イオン反応とは
イオンの関与する反応のことをイオン反応 (ionic reaction) という。
主に電解質溶液内での反応をイオン反応というが、高温での溶融塩の反応、イオン移動による固相反応、X線やγ線などのイオン化放射線の照射による気体分子のイオン化などのイオンの関与する反応もイオン反応といわれる。
特に誘電率の大きな水を溶媒に使うと、電解質の電離が起こりやすいため、水溶液中では強酸や強塩基の中和反応、沈殿生成反応、錯生成反応、酸塩基反応、酸化還元反応など多くのイオン反応が起こる。
また、有機反応で反応の機構上、ラジカル反応とイオン反応に区別する場合にもイオン反応という言葉を使うことがある。有機反応の場合、求電子試薬や求核試薬の反応などイオンが直接関与していなくても、反応過程でイオン性物質として作用する機構が考えられる場合にはイオン反応ということがある。
イオン反応式とは
イオン反応式とは、反応に関与するイオンに注目し、イオン式だけで示した化学反応式のことである。
イオン反応式では、左右両辺で、各元素の原子の数と電荷の総和が等しい必要がある。
例えば水溶液中での硝酸銀 (AgNO3) と塩化ナトリウム (NaCl) の沈殿反応の化学反応式は次のようになる。
AgNO3 + NaCl → AgCl + NaNO3
生成物のNaNO3はNa+とNO3-に電離しており、反応の前後で変化しない。そのため、次の式がイオン反応式となる。
Ag+ + Cl- → AgCl
また塩化銀 (AgCl) が沈殿することを"↓"で表し、次のようなイオン反応式を書く場合もある。
Ag+ + Cl- → AgCl↓