v倍、w倍、x倍の位置で交わると考える。

ここで、\left( \frac{1}{u}, \frac{1}{v}, \frac{1}{w}, \frac{1}{x} \right) のそれぞれを整数倍し、その整数を共に割り切る正の整数が1のみである(互いに素である)整数の組(h k l m)を求める。

こうして求められる4つの整数の組は、ある面に対してただ一つとなる。

この整数の組をミラー指数とする。

ただし、面を指定するためには3つの整数の組で充分であるため、4つの整数の組は必ずしも必要ではない。また、この4つの整数の組(h k l m)のうち、h k lにはh + k + l = 0の関係が成り立つため、h k lの3つの整数のうち2つが求まると、あと1つを求めることができる。

方位を示すミラー指数

結晶中の座標軸を、互いに独立な3つのベクトルa_1, a_2, a_3で表す。

ある方位を表すベクトルAa_1, a_2, a_3と整数の組h, k, lを用いて次のように表されるとする。

A = ha_1 + ka_2 + la_3

このとき、[h k l]が方位を示すミラー指数である。方位を示すミラー指数の場合は3つの数字を角括弧で囲んで表し、面を示すミラー指数と同様に数字の間には","などは入れずに表記する。

また、結晶の構造の対称性等から等価な方位を表す場合のミラー指数は\langle h k l \rangleのように、数字を山括弧で囲んで表す。

 

パウリの排他原理とは

パウリの排他原理

パウリの排他原理とは、1つの原子内では、2個以上の電子が量子数で表されるエネルギーやスピンなどが同じ状態を同時にとることはないという原理のことである。

パウリの排他原理以外にパウリの原理パウリの禁制則パウリの禁制原理パウリの排他律ともいわれる。

原子内の電子は4つの量子数である主量子数、全角運動量量子数(方位量子数)、磁気量子数、スピン量子数によってその状態を示すことができます。パウリの排他原理は、この4つの量子数が全て同じ電子は、1つの原子中には存在しないというものである。

また4つの量子数の意味を考えると、まず主量子数、全角運動量量子数(方位量子数)、磁気量子数によって1sや2pなどのうち電子が2個入ることのできる軌道が1つ決まり、さらにスピン量子数が同じにならないということから、電子が2個入ることのできる軌道には、同じスピンの電子は入らない、つまり異なるスピンの電子が1つの軌道に入るという原理だと解釈することもできる。

歴史的経緯

パウリの排他原理は1924年にパウリによって提唱されたものである。このパウリが提唱したときはスピンが未発見であったため、1つの量子状態には2個の電子しか存在できないという原理を提唱していた。

さらに、フェルミ粒子やボース粒子に拡張され、パウリの排他原理は、2つ以上のフェルミ粒子は同じ量子状態となることはないという原理と記載されている場合も多い。フェルミ粒子は半整数スピンをもつ粒子であり、電子の他にミュー粒子やニュートリノ、陽子、中性子などが当てはまる。

DNAの糖・リン酸・塩基の構成と構造

DNAとは

DNAとは、デオキシリボ核酸の通称であり、2-デオキシリボヌクレオチドが3'-5'間のリン酸ジエステル結合で直鎖状に重合した高分子化合物である。

DNAの構成

このDNAの構成単位はヌクレオチドである。このヌクレオチドは糖、塩基、リン酸の3成分が結合したものである。

また核酸塩基が糖に結合したものはヌクレオシドという。

核酸の骨格となる糖には、RNAに含まれるD-リボースとDNAに含まれる2-デオキシ-D-リボースの2種類が存在する。D-リボースと2-デオキシ-D-リボースの構造の違いは、2位の炭素に結合するヒドロキシ基があるか無いかである。このヒドロキシ基が存在しないDNAの方が構造的には安定である。

この糖に塩基が結合する。

塩基 

核酸に含まれる塩基にはプリン塩基とピリミジン塩基の2種類がある。プリン塩基にはアデニン (A) とグアジニン (G) の2種類がある。ピリミジン塩基には、チミン (T) 、シトシン (C) 、ウラシル (U) の3種類がある。ウラシルはRNAのみに含まれ、DNAには含まれない。

核酸塩基には、通常の塩基以外に構造が修飾された修飾塩基が存在する。修飾塩基は量的に存在しないため微量塩基といわれる。

RNAの修飾は核酸の機能の発現に重要である。塩基が修飾されると核酸が正しく機能できるように構造が少し変化する一方で、正しく機能しない場合にはガン化することもある。

ポリヌクレオチド鎖の配列を表記するときは、一般的に核酸の塩基の配列のみで書き表す。つまりDNAの塩基配列は、塩基が結合したヌクレオチド配列を表している。

リン酸

核酸のポリヌクレオチド鎖は、隣り合うヌクレオチドの糖の3'-OH (ヌクレオシド中の3'位のOH基) と5'-OH (ヌクレオシド中の5'位のOH基) のリン酸ジエステル結合で連結されている。ポリヌクレオチド鎖は、一方の端に遊離の5'-OHもしくは、5'-OHがリン酸化された5'-Pをもっている。ここではリン酸基をPで表している。また、他方の端には3'-OHもしくは、3’-OHがリン酸化された3'-Pをもっている。このような糖がリン酸で橋かけし、ポリマーを形成することで、連結された構造はヌクレオチド残基に共通の構造である。

DNAの構造

DNAは2本の鎖から構成される。そして、DNAはこの二本鎖が螺旋状になった二重螺旋構造をとっている。二本鎖を構成するポリヌクレオチドの結合は逆向きであり、5'→3'の鎖と3'→5'の鎖が相補的に逆平行に配列している。また、二本のポリヌクレオチド鎖は相対する塩基間の水素結合によって結び付けられ、塩基対を形成している。

塩基対はアデニン (A) とチミン (T)、グアニン (G)とシトシン (C)の間のみで形成される。

またアデニンとチミンの間の水素結合は2つ、グアニンとシトシンの間の水素結合は3つである。そのため、加熱に対しては、グアニンとシトシンの結合の方が切断されにくい。

水素結合によって安定な相補対となった二本鎖ポリヌクレオチドは上から下へ右向きの螺旋になった構造をしている。この構造では、親水性のデオキシリボースとリン酸が外側に二重螺旋を形成し、親水性の低い塩基対が螺旋構造の内部にある。

DNAを外側から見ると、大きな溝と小さな溝が交互に存在している。特に大きな溝はDNAの働きを調節するタンパク質や酵素が結合する際に重要となる。

結合エネルギー・凝集エネルギー・格子エネルギーとは

結合エネルギー・凝集エネルギーとは

原子やイオンは凝集せずにちりぢりで存在している状態よりも、互いに近くに集まった状態でいる方がエネルギー的に安定である。そのため、原子同士が結合して、分子や結晶を形成している。

この原子やイオンがちりぢりで存在している状態と、互いに近くに集まって結合を形成している状態とのエネルギー差を結合エネルギー (bond energy)もしくは凝集エネルギー (cohesive energy)という。言い換えると、凝集エネルギーとは、凝集して結合を形成し、固体や液体状態である原子や分子を、互いに無限遠にまで引き離すために必要なエネルギーということができる。この凝集エネルギーの大きさは、凝集による安定化エネルギーと等しい。

希ガス元素の凝集エネルギーは、周期表の縦で比べると、下に行くほど大きくなる。また、希ガス元素の凝集エネルギーは典型元素の炭素やケイ素の凝集エネルギーと比べると非常に小さい。

結合エネルギーとポテンシャル曲線・原子間距離との関係

ここでは簡単のために、二つの原子での結合を考える。

二つの原子の距離である原子間距離をRとする。一般的に、原子間距離R\inftyとなるときのポテンシャルエネルギーを0とする。また、R → \inftyとなった状態が原子やイオンがちりぢりになった状態に相当する。

二つの原子の結合では、ポテンシャルエネルギーを縦軸、原子間距離を横軸とすると、二つの結合の関係は極小をとるポテンシャル曲線で表される。

 このポテンシャル曲線の極小の位置で結合が最安定となり、極小をとる原子間距離におけるポテンシャルエネルギーの絶対値が結合エネルギーである。

原子間に働く力F(R)とポテンシャルエネルギーV(R)の間には次の関係がある。

\displaystyle F(R) = - \frac{\partial V(R)}{\partial R}

ここで、 F(R) \lt 0である場合、原子間に引力が働いていることを表す。また、ポテンシャル曲線の極小をとる原子間距離をR_0とすると、R \gt R_0では原子間に働く力は引力となる。

 F(R) \gt 0である場合、原子間に斥力が働いていることを表す。R \lt R_0では原子間に働く力は斥力となる。

つまり、R \gt R_0である場合は原子間に引力が働き、R \lt R_0である場合は原子間に斥力が働き、原子間力が0となるR = R_0で原子間距離が保たれる。

格子エネルギーとは

原子やイオンがちりぢりである状態と固体結晶となった状態とのエネルギー差は格子エネルギー (lattice energy) といわれる。つまり、格子エネルギーとは結晶格子の結合エネルギーである。格子エネルギーは、結晶を結晶を構成する原子もしくはイオンがちりぢりである状態にするために、必要なエネルギーといえる。

イオン結晶の場合には、格子エネルギーはマーデルングエネルギーに補正を加えたものと等しくなる。

メッセンジャーRNA(mRNA)とmRNAの構造

メッセンジャーRNA (mRNA)・伝令RNAとは

RNAとはリボースを糖成分とする核酸である。このRNAの機能によってメッセンジャーRNAや運搬RNA、リボゾームRNAなどの分類がされている。

メッセンジャーRNAとは、RNAポリメラーゼによってDNAから転写されたRNAである。メッセンジャーRNAは伝令RNAともいわれ、mRNAと略されることも多い。

mRNAは鋳型となるDNAとは相補的な塩基配列をもっている。つまりDNA中の塩基のアデニン、チミン、グアニン、シトシンに対して、mRNAはそれぞれウラシル、アデニン、シトシン、グアニンをもっている。

mRNAの合成は、RNAポリメラーゼがDNAのプロモーター領域に結合し、転写を開始する段階で調節が行われる。

このmRNAは転移RNAを介してリボソーム (リボゾーム) で翻訳され、それぞれの塩基配列に対応するアミノ酸配列のタンパク質を合成する。

つまり、mRNAは、DNAから生合成され、タンパク質の合成の設計図に相当する。

mRNAの寿命は非常に短く数分程度であり、他のRNAと比較しても細胞内での寿命は短い。

mRNAの構造

mRNAは鋳型となったDNAの塩基配列と相補的な塩基配列をしている。mRNAの塩基配列の中で、タンパク質のアミノ酸配列を決定する部分をコード領域という。このコード領域の3'側、5'側それぞれに直接アミノ酸配列決定には関与しない非コード領域が存在する。

mRNAは基本的に一本鎖である。しかし部分的には分子内で二本鎖になっているものもある。

また真核生物の場合には遺伝子中にイントロンといわれる介在配列がある場合があり、これは転写後に取り除かれる。この取り除かれることをスプライシングという。

真核細胞のmRNAの5'末端には5'-5'三リン酸を介して、7-メチルグアノシン (m7G) が結合している。この修飾をキャッピングといい、この部分をキャップ構造という。

3'末端側にはポリアデノシン配列が結合され、この修飾をポリA添加という。

シャルガフの法則:DNAの塩基の残基数の経験則

シャルガフの法則 (Chargaff's rule)

シャルガフの法則とは、DNA中ではプリン塩基のアデニン (A) とチミン (T)の残基数は等しく、ピリミジン塩基のグアニン (G)とシトシン (C)の残基数も等しいという法則である。

それぞれの塩基に対応するアルファベットから、次のように表現されることもある。

A = T, G = C

シャルガフの法則はDNAが二重螺旋構造をとり、DNA中では塩基対はアデニン (A) とチミン (T)、グアニン (G)とシトシン (C)の間のみで形成されることによるものである。

このシャルガフの法則を利用することで、DNA中の塩基のうち、一種類の塩基の割合が分かると、残りの塩基の割合を求めることができる。

例えば、DNA中のアデニンの割合が20%である場合、チミンの割合も20%とわかる。その結果、グアニンとシトシンの割合の合計は100 - (20 + 20) = 60%となり、グアニンとシトシンはそれぞれ30%の割合で存在していることがわかる。

シャルガフの法則はDNAの二重螺旋構造の由来するものであるため、一本鎖のDNAでは当てはまらない。

シャルガフの法則とRNA

RNAは通常一本鎖分子であり、塩基組成には制約がない。そのため、RNAはシャルガフの法則に従わない。しかし、ウイルスの遺伝物質の二本鎖RNAはシャルガフの法則に従う。ただし、ウイルスの一本鎖DNAはシャルガフの法則には従わない。

シャルガフの法則の発見

DNAの構造を考えるとシャルガフの法則は当然のように思えるが、シャルガフの法則はDNAの構造が明らかになる前の1940年代にErwin Chargaffが発見した法則である。そして、シャルガフの法則はDNAの二重螺旋構造モデルに影響を及ぼした法則でもある。

Chargaffは、ろ紙クロマトグラフィーを利用したDNAの加水分解物の分離法や定量法を開発し、DNAの塩基組成がその生物に固有であることを発見した人物である。

ランベルト・ベールの法則:ランベルトの法則とベールの法則について

ランベルト・ベールの法則について

ランベルト・ベールの法則はランベルトの法則とベールの法則を組み合わせた法則である。

ランベルトの法則

光が媒質中を通過する時に、光の透過強度と光の入射強度を比較すると、光の透過強度が物質の厚さと吸収係数に対して指数関数的に減少するという法則をランベルトの法則という。

ここで、Iを透過光強度、I_0を入射光強度、\alphaは定数、lを光の通る距離である光路長もしくは溶液の厚みとするとランベルトの法則は次の式で表される。

 I = I_0 e^{- \alpha l}

また定数\alphaと吸光係数aの間には次の関係がある。

\displaystyle  \alpha = \frac{a}{\log_{10} e }

そのため、次のように書くこともできます。

 I = I_0 10^{- a l}

ベールの法則

溶液は光を吸収するときの吸光係数が濃度に依存するという法則をベールの法則 (Beer's law) という。

ここで、aを吸光係数、\epsilonをモル吸光係数、Cを試料溶液のモル濃度とすると、ベールの法則は次の式で表される。

 a = \epsilon C

このランベルトの法則とベールの法則を組み合わせた法則をランベルト・ベールの法則もしくは、ランバート・ベールの法則、ブーゲ・ランベルト・ベールの法則という。

ランベルト・ベールの法則

ランベルト・ベールの法則 (Lambert-Beer's law) は、ある単色光を分析試料の溶液に通すと、分子が単色光を吸収し、光の強度が試料の濃度と通過距離に対して指数関数的に減衰するというものである。

ここで、Iを透過光強度、I_0を入射光強度、\epsilonをモル吸光係数、Cを試料溶液のモル濃度、lを光の通る距離である光路長もしくは溶液の厚みとする。

ランベルト・ベールの法則を式で表すと次のようになる。

 I = I_0 10^{- \epsilon C l}

これはランベルトの法則の式にベールの法則の式を代入したものである。

モル吸光係数は、分子固有の値である。また、モル吸光係数が大きいほど、光を多く吸収する物質となる。

吸光度Aは次のように定義される。

 \displaystyle A = \epsilon C l = - \log \frac{I}{I_0}

また、\frac{I}{I_0}は透過度Tもしくは透過率といわれ、%単位で表されることも多い。

吸光度Aは濃度Cと比例関係にあるため、モル吸光係数がと光路長が決まっている状態で、吸光度の測定を行うと、濃度Cを算出することができる。