研究活動において、過去の文献を読むということは非常に重要です。
理系の研究であれば、過去に出版されている論文を適切に検索し、実験や考察の参考にし、必要に応じて、論文でも引用することが求められます。
でも、その"過去の論文を探しても見つけられない"という特に学生向けの内容です。
過去の論文・文献がないわけない
今は、日本のみならず、世界中の論文を検索して、読むことができます。そして、世界中には非常に多くの研究者がいます。
また卒業研究などは、ある程度の限られた時間で研究を行うためにも、参考文献が全く存在しないような新規性の高い研究を任せることは、まれです。
検索をして、過去の論文や文献が見つからないときは、自分の検索方法に問題がないかをまず疑いましょう。
先行研究や関連論文が存在しないわけがないという気持ちでまずは検索しましょう。
文献検索エンジン(サイト・サービス)を使う
まず基本ですが、ふだんよく使うであろうgoogleなどの検索にキーワードを打ち込んで、検索するだけでは不十分です。
例えば
・SciFinder (特に化学系であれば)
・Pubmed (生命科学系)
・Web of Science
などの論文や文献の検索に特化したサイトやサービスを使いましょう。また、各サービスによって、得意な分野がありますので、自分の分野にあったものを使いましょう。
自分の分野に最適なサービスは先輩や指導教員に聞くのが望ましいですが、それが難しい場合は、まずは大学の図書館で相談したり、大学の図書館のwebサイトを確認しましょう。東京大学附属図書館の例 (Link)のように、大学の図書館がデータベースを公開していることが多いです。自分の大学にそのようなデータベースがない場合は、有名な国立大学レベルの図書館のwebサイトならデータベースを紹介しているケースが多いので、それを参考にしてみるのも有効です。
検索キーワードを考える
現在、データベースには、非常に多くの論文が存在し、さらに年月が経つごとに、論文の量も飛躍的に増加しています。ふだん、googleなどの検索で行っているように、ある程度のキーワードを複数用いて検索しなければ、目的の論文を探すことは非常に大変です。
ところがこのキーワードというのがポイントです。
例として、光触媒反応による二酸化炭素の変換を調べたいとします。
世の中の論文のほとんどは英語ですので、英語で検索することが必要です。
このときに、二酸化炭素を英語に直訳して
・carbon dioxide
だけで検索すると、おそらく不十分です。特に論文のタイトルは短く、わかりやすくする傾向があるため、
・CO2
の方がタイトルに入っていることがよくあります。つまり、CO2とタイトルにある論文を見落としてしまう可能性が高くなります。
また光触媒も
・photocatalyst
・photocatalytic
・photoelectrocatalytic
・photoreduction
などの様々な用語の派生や類語の使い方が想定されます。さらに、他にもZ-スキーム (Z-Scheme) などの異なる用語を使った論文が目当ての論文になっていることがあるかもしれません。
検索キーワードを適切に設定することが重要です。
適切なキーワードをどう探すか?
研究をはじめたてのその分野の初心者には、キーワードを思いつくということは、非常に難しいです。
本当に英単語が全くわからなければ、まずは近い論文を一報さがしましょう。全くわからない場合は、日本語でキーワードを普通のgoogle検索で打ち込むと、日本の大学の研究に関するプレスリリースであったりが見つかると思いますので、そこから論文を探していきましょう。他にもgoogleで検索キーワードと一緒に"pdf"と打ち込むと、大学の講義資料などが見つかることも多いです。
そして、タイトルや要旨(Abstract)に使われている英単語のキーワードを確認しましょう。
キーワードがある程度わかると、そのキーワードを使って、その分野の引用数の多い論文や、総説(review)論文を探しましょう。こういった論文が引用していたり、引用されている論文のタイトルを眺めていくと、ある程度キーワードを見つけることができます。
また数報でも論文が見つかった場合は、本文を読んでみましょう。本文にも、キーワードが書いてあるケースも多いです。
論文の引用の引用をたどっていく
世の中のほとんどの学術論文は他の論文を引用しています。また引用する論文は、その分野の重要な論文である例も多いです。関連する論文の引用の、その論文の引用とどんどん辿っていくと、重要な論文や、関連する論文にたどり着くことができます。
わからないことは相談する
研究をはじめたての学生が、論文を検索する能力が低いことは、ある程度当然です。なぜなら、論文の検索方法は、ほとんどの高校まででは教えることがなく、大学で初めて習うものだからです。
論文を見つけられない場合は、先輩や指導教員に相談しましょう。研究室に配属された学生に論文の検索方法を指導することも、卒業研究の研究指導の一部ですので、恥じることはありません。極端な話、学生の検索能力が低いということは、大学や教員の指導力が低いといっていいくらいです。
ただし、検索方法を知らないで必要以上の苦労をするのは学生本人ですので、"聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥"の気持ちで遠慮なく相談しましょう。論文を探す能力を身に着けらないまま大学を卒業することのほうがよっぽど恥です。
相談するときのポイント
多くの場合、先輩や指導教員も忙しいものです。
「論文を見つけられません」
だけで相談すると、指導に必要以上の多くの時間がかかります。
相談するときは、
- 何を使ったか (google scholarなど)
- どういう用語 (キーワード)で検索したか
- どういうキーワードの組み合わせで検索したか
- 検索して見つけた論文の中でどこまで探したか(検索数〇〇本に対して、上位〇〇本のabstractを読んだ)
などを明確にして、相談すると、学生の不十分な点を教員や先輩が把握できるため、オススメです。
また、一緒に(目の前で)検索をしてもらうことが、最も望ましいですが、それが難しい場合、
- キーワードを教えてもらう
- 重要な論文を紹介してもらう
などをお願いしましょう。これであれば、メールやチャットなどでも比較的簡単にお願いすることができます。
先行研究の文献・論文が見つからないことも重要な情報
先行研究や関連する研究を、様々な手段を使って検索しても、論文が出てこないことがあります。つまり、本当にそういった論文は存在しないこともあります。
その時は、そこに研究の余地、未解明の部分があるということです。本当に論文がなければ、そのことを報告会や卒業論文などで示しましょう。
実際に論文や学会の発表でも
- as far as we know
- as we know
といった枕詞をつけて、「我々の知る限りでは、こういった研究は存在しない」と述べることもよくあります。