錯体の配位数
配位子の数は中心金属の配位数という。固体の場合と同じように、化合物によって配位数はさまざまな値をとる。配位数の最大は12である。
錯体の配位数を決定する要素は、主に以下の3つである。
- 中心原子、中心イオンの大きさ
- 立体障害:配位子間の立体的な相互作用
- 中心原子、中心イオンと配位子、配位子間の電子的な相互作用
一般的に周期表の下の金属原子やイオンは半径が大きく、高い配位数をとる傾向がある。
立体的な観点では、かさ高い配位子は低い配位数をとる。また、電荷をもった、かさ高い配位子は、配位数に不利な静電的な相互作用の影響によって、特に低い配位数をとることが多い。
同一周期では、左側にある原子のイオン半径は大きく、高い配位数をとることが多い。中心の金属イオンの電子が少ない場合には、価電子数が少ないためルイス塩基の配位子からより多くの電子が受け取りやすくなるため、この影響が強く表れる。
一方で、d-ブロックの右側の金属、特に多くの電子をもつイオンは低配位数をとることが多い。こういった原子は、配位子となるルイス塩基から電子を受け取る能力が低い。他にも、中心金属と配位子が多重結合を形成する場合には、低配位数をとることが多い。これは、配位子から供給される電子が、他の配位子の結合を妨げるからである。
内圏錯体と外圏錯体
一般的に錯体として理解しているものは、内圏錯体 (inner-sphere complex)である。この錯体では、配位子が中心金属原子や中心金属イオンに直接結合している。内圏錯体では、配位子は錯体の第一配位圏(primary coordination sphere)を形成する。
錯体では内圏錯体を考えるが、カチオン性錯体が、すでに結合している配位子との交換なしで、アニオン性配位子と静電的に会合することがある。他にも、溶媒分子と別の弱い相互作用によって会合することもある。
この会合して形成される錯体は外圏錯体 (outer-sphere complex)といわれる。錯形成平衡を測定する多くの手法では、内圏錯体の錯形成反応と外圏錯体の錯形成反応を区別できず、結合している配位子の全ての和が検出される。金属原子と配位子が逆の電荷をもつ場合は、外圏錯体の形成についても考慮する必要がある。
結晶溶媒
錯体の結晶では、溶媒分子や配位子になる化学種が、構造の間隙に存在している場合には、直接金属原子と結合していないことがある。そのため、金属原子や金属イオンの配位数は、固体の組成から決定できるとは限らない。このような余分な溶媒分子を結晶溶媒という。