化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

量子化学

【量子化学】調和振動子と分子振動(波動方程式・分子構造・振動の自由度)

調和振動子 波動方程式を用いる例として有名なものに調和振動子がある。 調和振動子とは、バネを用いる際の実験や計算でよく使われるフックの法則に従って、位置エネルギーが上昇すると平衡点へ戻すような力が働き振動するものである。 化学では、二原子分子…

【量子化学】二粒子系の波動方程式の扱い方の解説

二粒子系の波動方程式 二粒子系の波動方程式は次のように考えることで、粒子1個の問題として取り扱うことができるようになり、簡単になる。 二粒子系 質量がとの2個の粒子が、それぞれ速度とをもっている。そして、位置エネルギーで運動しているとする。 こ…

物質波と電子波とドブロイの関係式

物質波 ミクロな視点では、電子のような粒子が波の性質をもつ。 アインシュタインの相対性理論によると、エネルギーと運動量の間には次の関係が成り立つ。 ここでは質量、は光の速さ、は運動量である。 光子の場合は、となるため、となる。 そこでとを用いる…

1eVのエネルギーをもつ光子の波長は何nmか?

1eVのエネルギーをもつ光子の波長は何 nmとなるか? まずは 1eV J となります。 次に の式を用いることによって計算することができます。 は振動数、は波長、は光の速度、はプランク定数です。 nm となり1240 nmと求めることができます。

【量子化学基礎】エネルギー遷移とボーアの振動数条件

基底状態と励起状態 水素原子のスペクトルを観測すると、飛び飛びの波長のスペクトル線が観測される。これは、原子のエネルギー準位によって考えることができる。 エネルギー準位のうち、量子数の状態はエネルギーが最低の状態である。これを基底状態という…

【量子化学基礎】ボーアの原子模型とボーア半径(電子の円運動の軌道半径)

ボーアの原子模型 ボーアは1913年に原子模型(ボーアの原子模型)を提案した。 ボーアは水素原子のスペクトル線の波長が飛び飛びの値で観測されることから、原子の構造を解明しようとした。このとき、ボーアが着目した原子模型は1911年にラザフォードが提案し…

【量子化学基礎】光電効果と仕事関数・光量子説

光電効果 光(電磁波)が物質に当たったとき、物質から電子が飛び出る現象を光電効果という。またこのとき飛び出した電子は光電子という。 光電効果を起こす限界となる波長を限界波長という。限界波長に対応する振動数を限界振動数という。この限界波長や限界…

【量子化学基礎】エネルギー量子と電磁波の基本式

エネルギー量子 プランクは、熱放射のスペクトルと温度について研究を行い、電磁波(光)が物質に出入りするときのエネルギーの受け渡しの大きさが光の振動数に比例する、飛び飛びの値しか許されないと仮定すると、実験結果と一致することを発見した。つまり、…

光電効果・内部光電効果と外部光電効果

光電効果 光電効果とは、物質に光が当たったときに、光のエネルギーが消費され、電子が放出される現象である。このとき、物質の外部に飛び出した電子は光電子といわれる。また、気体の原子や分子などから光電子が放出されイオンになる過程を光イオン化という…

時間に依存しないシュレーディンガーの波動方程式

時間に依存しないシュレーディンガーの波動方程式 ポテンシャルが時間に依存しない場合、波動関数を時間のみに依存する部分と場所のみ依存する部分に分離して次のように書くことができる。 この式をシュレーディンガーの波動方程式 (シュレディンガーの波動…

波動関数と期待値・固有値・固有関数・固有方程式

波動関数と期待値 波動関数が規格化されている場合、次のように波動関数の二乗を全空間において積分したものは1となる。 このとき、をの複素共役とすると、演算子の期待値は次のように求めることができる。 固有値・固有関数・固有方程式 演算子を波動関数に…

粒子のシュレーディンガーの波動方程式の導出

粒子のシュレーディンガーの波動方程式の導出 物質の波動を記述する波動方程式がシュレーディンガー方程式 (シュレディンガー方程式)である。 量子力学的な粒子の波動方程式としてのシュレーディンガー方程式を導出する。 まず、波動は場所と時間の関数で表…

ド・ブロイの関係式:物質波を表す式

物質波とド・ブロイの関係式 量子力学や量子化学では物質波という”物質は粒子である”とともに”物質は波である”という二重性が重要となる。 この物質の粒子と波の二重性を表す式が、粒子として見たときの運動量ベクトルを、波として見たときの波数ベクトルを…

分子の基底状態・励起状態と光の吸収

基底状態と励起状態 分子は通常、最も安定な電子配置の状態で存在する。この状態はエネルギー的には最も低い状態であり、この状態を分子の基底状態という。 基底状態にある分子が光エネルギーを吸収すると、高いエネルギー状態である励起状態となる。この基…

光(電磁波)のエネルギーと波長の関係

光(電磁波)のエネルギーと波長の関係 光(電磁波)のエネルギーと波長の間には次の関係があることが知られている。 ここでは、光(電磁波)のエネルギーを、プランク定数を、振動数を、波長を、光の速さをとしている。 上の式から次のことがわかる。 ・波長が大…

パウリの排他原理とは

原子の電子を考えるうえで重要なパウリの排他原理について意味や歴史的背景を解説しています。

波動関数・波動関数の性質・満たす条件の解説

波動関数とは 電子や原子、分子、分子集団、結晶などの状態を量子力学的に解く場合、シュレーディンガーの波動方程式を考える。 波動関数は、このシュレーディンガーの波動方程式の解である。 一般的に、波動関数はで表される。 波動関数は、実験からその値…

シュレーディンガーの波動方程式 (シュレーディンガー方程式) の解説

シュレーディンガーの波動方程式・シュレーディンガー方程式 電子は粒子としての性質と波としての性質をもっている。 そのため、シュレーディンガーは電子の運動に対して、波の運動を表す式を適用した。 このシュレーディンガーが導出した方程式は、シュレー…

一次元の箱の中の粒子 (井戸型ポテンシャル) の固有関数とエネルギーの導出

一次元の箱の中の粒子の固有関数とエネルギー 厳密にシュレーディンガー方程式を解くことができる例として、一次元の箱の中の粒子に対する問題がある。 この一次元の箱の中の粒子のモデルは、鎖状ポリエンに対する定性的なモデルとして用いることができる。 …

全軌道角運動量・スピン角運動量・スピン軌道相互作用とフントの規則(フントの法則)の解説

1電子の場合は、主量子数、全角運動量量子数、磁気量子数、スピン量子数が電子を表します。一方で、2電子以上の場合の表し方について整理します。 全軌道角運動量:L 全軌道角運動量は1電子の軌道角運動量 lを組み合わせたものといえます。その組み合わせ方は…

軌道と主量子数・全角運動量量子数(方位量子数)・磁気量子数・スピン量子数の意味

量子化学を学ぶうえで重要な軌道と主量子数・全角運動量量子数(方位量子数)・磁気量子数・スピン量子数の意味について丁寧に解説しています。