モル平衡濃度
化学平衡は、化学平衡の法則や質量作用の法則によって考えていくことができる。さらに、活量でより詳細に考えることができる。
しかしながら、溶質であれば、モル濃度で簡易的に代用することができる。
以下のような化学平衡を考える。
ここで、モル濃度平衡定数を考える。モル濃度平衡定数
は、温度、共存物質の組成などによって変化する。これを式で表すと次のようになる。
化学平衡と電解質効果
実際に水溶液中の化学平衡の一例である酢酸の解離反応を考える。
反応式は以下のようになる。
モル濃度を用いた化学平衡の式は次のようになる。
ここに例えばNaClなどを溶液に加え、共存する電解質の濃度を変化させてモル濃度平衡定数(酸解離定数)を測定すると、次のような結果が得られる。
つまり、電解質濃度を上げていくと、酢酸の解離が進む現象が見られる。平衡定数は、活量で表現すると、常に一定になるはずである。そのため、モル濃度平衡定数の変化は、電解質の濃度変化によって、平衡に関与している3つの化学種の活量が変化していることを意味する。
このような電解質の添加によって水溶液中の物質の活量が変化する現象を電解質効果という。
酢酸の解離によって生成した水素イオンと酢酸イオンの一部は、電解質が存在すると、静電的な引力によって、それぞれ結合をつくる。例えば、Na+とCl-が存在すると、水素イオンはCl-と結合をつくる。酢酸イオンはNa+と結合をつくる。
このような静電的な力によって生成するイオンの結合状態をイオン対という。イオン対は強い結合状態というわけではなく、イオン対を生成した酢酸イオンと水素イオンの動きは束縛され、再結合は起きにくくなる。
つまり、イオン対の生成によって、反応に関与できる自由に動くことのできるイオンの濃度が減少する。
よって平衡は正反応の方向にずれて、見かけの平衡定数の値が増加するように観測される。
電解質効果はイオン対の生成の効果が主であると考えられており、以下の2つの性質がある。
- 電解質の種類にほとんど関係がなく、イオン強度にのみ依存する
- 平衡に関与する化学種の電荷が大きいほど、大きな影響を受ける
イオン強度()とは、以下の式で表される。
はイオン
のモル濃度、
はイオン
の電荷である。
イオン強度の単位はmol dm-3である。
平衡に関与する化学種の電荷が大きいほど、大きな影響を受けることは、静電力の強さによってイオン対の生成のしやすさが変化するためである。