化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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活量と活量係数・平均活量と平均活量係数

活量と活量係数とは

活量とは、混合理想気体や希薄な溶液などの理想体系の化学ポテンシャルと、実在溶液などの現実の系の化学ポテンシャルとの差を補正するために導入される熱力学的濃度のことである。濃度の表し方として、モル分率、質量モル濃度、モル濃度が用いられることが多いが、それぞれの濃度の表し方に対して、それぞれ活量や後述する活量係数が定義される。

活量を活動度ということもある。活量の値は蒸気圧、沸点、凝固点、溶解度、浸透圧などの測定から決定することができる。また、完全溶液のときは活量は濃度と等しくなる。

次のように成分iの活量a_iを濃度x_iで割った値f_i活量係数、もしくは活動度係数という。

 \displaystyle f_i = \frac{a_i}{x_i}

理想溶液では、活量係数はf_i = 1となる。また、一般的にはf_i \gt 1となる。

活量及び活量係数を導入することによって、理想溶液と実在溶液のずれは活量係数にまとめられる。そのため、活量係数の挙動を解析することで実在溶液の性質を明らかにすることができる。

化学ポテンシャルと活量

理想溶液や混合理想気体の成分iの濃度をx_i、気体定数をR、絶対温度をTとしたとき、化学ポテンシャル \mu _i ^{id} は、標準化学ポテンシャル \mu^{\circ}_i を用いて次のように表される。

 \mu_i^{id} = \mu^{\circ}_i + RT \ln x_i

一方、現実の溶液には、溶媒と溶質の分子の大きさや分子間相互作用が存在するため、その性質は理想溶液からずれる。そのため、現実の溶液では上の化学ポテンシャルの式は成り立たない。

そこで、理想溶液や混合理想気体と現実の実在溶液とのずれの影響を、すべて濃度の項に含ませて考える。このとき、実在の溶液の成分iでの化学ポテンシャルμ_iに対して、活量a_iを用いて、次のように表すことができる。

 \mu_i^{id} = \mu^{\circ}_i + RT \ln a_i

また、実在溶液の化学ポテンシャルと理想溶液の化学ポテンシャルの差である過剰化学ポテンシャル\mu_i^{ex}は活量係数f_iを用いて、次のように表される。

\mu_i^{ex} = \mu_i - \mu_i^{id} = RT \ln f_i

イオンの平均活量と平均活量係数

電解質溶液では、溶質は中性分子の電離によって生成するイオンとなる。個々のイオンに対しては形式的には、その活量および活量係数を定義することができる。

この活量係数は溶液中のイオンの総数やイオンの電荷によって変化する。また、活量係数はイオン間の引力の効果を補正するものとなる。

10-4 mol/L以下の希薄溶液では、単純な電解質の活量係数は1に近くなり、活量は濃度とほぼ等しくなる。電解質の濃度が大きくなると、活量係数は減少するため、活量は濃度よりも小さくなる。しかし、さらに電解質の濃度が大きくなると、特に陽イオンは水溶液中で水和されており、溶媒和した水は溶媒としての機能を果たせなくなるため、活量係数はさらに低下して極小値を示す。そして、さらに高濃度になると活量係数は増大し、値は1を超える。

また、溶液中のイオンは、陽イオンと陰イオンの量が互いに組み合わさり、電気的に中性の形で現れる。そのため、理想溶液からのずれの原因を陽イオンと陰イオンに均等に割り当てる。そこで、陽イオンと陰イオンの幾何平均をとることで、イオンの平均活量および平均活量係数が定義されて、用いられている。

電解質 AxBy の溶液では、陽イオンの活量をa_+、陰イオンの活量をa_−、陽イオンの活量係数をf_+、陰イオンの活量係数をf_−とすると、平均活量 a_± および平均活量係数 f _± は、次のように表される。

 a_± ^{x+y} = a_+^x a_−^y

 f_±^{x+y} = f_+^x f_−^y