化学徒の備忘録

化学系の用語や論文、動画などをわかりやすく紹介していきます

無機化学

酸化数・酸化数の規則・表記方法

酸化数 酸化数とは、物質中のそれぞれの原子に対する酸化の状態を表す数値である。 酸化数が負の値の場合、中性の原子よりも電子を得ている状態となる。また、酸化数が正の値の場合、中性の原子よりも電子を失っている状態となる。 また、酸化数が増加した原…

3つの中和:酸と塩基・正と負の電荷・毒素と抗体

3つの中和 一般的に異なる性質をもつものが混ざり、互いの性質を消しあうことを中和という。特に化学では、酸と塩基の中和、正の電荷と負の電荷の中和、毒素と抗体の中和という意味で使われることがある。 酸と塩基の中和 酸と塩基が反応し、酸の酸性、塩基…

電子殻:同じ量子数をもつ電子

電子殻とは 電子殻とは、原子を構成する核外電子の中で、同じ量子数をもつ電子の群のことである。 電子殻という考え方は、原子を、卵のように中央の正電荷をもつ原子核(卵の黄身)と、そのまわりに電子の存在する場所が殻のようにある原子模型を考えている。 …

超ウラン元素:自然界に存在しない元素

超ウラン元素 地球上に存在する元素のうち、自然界に存在する元素は、原子番号92のウラン(U)までであるといわれている。 この原子番号92のウランよりも原子番号の大きい元素を超ウラン元素という。原子番号92のウラン以降の元素は、日本で話題になった原子番…

原子番号:原子核中の陽子の数

原子番号とは 原子番号とは原子核中の陽子の数である。 原子は陽子と中性子から構成されている原子核と、その周りに存在する電子によって構成されている。 このうち、陽子の個数が原子番号である。つまり、原子核中の正電荷の数が原子番号であるということも…

σ結合とπ結合とδ結合

共有結合とσ結合・π結合・δ結合 有機物を構成する結合は、ほとんどが共有結合である。共有結合とは、結合する2つの原子が、互いに1つずつ電子を出し、その2つの電子を結合電子雲とする結合である。 簡単にいうと、2つの原子に対して、電子雲がのりとして接着…

ヤーン・テラー効果とレナー・テラー効果

ヤーン・テラー効果 (Jahn-Teller effect) ヤーン・テラー効果 (ヤーンテラー効果、Jahn-Teller effect) とは、非直線性多原子分子や固体内の原子団において、原子配列が正多角形や正多面体などの高い対象性をもつ場合に、電子状態が縮退することがあるが、…

デュエット則とオクテット則

デュエット則とオクテット則 原子は正電荷をもつ原子核が中心にあり、その周りを負電荷をもつ電子が軌道を形成し取り囲んでいる。 また、原子に含まれる電子の中で最も外側の軌道に入っている電子を価電子、もしくは最外殻電子という。 内側の1s軌道 (K殻) …

仕事関数:電子を固体から外部へ取り出すために必要な最小のエネルギー

仕事関数とは 仕事関数 (work function) とは、1個の電子を金属や半導体のような固体の表面から外部へ取り出すために必要な最小のエネルギーのことである。 この電子を取り除くエネルギーは一般的に金属のような固体の場合に仕事関数といわれ、孤立原子や分…

ランタノイドとランタノイド収縮

ランタノイド (ランタニド) 57番元素のランタン(La)から71番元素のルテチウム(Lu)までの15の元素をランタノイドもしくはランタノイド元素という。また、ランタニドという場合もある。 具体的にはランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジ…

錯体の配位数

錯体の配位数 錯体にて、中心金属原子に配位する原子または原子団の数を配位数という。 中心金属を取り囲み、中心金属と配位結合している原子や原子団を配位子という。その配位子の数は配位数となる。 金属イオンの種類によるが、配位数は2、4、6などである…

結晶の配位数と充填率

最近接原子と配位数 結晶を考える。このとき結晶中の、ある原子の中心から別の原子の中心までの距離を最近接原子間距離という。 例えば、単純立方構造では最近接原子間距離は格子定数となる。 また、結晶では、ある原子を中心として最近接原子間距離に位置す…

塩化ナトリウムのマーデルング定数の近似値の計算

塩化ナトリウムのマーデルング定数の近似値の計算方法 塩化ナトリウムのマーデルング定数を近似的に求める。 ここでは第三近接イオンまでのマーデルング定数への寄与について考える。 まず、塩化ナトリウムの構造のCl-イオンを原点とする。また、最近接イオ…

導体・半導体・絶縁体:電気伝導性による分類

物質は電圧をかけた場合の電流の流れやすさである電気伝導性によって導体、絶縁体、半導体の3つに分類することができる。 導体 導体 (conductor) は電気をよく通す物質である。金属の電気伝導性は高く、金属は導体として知られている。また、金属のように電…

マーデルング定数:イオン結晶の静電ポテンシャルを表す定数

マーデルング定数 マーデルング定数とは、イオン結晶の結晶構造によって定まる結晶格子の静電ポテンシャルを定める定数である。 結晶内のあるイオンを原点とし、クーロン力による反対符号イオンとの引力、同符号イオンとの斥力を無限遠まで順次計算すると、…

金属酸化物のバンドギャップと伝導帯の関係:Scaifeの報告

金属酸化物の半導体 金属酸化物などの半導体は、伝導帯と価電子帯がある。そして、この価電子帯と伝導帯の間の電子状態密度が0であるエネルギー領域をバンドギャップという。 金属酸化物の価電子帯は、主に酸素の2p軌道によって構成されていると考えられる…

ハイエントロピー合金とその特徴

ハイエントロピー合金とは ハイエントロピー合金もしくは高エントロピー合金 (High entropy alloy, HEA) とは、合金を構成する元素が5成分以上であり、その5成分以上の多成分がほぼ等原子組成比で、そして単相固溶体を形成する合金である。従来の合金の多く…

エチレンジアミン四酢酸:EDTA

エチレンジアミン四酢酸:EDTA よく知られている多座配位子 (キレート試薬) として、エチレンジアミン四酢酸 (ethylenediaminetetraacetic acid, EDTA) があり、多くの金属イオンと安定な錯体を形成することが知られている。 エチレンジアミン四酢酸は、(HOO…

キレートとキレート効果:キレートの生成定数が大きい理由

キレート 一つの金属イオンに対して、配位することのできる配位原子 (錯形成官能基) を一つしかもっていない配位子を単座配位子、一つの配位子が配位原子を二つもっているものをニ座配位子という。そして、一つの配位子が配位原子を二つ以上もっているものを…

イオン反応とイオン反応式

イオン反応とは イオンの関与する反応のことをイオン反応 (ionic reaction) という。 主に電解質溶液内での反応をイオン反応というが、高温での溶融塩の反応、イオン移動による固相反応、X線やγ線などのイオン化放射線の照射による気体分子のイオン化などの…

チタンとチタニア・アルミニウムとアルミナの違い

チタンとチタニアの違い チタン (titanium) チタニア (titania) は別の物質です。 チタン(Ti)は金属、チタニアは酸化チタン(TiO2)であり金属酸化物です。 アルミニウムとアルミナの違い アルミニウム(aluminium)とアルミナ(alumina)も別の物質です。 アルミ…

ヴェガード則:合金の組成と格子定数の経験則

ヴェガード則とは 合金には置換型固溶体と侵入型固溶体が存在する。このうち置換型固溶体では、合金の組成と格子定数の関係についてヴェガード則 (ヴェガードの法則、ヴェガードの規則、ベガード則、ヴェガルド則、Vegard's law) といわれる経験則が存在する…

遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)について

遷移金属ダイカルコゲナイド (TMD) とは 遷移金属ダイカルコゲナイド (遷移金属ジカルコゲナイド、Transition Metal Dichalcogenide, TMD)は構成式がMX2(Mは遷移金属原子、Xは酸素以外のカルコゲン原子)で示される物質群である。 遷移金属はモリブデン (Mo) …

ミラー指数・面指数(面を示すミラー指数・4つの整数のミラー指数)と方位指数(方位を示すミラー指数)

ミラー指数と結晶面 面を示すミラー指数:面指数 4つの整数の組のミラー指数(三方晶・六方晶) 方位を示すミラー指数:方位指数 ミラー指数と括弧 ミラー指数と結晶面 結晶では、結晶面によって原子の配置が異なる。そのため、結晶面によってポテンシャルエネ…

テルミット反応と反応式・テルミット法について

テルミットとは 酸化鉄粉 (Fe2O3) とアルミニウム粉 (Al) の当量混合物のことをテルミット (Thermit) といいます。 テルミットは、点火するとアルミニウムが酸化されて高熱を発生し3000℃以上の高温となり、還元されて生じる金属の鉄が融解した状態で得られま…

合金触媒のリガンド効果とアンサンブル効果

単一の金属を担体に乗せた金属/担体触媒では、触媒性能を追求しても限界に達する場合が多い。そこで、金属を単一の金属から複数の金属の合金にすることで触媒性能を向上しようとする方法がある。 このような合金触媒作用に対する金属原子間の複合効果を説明…

含浸法と吸着法・ポアフィリング法・蒸発乾固法・単純湿潤法・スプレー法の解説

含浸法 金属粒子を触媒として用いる場合、酸化ケイ素 (シリカ) や、酸化アルミニウム (アルミナ) などの耐熱性を有する酸化物粒子上に金属粒子が分散したものが用いられる。 このとき使用される 酸化物粒子のことを担体という。この担体の役割は、金属粒子の…

王水と逆王水について

王水とは 王水 (aqua regia) とは容積比で濃硝酸1と濃塩酸3の混合物の通称である。"いっしょうさんえん"などの語呂合わせで覚えている人も多いだろう。硝酸の塩酸の混合物の総称を王水といっている場合もある。他に希釈した王水のことを希王水ともいう。 希…

アマルガム・アマルガム法・歯科用アマルガム・アマルガムの合成について

アマルガムとは 水銀と他の合金の総称をアマルガム (amalgam) という。ギリシャ語の"柔らかいもの"という意味のmalagmaが由来である。汞和金 (こうわきん) ともいわれる。 金属の含有量によって、液体、ペースト状、固体などと変化し、一般的には水銀の分量…

塩化セシウム型構造についての解説

塩化セシウム型構造とは 塩化セシウム (CsCl) の構造の単位格子は、セシウムイオン (Cs+ ) が立方体の中心に位置し、頂点にある8個の塩化物イオン (Cl- ) に囲まれている構造である。これは逆に、頂点にセシウムイオンを配置し、中心に塩化物イオンを配置す…