化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

あなたの大学に論文が引用された回数のトップ層は何人いますか?

毎年、ClarivateからHigly Cited Researchers (直訳すると、高被引用論文著者)が発表されています。2022年の報告についても発表がされています。

被引用回数についての解説

被引用について、詳しくない方に説明しますと、科学では最新の研究成果を論文として発表します。この時、どこまでが自分の新しい研究成果で、どこまでは他の人の研究成果や、アイデアなどで影響を受けているかを、ハッキリさせる必要があります。

そのために、論文の形式として、過去に出版された論文を引用して、その研究分野の背景や、他の研究者の結果や知見を示したうえで、自分の研究のどこに新規性があるかを、示します。

当然、その分野のブレイクスルーとなるような、他の研究に大きく影響を与える革新的な論文は引用回数が多くなります。つまり、引用された回数(被引用回数)が論文がどれほど革新的かを示す指標の1つになります。

ただし、例えば"化学"などという大きな分野で一括りにしている場合、有機化学や無機化学、物理化学、分析化学などの細かい分野のそれぞれの研究者の数や、例えば人工光合成といった研究テーマの流行などによって、引用されやすい分野とされにくい分野の研究がある場合があるという常識には注意が必要です。被引用回数は万能の指標ではありません

さまざまな背景があるといえ、論文の引用回数が多くなるということは、その分野の中でも特に独創的や革新的な研究を行っている可能性は高いです。

あなたの大学の研究者や教員は入っていますか

一方で、大学生は進級していくと、研究室に配属され、研究を行いますが、どの指導教員の研究室に配属されるかも、重要な判断ポイントになります。特に最初は、指導教員から研究テーマを与えられるケースも多く、指導教員の研究テーマの設定力が、学生の成果に大きく影響を与えてしまうケースもあります。

そのため、もし、今から大学院で別の大学の研究室を検討している学生などであれば、もし自分の興味のある研究分野と合致するなら、論文の被引用回数の多い先生の研究室へ進学するのを目指してみてもいいかもしれません。

さて今回発表された "Highly Cited Researchers - Clarivate "では、分野、大学などの所属、日本などの地域でソートをかけて、どの研究者が入っているかを調べることができます。

例えば、ChemistryとJapanでソートしてみると、以下のようになります。

引用:Clarivate Highly Cited Researchers

見てみますと、有賀克彦先生や堂免一成先生のような、日本人のノーベル賞候補者として名前があがる、非常に著名な先生方の名前が出てきます。

また、日本で見てみると、必ずしも東京大学や京都大学のようなトップの国立大学のみではなく、様々な大学の先生が選ばれていることにも気づくと思います。

日本の大学にいるならば、日本の研究者や、同じ大学の研究者の中では、どのような人が入っているかは知っていてもいいと思います。

もしかすると、同じ大学にいなくても、大学の特別講義などや、学会の招待講演などで、講演を聞く機会はあるかもしれません。

また、こういった先生方が発表した最新の論文は、最新なのでまだ被引用回数が少なくても、自分の研究のヒントとなるような着眼点やアイデア、解決策があるかもしれません。

少しでも興味をもったならば、記事末尾にLinkを掲載していますので、ぜひ一度、研究の息抜きに調べてみてはいかがでしょうか?

参考情報

この高被引用論文の著者名はWeb of Science Core Collectionの分野、出版年別の被引用数のトップ1%にランクインした論文から調査されており、論文の出版年は2022年版の場合、2011年1月から2021年12月までの間に発表された論文が対象となっています。また、研究者の中で、剽窃や画像加工などの研究不正が認められた研究者はリストから外されています。

参考リンク

clarivate.com