化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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化学シフトと低磁場側、高磁場側の方向

化学シフト(ケミカルシフト)

核磁気共鳴スペクトルを測定すると、その核種に対応したスペクトルが得られます。このとき、ピーク位置は原子の種類によって、一定であるはずですが、その原子への結合など原子の置かれた化学的環境において、ピークがシフトします。この現象を化学シフト (ケミカルシフト)といいます。この化学シフトは原子の電子状態を反映するため、化学結合の性質や構造を調べる際に測定されます。

電子によって生じる局所磁場は外部磁場とは逆向きになります。そのため、核が受ける有効磁場は逆向きの磁場の分だけ小さくなります。これを外部磁場から遮蔽されているという場合もあります。電子密度が高いほど、遮蔽効果は大きくなるため、核が受ける有効磁場は小さくなります。よって、共鳴する周波数も低くなります。一方で電子密度が低いと、有効磁場は大きくなります。

どっちが高磁場側でどっちが低磁場側

図で示すように、NMRスペクトルでは周波数は右から左に向けて高くなるように表記します。NMRの測定では、磁場は変化させていませんが、遮蔽効果が大きい核のスピン状態を一定磁場で共鳴させるということは、外部から高い磁場をかけることに相当します。そのため、周波数の低い右側を高磁場側(低周波数)、周波数の高い左側を低磁場側(高周波数)といいます。

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NMRスペクトル 出典:参考文献(1)

参考文献

(1) Sethi, S., Pedrini, M., Rizzo, L. B., Zeni-Graiff, M., Dal Mas, C., Cassinelli, A. C., ... & Brietzke, E. (2017). 1 H-NMR, 1 H-NMR T 2-edited, and 2D-NMR in bipolar disorder metabolic profiling. International journal of bipolar disorders, 5(1), 1-9.

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