化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

無機化学

ハイエントロピー合金とその特徴

ハイエントロピー合金とは ハイエントロピー合金もしくは高エントロピー合金 (High entropy alloy, HEA) とは、合金を構成する元素が5成分以上であり、その5成分以上の多成分がほぼ等原子組成比で、そして単相固溶体を形成する合金である。従来の合金の多く…

エチレンジアミン四酢酸:EDTA

エチレンジアミン四酢酸:EDTA よく知られている多座配位子 (キレート試薬) として、エチレンジアミン四酢酸 (ethylenediaminetetraacetic acid, EDTA) があり、多くの金属イオンと安定な錯体を形成することが知られている。 エチレンジアミン四酢酸は、(HOO…

キレートとキレート効果:キレートの生成定数が大きい理由

キレート 一つの金属イオンに対して、配位することのできる配位原子 (錯形成官能基) を一つしかもっていない配位子を単座配位子、一つの配位子が配位原子を二つもっているものをニ座配位子という。そして、一つの配位子が配位原子を二つ以上もっているものを…

イオン反応とイオン反応式

イオン反応とは イオンの関与する反応のことをイオン反応 (ionic reaction) という。 主に電解質溶液内での反応をイオン反応というが、高温での溶融塩の反応、イオン移動による固相反応、X線やγ線などのイオン化放射線の照射による気体分子のイオン化などの…

チタンとチタニア・アルミニウムとアルミナの違い

チタンとチタニアの違い チタン (titanium) チタニア (titania) は別の物質です。 チタン(Ti)は金属、チタニアは酸化チタン(TiO2)であり金属酸化物です。 アルミニウムとアルミナの違い アルミニウム(aluminium)とアルミナ(alumina)も別の物質です。 アルミ…

ヴェガード則:合金の組成と格子定数の経験則

ヴェガード則とは 合金には置換型固溶体と侵入型固溶体が存在する。このうち置換型固溶体では、合金の組成と格子定数の関係についてヴェガード則 (ヴェガードの法則、ヴェガードの規則、ベガード則、ヴェガルド則、Vegard's law) といわれる経験則が存在する…

遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)について

遷移金属ダイカルコゲナイド (TMD) とは 遷移金属ダイカルコゲナイド (遷移金属ジカルコゲナイド、Transition Metal Dichalcogenide, TMD)は構成式がMX2(Mは遷移金属原子、Xは酸素以外のカルコゲン原子)で示される物質群である。 遷移金属はモリブデン (Mo) …

ミラー指数・面指数(面を示すミラー指数・4つの整数のミラー指数と方位を示すミラー指数)

ミラー指数 結晶の性質は結晶の方位や面によって異なることがある。そのため、結晶の方位や面について議論をすることも多い。このときに、結晶の方位や面を指定するために、ミラー指数というものが用いられる。このミラー指数は鉱物学者のW・H・ミラーが結晶…

テルミット反応と反応式・テルミット法について

テルミットとは 酸化鉄粉 (Fe2O3) とアルミニウム粉 (Al) の当量混合物のことをテルミット (Thermit) といいます。 テルミットは、点火するとアルミニウムが酸化されて高熱を発生し3000℃以上の高温となり、還元されて生じる金属の鉄が融解した状態で得られま…

合金触媒のリガンド効果とアンサンブル効果

単一の金属を担体に乗せた金属/担体触媒では、触媒性能を追求しても限界に達する場合が多い。そこで、金属を単一の金属から複数の金属の合金にすることで触媒性能を向上しようとする方法がある。 このような合金触媒作用に対する金属原子間の複合効果を説明…

含浸法と吸着法・ポアフィリング法・蒸発乾固法・単純湿潤法・スプレー法の解説

含浸法 金属粒子を触媒として用いる場合、酸化ケイ素 (シリカ) や、酸化アルミニウム (アルミナ) などの耐熱性を有する酸化物粒子上に金属粒子が分散したものが用いられる。 このとき使用される 酸化物粒子のことを担体という。この担体の役割は、金属粒子の…

王水と逆王水について

王水とは 王水 (aqua regia) とは容積比で濃硝酸1と濃塩酸3の混合物の通称である。"いっしょうさんえん"などの語呂合わせで覚えている人も多いだろう。硝酸の塩酸の混合物の総称を王水といっている場合もある。他に希釈した王水のことを希王水ともいう。 希…

アマルガム・アマルガム法・歯科用アマルガム・アマルガムの合成について

アマルガムとは 水銀と他の合金の総称をアマルガム (amalgam) という。ギリシャ語の"柔らかいもの"という意味のmalagmaが由来である。汞和金 (こうわきん) ともいわれる。 金属の含有量によって、液体、ペースト状、固体などと変化し、一般的には水銀の分量…

塩化セシウム型構造についての解説

塩化セシウム型構造とは 塩化セシウム (CsCl) の構造の単位格子は、セシウムイオン (Cs+ ) が立方体の中心に位置し、頂点にある8個の塩化物イオン (Cl- ) に囲まれている構造である。これは逆に、頂点にセシウムイオンを配置し、中心に塩化物イオンを配置す…

ゾルゲル法の解説

ゾルゲル法とは コロイドなどの微粒子が溶液中に分散したゾル状態から、流動性のなくなるゲル状態を経て、固体物質を得る合成方法をゾルゲル法 (ゾル-ゲル法、sol-gel method)という。セラミックスやガラス、金属酸化物などの合成に用いられる。 一般的に粒…

形式電荷の意味・計算方法の解説

形式電荷とは 分子の電子式で、共有結合に関与する電子を、結合している原子に均等に割りふったときに、各構成原子がもつ見かけ上の電荷のことを形式電荷 (formal charge) という。 形式電荷の計算方法 分子中のある原子に割り当てられた正負の整数の電荷で…

消滅則について解説

消滅則とは 結晶によるX線の回折では、結晶面によるX線の反射はブラッグの条件が満たされたときに起こる。また、その強度は結晶構造因子によって決まる。 しかし、空間格子の種類やらせん軸、映進面の有無などによって結晶構造因子となり、反射が系統的に出…

色中心とその種類(F中心・V中心)・形成方法・天然の色中心の例

色中心とは 本来は透明な結晶が、光を吸収して琥珀色や紫色、青色などの色が着いた結晶のようになることがある。これは、結晶の局所構造に由来し、この着色を示す由来となるもとを色中心 (color center)もしくは着色中心という。 色中心は、イオン結晶中の格…

オストワルト法(アンモニア酸化法)・硝酸の工業的製法について

オストワルト法 オストワルト法はアンモニア酸化法ともいわれ、アンモニアを酸化して硝酸を製造する方法である。現在の硝酸の製造はほぼオストワルト法が使われている。 1902年にF.W. Ostwaldによって開発されたことからオストワルト法と呼ばれている。Ostwa…

ブレンステッド酸点とルイス酸点について

酸点とは 固体酸において酸性を示す表面サイトのことを酸性中心(acid center)もしくは酸点(acid site)、酸性点(acidic site)という。 酸点のうち代表的なもとが2種類あり、酸性を示す表面のヒドロキシ基のことをブレンステッド酸点 (Brønsted酸点)、露出した…

合金と置換型固溶体・侵入型固溶体・金属間化合物について

合金について 合金(alloy)とは、異なる金属元素が混じり合った物質である。溶けた金属を混ぜ合わせてから冷却してできる固体であり、金属の性質を示す。一般的に合金は電気陰性度が同程度である電気的に陽性の2種類の金属から生成することが多い。 合金は一…

量子ドットの特徴、用途について

量子ドット・QDとは 量子ドット(quantum dot)、QDとは、ド・ブロイ波長程度の大きさの領域に電子を閉じ込めた0次π電子系のことである。また、直径が数nmの半導体ナノ粒子のことを量子ドットということがある。 これは半導体ナノ粒子のような三次元的な閉じ込…

遷移金属錯体の色とd-d遷移・電荷移動遷移・配位子の吸収について

遷移金属錯体の色について 遷移金属化合物は多彩な色を示すことで知られている。そのため、遷移金属の塩や酸化物はガラスや陶器の着色剤や絵画の顔料として使われてきた。遷移金属錯体も同様に多彩な色を示す。これらの性質は金属錯体の中心元素が遷移元素で…

原子価殻電子対反発則・VSEPR理論による分子の形の予測

原子価殻電子対反発則(VSEPR理論)について 典型元素によって構成される分子の構造を定性的に予測する古典的な理論として原子価殻電子対反発理論もしくは原子価殻電子対反発則とよばれる理論がある。 英語のvalence shell electron pair repulsion theoryの頭…

金属ナノ粒子と表面プラズモンについて

金属と表面プラズモンについて 金属粒子に衝突した光は電子の光励起を引き起こす。生じる光励起の大部分は、金属の価電子帯の電子の集団的振動である。この金属表面の価電子が集団的に振動励起された状態を表面プラズモン(surface plasmon)という。このよう…

原子の大きさ・原子半径と電子の存在確率の関係について

原子の大きさとは 原子は原子核と電子で構成されている。そのため原子の大きさは電子の存在する場所に大きく影響される。 一方で、原子やイオンの中の電子は無限遠まで存在する確率がある。また明確な境界は存在しないため、様々な状況に適用可能な原子半径…

塩素系漂白剤として使用される化学物質の種類について

漂白剤とは 食品やパルプ、繊維製品などの色素を除き、外観をよくするために用いられる化学物質のことを漂白剤という。 漂白剤として使われる物質は還元力を利用するものと酸化力を利用するものがある。 ハロゲンのオキソアニオンの酸化力はハロゲンの酸化数…

反磁性・常磁性・強磁性・反強磁性について

磁性と磁気双極子・磁気双極子モーメントについて 物質の磁気的性質(磁性)は、原子や分子の軌道を電子がどのように占めているかに影響される。 磁性はグーイ(Gouy)の天秤と呼ばれる装置やスクイド(SQUID)と呼ばれる装置で磁化率を測定することで知ることがで…

スレーターの規則と有効核電荷の計算方法について

有効核電荷とスレーターの規則について 有効核電荷とは着目している電子が感じる中心原子核の電荷である。 有効核電荷を求める方法として、スレーターの規則 (スレーター則、Slater's rule) がある。 スレーターの規則は、ある軌道上にある電子が、他の電子…

焦電効果・パイロ効果・焦電材料と応用について

焦電効果とは? 焦電効果とは物質の両端に温度変化を与えたときに、その物質の端面に電荷が発生する現象のことです。例えば誘電体の結晶を加熱すると、その誘電体の表面が帯電します。この焦電効果のことをパイロ効果ともいいます。また、この焦電効果により…