化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

分析化学

分子の基底状態・励起状態と光の吸収

基底状態と励起状態 分子は通常、最も安定な電子配置の状態で存在する。この状態はエネルギー的には最も低い状態であり、この状態を分子の基底状態という。 基底状態にある分子が光エネルギーを吸収すると、高いエネルギー状態である励起状態となる。この基…

光ルミネッセンスや様々なルミネッセンスの分類

光ルミネッセンス(光ルミネセンス)とは 物質にはエネルギーを吸収した後に、熱エネルギーとしてエネルギーを放出せずに、光を発するものがある。 このとき起こる発光現象をルミネッセンス(ルミネセンス, luminescence)という。このルミネッセンスは、物質に…

ランベルト・ベールの法則:ランベルトの法則とベールの法則について

ランベルト・ベールの法則について ランベルト・ベールの法則はランベルトの法則とベールの法則を組み合わせた法則である。 ランベルトの法則 光が媒質中を通過する時に、光の透過強度と光の入射強度を比較すると、光の透過強度が物質の厚さと吸収係数に対し…

赤外活性とラマン活性・交互禁制則と判断の基準

赤外分光法とラマン分光法 分子の結合は熱運動をしており、その熱運動は伸び縮みをする伸縮運動や折れ曲がりをする変角運動などがある。この熱運動のエネルギー準位は量子化されている。この分子の振動運動のエネルギー準位間の遷移を測定する方法が振動分光…

核オーバーハウザー効果:NOEと正のNOE・負のNOE

核オーバーハウザー効果:NOEとは 核オーバーハウザー効果 (nuclear Overhauser effect, NOE) とは、二つの核が空間的に近い位置にあり、双極子相互作用が強い場合、一つの核の共鳴シグナルを飽和させたとき、他の共鳴シグナルの強度が増加や減少のように変…

光学顕微鏡・分解能と顕微鏡の種類(一般顕微鏡・実体顕微鏡・蛍光顕微鏡・偏光顕微鏡)

光学顕微鏡とは 人間が見ることのできる光は可視光といわれ、その波長は380 nm~780 nmの範囲である。光源としてこの可視光を用いる顕微鏡を光学顕微鏡という。 また、人が識別可能な二点間の最小距離は75 μm程度といわれる。これは髪の毛の太さ程度であり、…

モール法(Mohr法):塩化物イオンの定量法について

塩化物イオン測定法 例えば、水道水は塩素殺菌されている場合が多い。こういった水道水は多くの塩化物イオンを含むことがある。 このような溶液に含まれる塩化物イオンを測定する方法として、塩化物イオンが銀イオンと難溶性の沈殿を生成することを利用する…

ガスクロマトグラフィー (GC)とカラム・検出器 (TCD・FID・FPD・ECD) について

ガスクロマトグラフィーとは 移動相に気体 (キャリアーガス) を用いるカラムクロマトグラフィーをガスクロマトグラフィー (GC) という。 ガスクロマトグラフィーは、一定流量のキャリアーガス流中に試料を注入し、注入された試料成分は気化してカラムに運ば…

Rf値・移動率・移動比・移動度の解説

Rf値・移動率・移動比・移動度とは Rf値とは、薄層クロマトグラフィー (TLC) やペーパークロマトグラフィーなどの平面クロマトグラフィーで、試料が展開液によって固定相内で移動する割合のことです。 Rf値は移動率や移動比、移動度ともいいます。この、Rf値…

電気泳動の原理と分類(ゾーン電気泳動・キャピラリー電気泳動など)

電気泳動と原理 水溶液に電流を流すときに荷電粒子やイオンが電場の勾配に従って動く現象のことを電気泳動という。 電気泳動では、荷電が大きいと、粒子に働く力も大きくなるため、その移動速度は大きくなる。一方で、荷電粒子やイオンの大きさ(分子量)が大…

ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の方法・仕組み

SDS-PAGEとは ゲル電気泳動法のなかでも、タンパク質やペプチドの分析、分取に利用される方法がドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) である。 ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) が用いられる理由 タンパク質やペプチドの荷電の状…

化学センサーと半導体ガスセンサー・イオンセンサー・バイオセンサー

物理センサーと化学センサー 温度変化や圧力変化などの物理的な現象に応答して、電気的な信号を発するデバイスを物理センサーという。人間の五感の中では、視覚、聴覚、触覚の代わりになるセンサーは物理センサーということができる。また、理センサーは化学…

クロマトグラフィーとその分類の解説

クロマトグラフィー クロマトグラフィーとは、大きな表面積をもつ固定相(stationary phase)と、この固定相に接して流れる移動相(mobile phase)との間に、混合物を分布させ、この固定相と移動相の二層間の分析対象物質の相互作用の差を利用して、各成分を分離…

NMRの温度可変測定について

NMRの温度可変測定 核磁気共鳴 (NMR) 測定の際に、サンプルの温度を変化させて測定が行われることがある。これを温度可変測定ということがある。 NMR測定にて、試料の温度を変化させる測定は錯体構造や立体配座の決定、熱力学定数の測定などで利用される。 …

NMRのシフト試薬・常磁性添加試薬とは

シフト試薬・常磁性添加試薬 核磁気共鳴 (NMR) 測定では、試料中に常磁性物質が混入すると、シグナルの幅が広くなったり、化学シフトが大きく動いたりする。 これを利用し、化学シフトを大きく動かすことで重なったシグナルの分離を行うことができ、スペクト…

NMRの縦緩和・横緩和・(スピン-格子緩和・スピン-スピン緩和)・緩和時間について

NMRの緩和について 核磁気共鳴での緩和について、同時に起こる独立した2つの過程が存在すると考えることができる。 まず、緩和についてエネルギー的に考えると、磁石の中に置かれ、核磁気共鳴現象が起こっていない状態では、ボルツマン分布に従って、核スピ…

NMRの化学シフト(ケミカルシフト)・基準物質・電子密度・磁気遮蔽・寄与する効果

化学シフト (ケミカルシフト) とは NMRスペクトルの横軸 化学シフトの範囲 化学シフトの基準物質 化学シフトと電子密度・磁気遮蔽 化学シフトへの効果 隣接官能基による磁気異方性効果 電子軌道の混成の影響 置換基効果 立体的効果 (van der Waals効果) 共役…

NMR(核磁気共鳴)現象の基本的な原理の解説

核磁気共鳴現象の基本原理 核磁気モーメントについて 原子核が核スピン量子数をもつとき、磁気モーメントが現れる。この原子核がもつ磁気モーメントを核磁気モーメントという。 磁場中に置かれた大きさの核磁気モーメントのエネルギーは、次の式で表される。…

NMRで観測ができる核・できない核・難しい核

NMRで観測できる核と観測できない核 NMRは核磁気共鳴 (nuclear magnetic resonance) の略である。NMR法はとくに、有機化学の分野で、有機化合物の分子構造の解析に使用されている。 しかし、すべての原子の核が核磁気共鳴現象を起こすわけではない。そのため…

NMR装置の構成の簡単な説明

現在使用されている大半のNMR装置は、パルスFT-NMRといわれる種類の装置である。 このパルスFT-NMR装置は大きく分けると、磁石、分光計、コンピューターで構成されている。 磁石 使用されている大半の磁石は、超伝導磁石である。旧型の装置や小型の装置では…

NMR測定の欠点について

NMR測定の欠点について NMR (核磁気共鳴) 測定は、特に有機化合物の分子構造の解析で非常に有用な測定方法として使用されてきた。 しかしながら、NMR測定も万能ではなく、いくつか劣っている点も存在する。 感度が低い NMR法は、他のクロマトグラフィーや、…

NMR(核磁気共鳴)と化学シフト・スピン-スピン結合・緩和の基礎的な解説

NMRについて NMRは核磁気共鳴 (nuclear magnetic resonance) の略である。NMR法はとくに、有機化学の分野で、有機化合物の分子構造の解析に使用されている。 NMR法は、簡単にいうと核スピンのエネルギー吸収・放出現象を観察している。 核磁気共鳴現象を利用…

走査型トンネル顕微鏡 (STM)・原理・測定試料について

走査型トンネル顕微鏡とは 試料表面に鋭くとがった針 (探針、プローブ) を1 nm以下に近づけて、試料と探針の間に流れるトンネル電流が一定になるようにし、原子レベルの試料表面の立体像を観察する顕微鏡のことを走査型トンネル顕微鏡 (Scanning Tunnelling …

ヨウ素酸化滴定とヨウ素還元滴定について

2種類のヨウ素滴定法 ヨウ素滴定は酸化還元滴定のうちの1つであり、ヨウ素滴定には2種類の方法がある。ヨウ素の酸化作用を利用する滴定を、特にヨウ素酸化滴定 (直接滴定、ヨージメトリー、iodimetry)という。ヨウ化物イオンの還元作用を利用する滴定を、ヨ…

サイズ排除クロマトグラフィー、カラム充填剤について

サイズ排除クロマトグラフィーとは サイズ排除クロマトグラフィー (Size exclusion chromatography, SEC)は、分子ふるい効果を利用するクロマトグラフィーの総称であり、分子ふるいクロマトグラフィーともいう。サイズ排除クロマトグラフィーはカラム充填剤…

TLC・薄層クロマトグラフィーのRf値、吸着剤、展開法、検出について

薄層クロマトグラフィー・TLCとは 薄層クロマトグラフィー(thin-layer chromatography, TLC)はガラス板やアルミニウム箔などの支持体の上に微粒子担体を均一に塗布して固定相とし、適当な溶媒を移動相として、物質を展開、分離するクロマトグラフィーである…

サイクリックボルタンメトリーについて

ボルタンメトリーとは ボルタンメトリー(voltammetry)とは試料溶液の中へ作用電極と参照電極を設置し、この2つの電極間に電圧を加え、対応して流れる電流と電圧の関係を調べる方法の総称である。ここで作用電極とは、酸化還元の挙動を観測する電極であり、白…

沈殿法について

沈殿法について 沈殿法は、溶媒の中に溶解している溶質を沈殿粒子として取り出す合成手法である。沈殿粒子を得るためには、溶液を不飽和な状態から過飽和な状態にし、結晶核の生成と成長を促して、沈殿粒子化する必要がある。溶液を過飽和な状態にする方法は…