化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

分析化学

水のイオン解離と水のイオン積とpH

水のイオン解離と水のイオン積 水溶液の溶媒としての水は、水自身が次の式の反応によって水素イオン(H+)もしくはオキソニウムイオン(H3O+)と水酸化物イオン(OH-)とにわずかに解離している。 H2O + H2O ⇄ H3O+ + OH- この反応は右方向と左方向の反応が同時に…

水の水分子の濃度

水の水分子の濃度 実験や分析、計算では水溶液を用いる場合が多くある。 このとき、水は溶媒であり、溶けている物質である溶質の濃度に着目することが多い。しかし、水もまた分子であるため、水の水分子の濃度も計算することができる。 ここでは計算を簡単に…

酸解離定数KaとpKa・塩基解離定数KbとpKb

酸解離定数KaとpKa 酸の解離反応の平衡定数を酸解離定数という。 弱酸 (HA) の解離を次のように表す。 各濃度をで表すとき、酸解離定数は次の式で求めることができる。 この酸解離定数の値が小さい酸ほど弱酸である。 また酸解離定数の対数にマイナスをつけ…

パルス法・パルス吸着法

パルス法 パルス法は、試料に気体分子をパルス状 (断続的) に導入し、導入した気体の量と排出された気体の量の差から 、試料の金属量や活性点量を測定する方法である。 パルス法は気体分子の吸着を利用する方法と触媒反応を利用する方法がある。 パルス吸着…

ラマン分光分析法とラマン散乱現象

ラマン分光分析法 ラマン分光分析法は分子振動に由来するラマン散乱スペクトルを測定する分析方法である。 分子振動による散乱スペクトルを測定するため、赤外吸収法と類似した測定方法である。 レーザー光を試料の局所部分に照射し、散乱ラマン線を測定する…

X線回折法(XRD法)

X線回折法 (XRD法) X線回折法 (X-ray diffraction法、XRD法) とは結晶や粉末にX線を照射し、そこで起きるX線の回折像やパターンを解析することで、結晶の原子の配列や分子の構造を調べる方法である。 結晶や分子にX線を照射すると、X線は結晶を構成する原子…

電気浸透流:キャピラリーに電圧を印加すると生じる流れ

電気浸透流とは 電気浸透流 (electro-osmotic flow, EOF) とはキャピラリーの両端に電圧を印加したときの溶媒自体の流れのことである。特にキャピラリー電気泳動において起こる。 キャピラリーとして用いるフューズドシリカキャピラリーにアルカリ性の溶液を…

キレートとキレート効果:キレートの生成定数が大きい理由

キレート 一つの金属イオンに対して、配位することのできる配位原子 (錯形成官能基) を一つしかもっていない配位子を単座配位子、一つの配位子が配位原子を二つもっているものをニ座配位子という。そして、一つの配位子が配位原子を二つ以上もっているものを…

活量係数を求める式:拡張デバイ-ヒュッケルの式・デービスの変形式

デバイ-ヒュッケルの式 デバイ-ヒュッケルの式は活量係数を計算することができる理論式である。しかし、デバイ-ヒュッケルの式は非常に希薄な溶液でなければ適用できない。 デバイ-ヒュッケルの式はイオンiの電荷を、イオンの活量係数を、溶液のイオン強度を…

イオン強度とデバイ-ヒュッケルの極限法則(イオン強度の法則)

水溶液を考えるうえで大切なイオン強度とデバイ-ヒュッケルの極限法則(イオン強度の法則)について丁寧に解説しています。

活量と活量係数・平均活量と平均活量係数

化学ポテンシャルを考えるうえで収容な活量と活量係数とはなにかを解説しています。 さらに化学ポテンシャルと活量の関係、平均活量・平均活量係数についても解説しています。

モル濃度(mol/L)・容量モル濃度・モーラー(M)の解説

モル濃度 モル濃度は溶液の濃度の表し方の一つであり、単位は一般的にmol/Lである。(SI組立単位ではmol m-3である。) 1モル濃度 (mol/L) は1 Lの溶媒中に溶質1 molの物質を含む溶液である。 モル濃度の単位であるmol/Lは、Mとも表されることがあり、また、物…

滴定の反応による分類

滴定 容量分析を行う際に用いられる操作に滴定がある。一般的に滴定は、分析を行う目的物質を含む試料溶液に、濃度が既知であり、目的物質と定量的に反応する物質の溶液である標準液をビュレットから滴下する。そして、目的物質の全量が定量的に反応し終わっ…

逆滴定:反応が遅い試料に行う滴定法

逆滴定とは 逆滴定 (back titration)とは、容量分析における滴定法の一種であり、間接的に試料の量を求める方法である。残余滴定もしくは余剰滴定ともいう。 逆滴定では測定の対象となる試料溶液に、試料に対して過剰量となるように既知量の標準液を加えて十…

規定度:溶液1L中の溶質のグラム当量

規定度とは 濃度単位の一つに規定度 (nomality、N) がある。規定度とは、溶液1 L中に物質何グラム当量(eq) が含まれているかを表している。SI単位ではないため、モル濃度などと比べると使われる頻度は少ないが、定量分析などでは規定度が用いられていること…

オストワルトの希釈律:弱電解質の濃度と電離度の法則

オストワルトの希釈律とは オストワルトの希釈律 (オストヴァルトの希釈律、希釈律、希釈の法則) とは弱電解質の濃度と電離度に関する法則である。 ドイツのF・W・オストワルトによって提唱された。 弱電解質の電離していない電解質分子と電離したイオンの間…

希釈と計算式・希釈度・希釈熱

希釈とは 溶液に純溶媒を加えて濃度を薄める操作を希釈という。 純溶媒と溶質を混合することを溶解というが、希釈も混合の一種であるといえる。 希釈するために、採取する元の溶液 (濃い溶液) からとる物質量と希釈溶液中の物質量は等しくなる。そのため、元…

希釈効果:滴定の体積増加による影響

希釈効果とは 滴定などの容量分析を行うとき、滴定液を滴下することによって、測定する溶液の体積が増加し、この体積増加によって濃度が低くなる。このことを希釈効果 (dilution effect) という。 この希釈効果は理論滴定曲線からのズレに相当する。しかし、…

分析濃度と平衡濃度

分析濃度と平衡濃度 分析濃度とは、溶解した物質の全濃度のことであり、と表される。よって、溶液中の物質のすべての化学種の濃度の和がとなる。 平衡濃度は、溶解した物質のある一つの化学種の濃度でありと表される。 分析濃度、平衡濃度はモル濃度で表され…

質量モル濃度:温度や圧力に依存しない濃度

質量モル濃度とは 質量モル濃度 (molality, m) は濃度を溶媒1 kg中に溶けている溶質の物質量 (mol) で表すものである。 単位は mol/kg となる。 また、1 mol/kg を1モーラル (molal) ということがある。 質量モル濃度は、体積に関する量を使用しないため、温…

ドルトン:Daとは

ドルトン:Daとは ドルトン(ダルトン、Da)とは、質量の単位であり、原子や分子、イオンなどの粒子の質量を表す際に使われる単位である。原子質量単位(amu)と同じである。 質量数12の炭素原子の質量(1.993 × 10-23)の12分の1の質量を1 Daとしている。 そのた…

フォルハルト法:銀滴定法

フォルハルト法とは 銀滴定の一つにフォルハルト (Volhard) 法がある。 フォルハルト法は銀と沈殿を形成する陰イオン(Cl-、Br-、SCN-)を定量する間接的な滴定方法である。 フォルハルト法は酸性溶液(HNO3)中で行われ、チオシアン酸塩の標準液を用いて銀イオ…

滴定の力価

滴定の力価とは 滴定を行う際に、力価 (タイター、titer)を利用することがある。滴定の場合の力価とは滴定剤1 mLと反応する分析成分の重さのことであり、通常単位はmgが用いられる。 ニクロム酸カリウム溶液の力価が1.325 mg Feという力価である場合を考える…

分子の基底状態・励起状態と光の吸収

基底状態と励起状態 分子は通常、最も安定な電子配置の状態で存在する。この状態はエネルギー的には最も低い状態であり、この状態を分子の基底状態という。 基底状態にある分子が光エネルギーを吸収すると、高いエネルギー状態である励起状態となる。この基…

光ルミネッセンスや様々なルミネッセンスの分類

光ルミネッセンス(光ルミネセンス)とは 物質にはエネルギーを吸収した後に、熱エネルギーとしてエネルギーを放出せずに、光を発するものがある。 このとき起こる発光現象をルミネッセンス(ルミネセンス, luminescence)という。このルミネッセンスは、物質に…

ランベルト・ベールの法則:ランベルトの法則とベールの法則について

ランベルト・ベールの法則について ランベルト・ベールの法則はランベルトの法則とベールの法則を組み合わせた法則である。 ランベルトの法則 光が媒質中を通過する時に、光の透過強度と光の入射強度を比較すると、光の透過強度が物質の厚さと吸収係数に対し…

赤外活性とラマン活性・交互禁制則と判断の基準

赤外分光法とラマン分光法 分子の結合は熱運動をしており、その熱運動は伸び縮みをする伸縮運動や折れ曲がりをする変角運動などがある。この熱運動のエネルギー準位は量子化されている。この分子の振動運動のエネルギー準位間の遷移を測定する方法が振動分光…

核オーバーハウザー効果:NOEと正のNOE・負のNOE

核オーバーハウザー効果:NOEとは 核オーバーハウザー効果 (nuclear Overhauser effect, NOE) とは、二つの核が空間的に近い位置にあり、双極子相互作用が強い場合、一つの核の共鳴シグナルを飽和させたとき、他の共鳴シグナルの強度が増加や減少のように変…

光学顕微鏡・分解能と顕微鏡の種類(一般顕微鏡・実体顕微鏡・蛍光顕微鏡・偏光顕微鏡)

光学顕微鏡とは 人間が見ることのできる光は可視光といわれ、その波長は380 nm~780 nmの範囲である。光源としてこの可視光を用いる顕微鏡を光学顕微鏡という。 また、人が識別可能な二点間の最小距離は75 μm程度といわれる。これは髪の毛の太さ程度であり、…

モール法(Mohr法):塩化物イオンの定量法について

塩化物イオン測定法 例えば、水道水は塩素殺菌されている場合が多い。こういった水道水は多くの塩化物イオンを含むことがある。 このような溶液に含まれる塩化物イオンを測定する方法として、塩化物イオンが銀イオンと難溶性の沈殿を生成することを利用する…