化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

研究発表のスライドの作り方のコツ(卒論発表・修論発表・学会発表に向けて)

はじめに

研究室に配属され、研究を進めると、卒業論文発表や修士論文発表、学会発表などでパワーポイントなどのスライドを使ってプレゼンテーションを行う場合がよくあります。プレゼンテーションは一種のセールストークと考えることができますが、特に学生の研究発表では、自分が卒業論文発表や修士論文発表では、自分が研究内容を理解していることをアピールする必要がありますし、学会発表では研究内容に加えて、自分のこともアピールできると理想的です。

そして、自分の研究内容をわかりやすく、的確に伝えることができると、ただ研究の面白さが伝わるだけでなく、その後の質疑応答も実りあるものになります。また学会賞などを受賞できると奨学金の免除審査や学振の申請書にも役立ちます。

この研究発表のスライドの作り方やブラッシュアップの仕方は研究室内で引き継がれている一方で、解説している資料は多くはないと思います。そこで、私の研究生活の中で培ったコツを書いていきます。

※分野によって、スライドの作り方の礼儀作法が違う場合があります。

※ここで紹介しているスライドの例はhttps://www.nature.com/articles/s41467-020-20214-zの画像を用いており、この論文にはクリエイティブ・コモンズ、CC-BYのライセンスが付与されています。

スライド作りのコツ2つ

スライドの作り方のコツの1つ目は"聞く人のことを考えて作る”です。独りよがりにならないように、研究発表を聞く人が見やすく、わかりやすく作ることが一番です。

スライドの作り方のコツ2つ目は"準備する時間を充分に用意する”です。良いスライドを作ろうと思うと時間がかかります。そのための時間を充分に確保しておくことが大切です。

そのうえで分かりやすいスライドを作っていくテクニックがありますので紹介していきます。

スライドの縦横比(アスペクト比)

最近のパワーポイントではデフォルトは16:9になっていることが多いと思います。多くのプロジェクターも16:9に対応していますが、古いプロジェクターだと4:3の場合もあるので、事前に確認しておくことをオススメします。

16:9と4:3のどちらかわからないという時の方法として、16:9と4:3の中間の比としてA4 (210 × 297 mm)をスライドの向きを横にして使うという選択肢もあります。ここで紹介するスライドはA4で作成しておりますので参考にしてください。

フォント

フォントはブロック体(ゴシック、メイリオ、ヒラギノ角ゴシック、arial、Segoe UIなど)を使います。文字の大きさは基本的に20ポイント以上です。これが原則です。

同じプレゼンテーション中で使うフォントは統一しておきましょう。

あえて明朝体やTimesを使って上手に強調する人もいますが、最初のうちはブロック体を使う方が無難です。明朝体やTymesのようなフォントは紙面で読む際は、ストレスなく読めますが、学会発表のような遠くから見る場合には読みづらいフォントとなります。

タイトルスライド

スライドにはタイトルスライドコンテンツスライドがあります。

 

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タイトルスライド

タイトルスライドには発表のタイトル所属発表者共同発表者の名前日付や講演番号などを記入します。他にも大学のロゴマークを入れたり、発表に関連するシンプルなイラストを入れたり工夫することができます。

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タイトルスライドの解説

タイトルや所属、名前などは左揃えにもできますが、中央揃えでプレゼンしている人がほとんどです。

コンテンツスライド

コンテンツスライドは研究発表のメインである研究内容に関するスライドです。目安は1枚のスライドで1メッセージです。1枚のスライドにかける時間は目安としては1分、だいたい30秒~2分の間になるようにするといいです。

研究発表では、研究背景、研究の目的、実験方法、実験結果、考察、まとめ、のような順番で作ります。1つのプレゼンテーションとして、ストーリーを考え、どのような研究背景があり、なんのために実験・研究を行い、どのような結果が得られ、当初の目的に対してどのような考察・結論に至ったかを説明しましょう。

また、その研究発表で伝えたいメッセージを考えて発表を作りましょう。聴衆に覚えて帰ってもらうメッセージと言い換えてもいいです。そのメッセージを意識しながらストーリーを作ると、筋の通ったプレゼンテーションができます。

プレゼンテーションスライドを作り慣れていない最初のうちは、シンプル イズ ベストと思ってスライドを作りましょう。

基本的にスライドの内容の配置は左から右上から下に見ていけるように配置します。

プロジェクターを使う場合の発表は一番下まで図や文字を入れると、一番下は前の人などで見えない場合があるので注意です。逆にZOOMの発表では相手の表示次第では右上が隠れる場合があります。

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研究背景のスライド

このスライドの例ではイラストACの素材とChem 3Dで出力した画像を使っています。スライドに使うイラストはなるべく自分で作るほうがいいと思います。しかしフリー素材なども、ほどよく活用するといいスライドが作れると思います。Chem 3Dの水素の色はデフォルトでは画像のように白ですが、見にくいので水色などに変更してもいいと思います。

小見出しの文字のはじまりの位置やスライド中の文字の位置はパワーポイントのオブジェクトの配置の機能などを使って揃えましょう。

各項目をまとめるために、枠線を入れることもできますが、枠線を入れすぎると、線(情報)が多くなりすぎて見にくくなるので注意です。

ここでは右上にページ番号と総ページ数を表示しています。ページ番号を入れておくと質疑応答で何ページ目の〇〇についてといった具合で質問者が質問しやすくなります。また総ページ数を書いておくと、今発表している内容が全体のうち、どのあたりなのかが伝わります。

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解説:視線は左から右、上から下へ動くようにする

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研究背景スライドの解説

次に実験目的のスライドを示します。研究の目的は強調したい部分なので、赤線で囲っています。その下にはこの後、どういったことを話していくかを記載しています。いってみれば、目次のようなものです。こうすることで、どういう筋道で研究発表を行うかを示します。

プレゼンテーションが非常に上手な人は、あえてその次に話す内容を示さずに、「次はなにが来るのか?」とワクワクさせるような発表をする人もいますが、最初のうちはそういった発表はしないほうが無難です。なぜなら、どういった流れで発表するかがわからなかった結果、聴衆が発表を理解できないまま終わってしまう可能性が高いからです。

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研究目的のスライド

次に実験結果のスライド例を示します。

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研究結果のスライド

まずはグラフの軸ラベルやグラフのタイトルをちゃんとつけましょう。レポートや論文などでは、表のタイトルは上、図のタイトルは下が原則ですが、スライドでは図のタイトルを上につけている場合も多くあります。

今回は引用している論文の図をそのまま使っていますが、なるべくスライド用に図のフォントサイズなどを調整して作り直すといいでしょう。

文章の改行は単語の途中で改行しないように注意しましょう。

好みの問題ではありますが、グラフなどはスライドの端までギリギリに詰めるより、少しスペース(余白)を作っているほうが見栄えがいい場合も多いです。

パワーポイントの機能にアニメーションがありますが、アニメーションを過剰に入れると、逆に分かりにくくなるので注意です。

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研究結果のスライドの解説

最後に結論のスライドの例を示します。結論のスライドはなるべく途中で示した研究の目的や目次で示す項目に対応するようにしてまとめると、わかりやすくなります。

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まとめのスライド

予備スライドの作成

研究発表のスライドはメイン予備スライドの2つを用意しましょう。メインのスライドはイントロダクション、研究目的、実験結果、結論などの発表時間内で話す部分を作成していきます。一方で予備スライドはメインのスライドの続きに用意しておきます。この予備スライドには、実験をしたけど発表には使わないというデータを載せておきます。そして質疑応答で質問された場合に、予備スライドの結果で説明できる場合にはそのスライドの結果を使って説明をしましょう。

ストーリーの注意点

研究でありがちなことですが、本当は違う物性を向上させる目的で作った材料なんだけど、思うような結果は得られず、違う物性が面白かったといったような研究に取り組み始めた当初の予定と違う結果を話したいという場合があります。特に発表時間が短い場合は、研究を始めたときの動機や目的をそのまま話すのではなく、発表したい結果に対応した目的や研究背景を考えなおしたほうが、聴衆の理解が進みます。

スライドに使う色の注意点

1枚のスライドに使う色の数は3色程度に留めておくといいです。色の数を多くして、区別しようと思っても、実際に聴衆が見ると、判別できないという場合も考えられます。

使う色を選ぶなかで特に黄色には注意が必要です。スライドの背景は白である場合が多いですが、白の背景に黄色の文字などの場合、文字が読めないということがよくあります。

アニメーションや動画を使う際の注意点

ほとんどのプレゼンテーション用のソフトウェアには、アニメーションをつける機能がついています。アニメーションは効果的に使うと、聴衆の理解を助けることになりますが、不要な部分にまでアニメーションを使うと、デメリットもあります。

特にスライドの切り替えのときのアニメーション効果は注意が必要です。このスライドの切り替えのアニメーション効果を使った場合1~3秒程度は余計な時間がかかることになります。その分だけ発表時間が減るということなので、注意しましょう。

動画の埋め込みも、上手に使うと、説明が非常にわかりやすくなりますが、気をつけておくことがあります。まず、動画の再生時間が長くなりすぎないように注意しましょう。発表時間の5~15%程度の再生時間が妥当な時間です。これ以上長くなると、研究発表ではなく、動画紹介になってしまいかねません。また、発表する際に用意されたパソコンを使って発表する場合は、不具合に注意が必要です。パソコンの不具合で動画が再生されなかったり、音声が流れなかったりすることがあります。動画をプレゼンテーションファイルに埋め込む以外に、動画ファイルとして保存しておいて、不具合が生じたときは別のメディアプレイヤーソフトウェアを使うといった臨機応変な対応も必要です。

写真の長所と短所

スライドに実験装置の写真などを使う場合には、長所と短所を理解して使うといいと思います。

1つ目の長所は写真を載せることで聴衆に現実感を与えることができます。実験が特殊である場合や、自作の測定器具などを使っている場合、写真をつかうことで実際に紹介することができます。

2つ目の長所は、写真の撮影はイラストを作製するより時間がかからないという点です。

短所は、余計なものが見えてしまうことです。例えば実験装置を撮影したときに、その写真には周りにあるケーブルや箱や別の実験器具などが写り込んでしまうことがあります。聴衆の視点が関係のないものに向いてしまうと、逆に聴衆の理解が進まないなんてことになるかもしれません。

引用の形式は揃える

特に研究背景などでは、他の研究者が論文として発表した成果や図を引用して、発表を行う場面がよくあります。論文などを引用する場合には、出典を明記することは当然ですが、同じ発表内では、引用の形式も統一しておいたほうがいいでしょう。引用の形式は、どの雑誌の引用の形式でも問題ない場合がほとんどです。だからこそ、引用の形式が統一されていないということで、マイナスな評価をされないように気をつけておきましょう。

発表原稿の用意

発表では原稿を用意しない人もいますが、最初のうちは発表原稿を用意しましょう。wordなどでスライド番号とそのスライドで話す内容の文章を書いておきます。そして実際に読んでみて、発表時間内に終わるか、話してみて違和感がないか(しゃべりにくくないか)を確認しておきましょう。発表原稿を用意しておくと、どの部分が発表時間が長いか、どの部分がおかしいかを振り返ることができます。

レーザーポインターの注意点

研究発表では、レーザーポインターを使うというケースが多いです。レーザーポインターはぐるぐる動かすのではなく、指したい部分1点をしっかり指すようにしましょう。練習してみてレーザーのポイントを固定することが難しい人は、レーザーポインターを持っている手首を腰に当ててみると、しっかり落ち着くようになります。

英語で資料を作る(1ランク上を目指す人へ)

研究発表の資料がきちんと作れる人は、英語でスライド資料を作ってみましょう。最近は日本国内で開催される学会でも、英語での発表が推奨されるケースも増えてきています。また、発表言語は日本語だけど、スライド資料は英語という講演者も大勢います。英語で発表できる研究者を目指すして、まずは資料を英語で作ってみるといい練習になると思います。

(発表後に)質問をメモする

質疑応答で質問された内容はメモをしておきましょう。後から思い出そうとしても、思い出せないということになりかねません。質問は、今後研究を発展させるアイデアや、論文を書いて査読を受ける際に指摘されるポイントになりえます。

お願い

この紹介を読んで改善点を見つけた方やここに紹介していないコツ、研究室でのノウハウなどを持っている方は、コメントに書き込んでいただければ幸いです。みなさんの意見を参考に改訂を続けて、多くの方によりよい情報を提供したいと考えています。

今回使用した論文について

Transforming carbon dioxide into jet fuel using an organic combustion-synthesized Fe-Mn-K catalyst
Benzhen Yao, Tiancun Xiao, Ofentse A. Makgae, Xiangyu Jie, Sergio Gonzalez-Cortes, Shaoliang Guan, Angus I. Kirkland, Jonathan R. Dilworth, Hamid A. Al-Megren, Saeed M. Alshihri, Peter J. Dobson, Gari P. Owen, John M. Thomas & Peter P. Edwards
Nature Communications volume 11, Article number: 6395 (2020)

www.nature.com

 

今回紹介に使用した論文はクリエイティブ・コモンズ、CC-BYのライセンスが付与されています。この記事では、上記論文の画像を使用しています。