化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

有機化学

【有機化学】二分子求核置換反応(SN2反応)

二分子求核置換反応(SN2反応) ハロアルカンの炭素-ハロゲン結合は、炭素原子とハロゲン原子の電気陰性度の差によって、大きく分極している。 炭素原子は正に帯電しているため、孤立電子対をもっている求核剤と反応することで新しい結合が生成する。 ハロゲン…

【論文紹介】Ni触媒による鈴木クロスカップリングによって有機フッ素化合物の合成が報告

ここ数十年で、フッ素を含む分子は薬として利用されるようになっており、その割合は全体の30%以上になっている。特に、gem-ジフルオロメチル類のような有機フッ素化合物は、薬効作用から薬に用いられる化合物として注目されている。 図1の(a)に紹介されてい…

セリワノフ反応(アルドースとケトースの識別テスト)と反応機構について

セリワノフ反応 セリワノフ反応 (Seliwanoff's test or Seliwanoff's reaction) はケトースとアルドースを識別する呈色反応である。 セリワノフはロシアの化学者 Feodor Feodorovich Selivanovに由来している。 糖のうち、ケトン基を含む糖はケトースであり…

立体異性体(エナンチオマー・ジアステレオマー)とは

立体異性体とは 化合物の物理的な性質や反応性は、分子の立体的な形によって決まるものも多い。この記事では、この立体化学の概要について説明をする。 同じ分子式をもつ2つの構造があるときに、その2つの構造を重ね合わせることができる場合と、重ね合わせ…

【有機化学】カルボン酸の解離と共鳴構造・アルコールとの比較

カルボン酸の解離と酸性 酢酸CH3COOHのようなカルボン酸RCOOHは、水溶液中では下に示すような化学平衡によって解離し、酸性を示す。 CH3COOH ⇄ CH3COO- + H+ 多くのカルボン酸は水に対する溶解度が小さいが、アルコールのような有機溶媒中でも、同じように解…

化学シフトと低磁場側、高磁場側の方向

化学シフト(ケミカルシフト) 核磁気共鳴スペクトルを測定すると、その核種に対応したスペクトルが得られます。このとき、ピーク位置は原子の種類によって、一定であるはずですが、その原子への結合など原子の置かれた化学的環境において、ピークがシフトしま…

原子間の結合領域と反結合領域と共有結合をわかりやすく解説

有機化合物の骨格となる部分を形成する結合のほとんどが共有結合である。この共有結合は、2つの原子の間で、それぞれの価電子を互いに共有してできた結合である。 この価電子の共有によって結合ができるということについて、もう少し深くわかりやすく考えて…

【化学クイズ】完全燃焼から組成式を求める方法

完全燃焼から組成式を求めよう C、H、Oから構成される物質10.0 mgを完全燃焼させた。このとき、26.4 mgのCO2と6.0 mgのH2Oが生じた。この物質の組成式を書きましょう。 原子量はH = 1.0、C = 12.0、N = 14.0、O = 16.0とする。 解答編 組成式CaHbOcNdは各元…

置換基・官能基・置換基効果

置換基 有機化合物は炭素原子が連なって構成されている。このような分子を本体部分とそれ以外の付属した部分に分けて考えると便利である。 この付属した部分を置換基という。 置換基効果 立体的に大きな置換基がある場合、その近くに他の分子が近寄れず反応…

分子式・構造式・構造式の簡略表現

分子式 分子式は分子を構成する原子の種類と個数を表したものである。 水の分子式はH2O、メタンの分子式はCH4である。例えば、H2Oは水素原子2個と酸素原子1個で構成されていることを表す。 構造式 分子を構成する原子の種類と個数が、それぞれどのような順序…

σ結合とπ結合とδ結合の解説

共有結合とσ結合・π結合・δ結合 有機物を構成する結合は、ほとんどが共有結合である。共有結合とは、結合する2つの原子が、互いに1つずつ電子を出し、その2つの電子を結合電子雲とする結合である。 簡単にいうと、2つの原子に対して、電子雲がのりとして接着…

共役二重結合:二重結合が単結合を挟むことで構成されている結合系

共役二重結合 2つ以上の二重結合が単結合を挟むことで構成されている結合系を共役二重結合という。 二重結合はσ結合とπ結合から構成されている。しかし、π結合を形成しているπ電子は非局在性 (易動性)をもっており、σ結合のみであった単結合の間でもπ結合を…

有機物の単結合・二重結合・三重結合と結合の強さ・結合距離

有機物の共有結合 単結合 二重結合 三重結合 単結合、二重結合、三重結合と結合の強さ 単結合、二重結合、三重結合と結合距離 有機物の共有結合 有機物を構成する結合は、ほとんどが共有結合である。 共有結合とは、結合する2つの原子が、互いに1つずつ電子…

デュエット則とオクテット則

デュエット則とオクテット則 原子は正電荷をもつ原子核が中心にあり、その周りを負電荷をもつ電子が軌道を形成し取り囲んでいる。 また、原子に含まれる電子の中で最も外側の軌道に入っている電子を価電子、もしくは最外殻電子という。 内側の1s軌道 (K殻) …

フェーリング反応 (アルデヒドの検出反応) の解説

フェーリング反応とは フェーリング液の銅(Ⅱ)イオンが、アルデヒドや還元糖による還元によって酸化銅(Ⅰ)の赤色沈殿を生じる反応のことをフェーリング反応という。 アルデヒドや還元糖の検出や定量に利用される。 1848年にドイツのフェーリングが考案したため…

銀鏡反応の手順・反応式の解説

銀鏡反応とは 銀鏡反応 (silver mirror reaction) は還元性有機化合物の検出反応の一つである。Tollensの反応ともいわれる。銀鏡反応を用いる検出法を銀鏡試験という。銀鏡反応を用いてアルデヒドの検出が行われる。 また、銀鏡反応によって金属イオンが析出…