化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

理系の筆者が化学系の用語や論文、動画、ノウハウなどを紹介する化学ブログ

無機化学

【錯体化学】配位子の基礎・キレートと単座配位子・多座配位子について

錯体を大学の講義などで習う中で、登場する言葉がキレートです。キレートの名前の由来も有名な話であり、獲物をしっかりつかむために両方のハサミを使うロブスターに由来し、1920年にMorganとDrewによって研究論文で提唱されました。キレートについて基礎か…

【錯体化学】配位子・リガンドの基礎

リガンドとは? リガンド(Ligand) は中心のものなどと強く結合するものという意味があります。そのため、リガンド(Ligand) という概念は、化学の分野以外でも使われています。たとえば、生体分子とのリガンドによって形成される複合体は、イオン結合や水素結…

錯体化学を学ぶときの金属・金属イオン

金属元素について 錯体は金属イオンと配位子で構成されることから、錯体において金属は重要な要素である。 元素周期表を見ると、元素の大半は金属である。また、研究者によって新たに作られ、確認される新元素も金属であるため、全元素における金属の割合は…

【錯体化学】錯体の配位結合と軌道の混成

配位結合 錯体化学において重要な要素の1つが、配位結合である。分子結合を形成する共有結合は、結合に関与する原子がそれぞれ電子を1つずつ出して電子のペアが形成され、この電子のペアによって結合ができる。この共有結合は、ルイスが提唱し、そして現在で…

八面体錯体の配位子置換反応の反応速度式・アイゲン ウィルキンス機構とフオス・アイゲン式

八面体錯体は、さまざまな酸化数の金属に対して、多様な結合状態を形成する。よって、置換反応にも、さまざまな反応経路が予想される。しかし、八面体錯体のほとんどすべては交替機構で反応が進行する。そこで反応を考えるうえで、その律速段階が会合性か、…

無機化学の反応の種類・化合物の分類・分析手法

化学試薬 化学反応では、他の物質を合成、測定、検出するために使用される物質のことを試薬という。つまり化学では試薬とは、「化学反応を起こさせるために系に加える物質や化合物、もしくは反応が起きているかどうかを確認するために加える物質や化合物」で…

【無機化学】群論と対称操作・対称要素、点群とフローチャートを丁寧にわかりやすく解説

群論と対称操作・対称要素 恒等操作 n回回転 鏡映 (反射) 反転操作 回映 分子の点群 点群を決めるフローチャート C1点群 C∞v点群 D∞h点群 Td点群・Oh点群・Ih点群 群論と対称操作・対称要素 分子の対称性は、分子の物理的性質や光学的性質に影響を与え、反応…

【錯体化学】錯体の配位数・内圏錯体と外圏錯体・結晶溶媒の解説

錯体の配位数 配位子の数は中心金属の配位数という。固体の場合と同じように、化合物によって配位数はさまざまな値をとる。配位数の最大は12である。 錯体の配位数を決定する要素は、主に以下の3つである。 中心原子、中心イオンの大きさ 立体障害:配位子間…

【錯体化学】錯形成反応・生成定数と解離定数の解説

錯形成反応 多くの金属イオンは、さまざまな配位子(錯形成剤)と平衡にある場合、ほとんど解離しない錯体を形成する。この錯形成を上手に利用し、ターゲットではない反応を遮蔽することで、錯体を分析化学に利用することができる。つまり、多くの金属イオン種…

生体内の錯体反応:血液中のヘムと酸素

生体内の錯体反応 生体内の反応でも、錯体に関する反応が起こっている。特に血液中のヘムに関しては、よく知られている。 血液中のヘムは鉄を強く保持している。これはヘムの窒素原子が鉄と強い配位結合を形成するためである。 鉄(鉄(II))は、酸素分子と結合…

有機金属構造体(MOF)の合成方法の概要

有機金属構造体 MOF (Metal-Oraganic framework) 有機金属構造体(MOF, Metal-Oraganic framework)は、ここ30年ほどの間、材料分野で注目されている材料の1つです。 MOFは分子サイズで見ると、穴(細孔)を有しており、金属と有機配位子の組み合わせによって細…

【錯体化学】配位子場遷移と電荷移動遷移・分光化学系列

配位子場遷移と電荷移動遷移 遷移金属錯体は特有の色を示すものも多い。そのため、可視吸収スペクトルなどを測定すると、可視領域に特有の吸収が表れる。吸収は錯体の分子軌道では、電子によって占有されたエネルギー準位から空のエネルギー準位へ電子が可視…

【錯体化学】遷移金属錯体のσ結合とπ結合

遷移金属錯体の結合 金属d軌道と配位子軌道の相互作用の結果、結合性、非結合性、反結合性の錯体分子軌道が形成される。一般に配位子軌道の方が金属結合より低いエネルギー準位にあるため、結合性軌道は配位子性が大きく、非結合性および反結合性軌道は金属…

【錯体化学】配位子場理論と6配位正八面体型錯体・平面正方型錯体・ヤーンテラー効果

配位子場理論 配位子場理論は錯体の電子構造の理論として知られているものであるが、もともとはイオン結晶に関する理論である結晶場理論を錯体系に適用したものである。 6配位正八面体型錯体 遷移金属の陽イオンの5つのd軌道は縮退している。そのため、5つの…

【錯体化学】錯体・中心金属・配位子・配位数と構造の解説

遷移元素または遷移金属、は中性および陽イオン状態で不完全なd殻、またはf殻を有する金属元素である。これらの遷移元素はScからCuまでの3d元素、YからaGまでの4D元素、HfからAuまでの5d元素のdブロック元素がひとまとめになり、LaからLuまでのランタノイド…

酸化数と酸化・還元・ラティマーダイアグラム(ラチマー図)

酸化数 化合物、もしくはイオン中において、元素の電気陰性度の大小に応じて、電荷の偏りを極端にした場合の各構成原子の荷電を酸化数という。同じ原子の場合は電荷の偏りがないとみなせるため、酸化数は全体の荷電を原子数で割ったものとする。異なる原子か…

【化学基礎】分子の結合と構造に関わる有効核電荷・イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度

化合物の結合や構造は、構成している原子の引き付けやすさや、電子間反発、価電子が占める分子軌道などの電子は関与する性質によって決定される。立体因子も電子間相互作用に含めることができるため、電子因子ということもできる。 有効核電荷 一般的に価電…

【分子軌道論】結合性、反結合性軌道の解説と窒素、酸素の分子軌道例

分子軌道論の結合性軌道や反結合性軌道の意味や考え方について解説しています。 さらに窒素や酸素の分子軌道を示しています。

イオン半径比と配位数の関係

イオン半径比と配位数 一般的に1価のイオン性化合物MXの全クーロンポテンシャルエネルギーは次の式で表すことができる。 ここで、はアボガドロ定数、はマーデルング定数、{tex: R]はイオン間距離である。この式から考えると、A/R比が大きくなる構造が安定で…

格子エンタルピーの求め方とボルンハーバーサイクル

格子エンタルピーとイオン結晶の構造安定性 定温、低圧におけるイオン結晶の構造安定性は、結晶構造が各イオンから形成される際のギブズの自由エネルギー変化の大きさに依存する。しかしながら、格子形成は非常に発熱的であり、エントロピー項は相対的に無視…

低速電子線回折法(LEED)について

低速電子線回折法(Low Energy Electron Diffraction、LEED)という固体表面を測定する手法の解説です。

固体触媒と表面構造(ステップ・キンク・アドアトム・再構成・表面緩和)

固体触媒では表面が非常に重要です。その表面のモデルやステップ・キンク・アドアトムといった表面構造、再構成・表面緩和といった表面特有の現象について解説しています。

金属触媒(固体触媒)とは?表面積・形態・分散度の解説

固体触媒、特に金属触媒について担持や表面積、形態、分散度について丁寧に解説している記事です。

触媒とは?触媒の定義と求められる重要な要素

触媒の定義と触媒を考えるうえで重要な活性、選択性、寿命、環境負荷について丁寧に解説しています。

触媒の分類(不均一触媒と均一触媒、エネルギー、反応、物質)

触媒の分類 触媒は、様々な基準で分類することができる。ここでは、その分類について取り上げる。 相による分類 触媒の相から気体触媒、液体触媒、固体触媒と分類することがある。 また、触媒の反応場の相と触媒物質の相が異なる場合を不均一触媒、触媒の反…

錯体と酸化数:酸化数をつけるときのルール

錯体と酸化数 錯体では酸化数を考えることは重要である。 錯体の性質は中心金属イオンの酸化数に強く支配される。そのため酸化数で現象や性質を整理して考えることが重要となるのである。 しかしながら、酸化数を割り振るということな、任意性がある場合があ…

錯体と配位子の解説

錯体と配位子 通常のイオンとは少し異なる錯体や配位子について、わかりやすく説明していく。 まず、金属イオンは、金属イオン自身のまわりに陰イオンや中性分子を方向性をもって規則的に配列させるという性質がある。 ジアンミン銀(I)イオン[H3N-Ag-NH3]+は…

原子間の結合領域と反結合領域と共有結合をわかりやすく解説

有機化合物の骨格となる部分を形成する結合のほとんどが共有結合である。この共有結合は、2つの原子の間で、それぞれの価電子を互いに共有してできた結合である。 この価電子の共有によって結合ができるということについて、もう少し深くわかりやすく考えて…

金属錯体:ジアンミン銀イオン

ジアンミン銀イオン 塩化銀 (AgCl) は硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム溶液を混合したときに生じる白色の沈殿である。塩化銀は水にはほとんど溶けない。しかし、アンモニア水には溶けてジアンミン銀イオン [Ag(NH3)2]+を形成する。このイオンは中心原子が銀イオ…

【高校化学】還元剤・酸化剤総まとめ

高校化学で登場する還元剤と酸化剤について表にまとめました。 還元剤:電子(e-)を放出 還元剤総まとめ表 還元剤は電子を放出して、他の物質を還元する物質です。ある物質を還元するとき、還元剤自身は酸化されます。 酸化剤:電子(e-)を吸収 酸化剤総まとめ…