化学徒の備忘録

化学系の用語や記事や論文をわかりやすく紹介します

無機化学

遷移金属錯体の色とd-d遷移・電荷移動遷移・配位子の吸収について

遷移金属錯体の色について 遷移金属化合物は多彩な色を示すことで知られている。そのため、遷移金属の塩や酸化物はガラスや陶器の着色剤や絵画の顔料として使われてきた。遷移金属錯体も同様に多彩な色を示す。これらの性質は金属錯体の中心元素が遷移元素で…

原子の大きさ・原子半径と電子の存在確率の関係について

原子の大きさとは 原子は原子核と電子で構成されている。そのため原子の大きさは電子の存在する場所に大きく影響される。 一方で、原子やイオンの中の電子は無限遠まで存在する確率がある。また明確な境界は存在しないため、様々な状況に適用可能な原子半径…

塩素系漂白剤として使用される化学物質の種類について

漂白剤とは 食品やパルプ、繊維製品などの色素を除き、外観をよくするために用いられる化学物質のことを漂白剤という。 漂白剤として使われる物質は還元力を利用するものと酸化力を利用するものがある。 ハロゲンのオキソアニオンの酸化力はハロゲンの酸化数…

反磁性・常磁性・強磁性・反強磁性について

磁性と磁気双極子・磁気双極子モーメントについて 物質の磁気的性質(磁性)は、原子や分子の軌道を電子がどのように占めているかに影響される。 磁性はグーイ(Gouy)の天秤と呼ばれる装置やスクイド(SQUID)と呼ばれる装置で磁化率を測定することで知ることがで…

スレーターの規則と有効核電荷の計算方法について

有効核電荷とスレーターの規則について 有効核電荷とは着目している電子が感じる中心原子核の電荷である。 有効核電荷を求める方法として、スレーターの規則(Slater's rule)がある。 スレーターの規則は、ある軌道上にある電子が、他の電子の遮蔽効果を考慮…

焦電効果について

焦電効果とは? 焦電効果とは物質の両端に温度変化を与えたときに、その物質の端面に電荷が発生する現象のことです。例えば誘電体の結晶を加熱すると、その誘電体の表面が帯電します。。この焦電効果のことをパイロ効果ともいいます。また、この焦電効果によ…

電子配置の低スピンと高スピン、錯体について

低スピンと高スピンの電子配置について 分裂したd軌道に電子が1つだけ存在する八面体錯体を考える。 例えばTi3+イオンはこれに該当する錯体を形成する。水溶液中ではTi3+イオンは、[Ti(H2O)6]3+として錯イオンを形成している。このイオンのd電子はt2g軌道を…

超伝導体とマイスナー効果、BCS理論について

超伝導体について 超伝導体とは電気抵抗が0でありマイスナー効果を示す物質である。この電気抵抗が0になった物質のことを完全導体ともいう。しかし、完全導体と超伝導体は同じ意味ではないため注意が必要である。 超伝導と電気抵抗について 低温で物質の電気…

13族元素の特徴とその製法について

13族元素について 13族元素はホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)が当てはまる。 ホウ素は非金属元素であると考えられる場合もあるが、若干の金属的性質ももつため、半金属(メタロイド)に分類されることもある。他の…

絶縁体について

絶縁体について 固体はその電気伝導性によって、金属、半導体(semiconductor)、絶縁体(insulator)の3種類に分類される。 ダイヤモンドは絶縁体である。ダイヤモンドは原子軌道同士の相互作用がゲルマニウムやケイ素よりもさらに強いためバンドギャップが大き…

半導体の分類と電気伝導性について

半導体について 固体はその電気伝導性によって、金属、半導体(semiconductor)、絶縁体(insulator)の3種類に分類される。 半導体の電気伝導率は金属よりもかなり小さい。また、金属とは逆に温度の上昇とともに電気伝導率は増加する。 半導体では、有効核電荷…

金属の電気伝導性について

金属の電気伝導性について 固体はその電気伝導性によって、金属、半導体(semiconductor)、絶縁体(insulator)の3種類に分類される。 金属のエネルギーバンドの特徴は、電子を含むエネルギーバンドのうちエネルギーが最も高い部分が一部しか専有されていないこ…

ウィーデマン-フランツの法則と電気伝導性、熱伝導性について

ウィーデマン-フランツの法則について 金属の性質の一つに熱をよく伝えるというものがある。一方で絶縁体は熱を伝えにくい物質である。 金属の熱伝導性が高いのは、自由電子が熱エネルギーのキャリヤーとなるからである。 金属を局所的に加熱した場合、その…

アレニウスの酸塩基とブレンステッドの酸塩基とルイスの酸塩基について

アレニウスの酸と塩基について 酸(acid)とは水溶液中で水素イオンH+を解離によって放出する物質であり、塩基(base)は水溶液中で水素化物イオンOH-を解離によって放出する物質である。 この定義により決められた酸・塩基のことをアレニウスの酸・塩基という。…

超酸とハメットの酸性度関数について

超酸について 超酸(super acid)とは、純粋な硫酸よりも強い酸性の溶液のことをいう。 水溶液系では、酸性度を表す尺度としてpHが使われるが、超酸のような非水溶媒の酸性度はpH以外の方法で酸性度を表す。なぜなら、pHは0~14の範囲で意味をもつが、超酸は非…

分光化学系列と配位子の電子供与、逆供与について

分光化学系列について 錯体の吸収スペクトルでは、可視部領域付近の弱い吸収帯の吸収極大波長が、配位子によって規則的に変化することが発見された。この遷移はd-d遷移であり、その遷移のエネルギーは配位子場分裂に対応している。そのため、強い配位子場を…

アダムソンの規則について

アダムソンの規則について アダムソンの規則(Adamson's rule)とはCr(III)錯体の光アクア化を総括して得られた、どの配位子が置換するかという経験則である。光アクア化反応とは、水に溶かした錯体に光照射したときに、配位子が水で置換される反応である。 ア…

金属の性質について

金属の定義について 金属とは、ある元素の原子が多数集合して単体となったときに、特徴的な性質を示す物質であり、その元素のことは金属元素と定義される。 特徴的な性質とは次の3つの性質である。 1. 熱伝導性および電気伝導性が高い。また、電気伝導率は温…

錯体の生成定数と配位子置換反応についての解説

錯体の配位子置換反応について 中心金属イオンをM、配位子(ligand)をLで表すようなある錯体を考える。このとき組成がML、ML2、ML3、・・・と表される一連の錯体が生成する場合がある。その具体例として、カドミウムイオンCd2+とアンモニアNH3が結合して生じ…

共通イオン効果の解説

共通イオン効果とは ある難溶性の塩ABの飽和溶液にA+もしくはB-を可溶性の塩として加えると、ABがさらに沈殿してくる。 また、あるイオン種を含む溶液に、それと共通のイオンを放出する物質を加えると、相手イオンの濃度が減少する方向に平衡が移動する。こ…

連鎖反応(光照射による塩化水素生成反応)の解説

連鎖反応とは 連鎖反応(chain reaction)について、用語集には、次のような説明があります。 原料となる化合物から生成物が得られる過程がいくつかの素反応の組み合わせによって成立し,一つの反応(連鎖開始反応)が始まると,その生成物(ラジカル,イオンなど…

不活性電子対効果についての説明

不活性電子対効果について 立体化学的不活性電子対効果(stereochemical inert pair effect)と不活性電子対効果は熱力学的6s不活性電子対効果(thermodynamic 6s inert pair effect)に区別することができる。 立体化学的不活性電子対効果について 非共有電子対…

ファヤンスの規則と分極についての解説

ファヤンスの規則(Fajan's rules)について ファヤンスの規則(ファヤンス則)とは1923年にFajansによって提案された経験則である。ファヤンスの規則は、誘起される分極の大きさを推定する指針を規則としてまとめたものであり、化学結合のうち共有結合性の度合…

ファヤンス法(塩化物イオンの定量法)について

水道水は塩素殺菌されている場合が多い。こういった水道水は多くの塩化物イオンを含む。 こういった溶液に含まれている塩化物イオンを定量する方法として、ファヤンス(Fajans)法が知られている。 ファヤンス法について ファヤンス法は次の流れで行う。 まず…

元素の対角関係、LiとMg、BeとAlの解説

元素の対角関係とは 典型元素には対角関係(diagonal relationship)がある元素がある。 元素の対角関係とは、元素周期表において、一つ右下にある元素と類似性をもつというものである。 リチウムとマグネシウムの対角関係 リチウム(Li)は元素周期表において、…

アルカリ金属と化合物の性質についての解説

アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)とは? リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)のこれらの1族元素のことをアルカリ金属という。 アルカリ金属の化学的性質は、s電子を一つ失って希ガスの電子配置…

水素の性質、同位体、製法についての解説

水素について 水素(H)は原子番号1番である。 このことから、最も単純な元素とも考えられている。 水素は宇宙で最も多量に存在する元素である。存在する元素の約76%が水素である。 水素は1族元素であるが、他の1族元素とは異なる点が多い。例えば、電気陰性度…

2族元素の特徴について解説

2族元素について 2族元素:ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が当てはまる。 2族元素はすべて金属元素である。またBeは両性元素である。 2族元素の原子の特徴 最外殻電子配置はns2である。…

水素化物の分類や特徴について解説

水素化物とは 水素を含む化合物(水素化合物)全般を水素化物といいます。特に、狭義の水素化物としては、水素化物イオンH-を含む化合物を水素化物といいます。 化学結合性による分類 水素化物はイオン結合性水素化物と共有結合性水素化物に分類することができ…

固い酸・塩基、やわらかい酸・塩基【HSAB則】の解説

// 無機化学でたまに耳にするHSAB則、その説明をしていきます。 HSABとは、hard and soft acids and basesの頭文字をとっています。シンプルに説明しますと酸と塩基を次の4種類hard acid、hard base、 soft acid、 soft base、日本語に訳すと固い酸、固い塩…