化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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ビアル試験:ビアル反応によるペントースの検出とその応用例

ビアル試験 (Bial's test)

ビアル試験はペントース糖の測定に使用され、この反応はビアル反応ともいわれます。

この反応に使用するビアル試薬は、オルシノール、塩酸、塩化鉄(III)から構成されます。ただしビアル試薬の各成分の濃度は、研究者によって異なっている場合があります。

また、このビアル試薬を改良するため、塩酸の代わりにエタノールを加える方法も考案されています。(参考文献1)

ビアル反応の原理

ビアル反応の原理は次のようになります。
五員環のペントース糖と加熱すると、ビアル試薬はペントースを脱水してフルフラールを形成します。このフルフラールがオキシノールと縮合することで、青緑色の生成物を形成し、溶液の色が薄黄色から青色または緑色に変化します。
また六員環のヘキソース糖と加熱すると、ビアル試薬はヘキソースを脱水してヒドロキシメチルフルフラールを形成します。このヒドロキシメチルフルフラールがオキシノールと縮合することで、茶褐色の生成物が形成され、色が薄黄色から灰色または茶色に変化します。(参考文献2)

例えば、ペントースの場合には、下記のような流れで呈色反応が起こります。

 

実際のペントースがビアル試薬と反応したことによる青緑色は、下記のような色となります。
ペントースを識別する青緑色は、他の色と容易に区別することができるため、ビアル試験はペントースの識別テストとして活用されています。

左、中央はペントースが陰性、右はペントースが陽性
(画像は参考リンク1より引用)

ビアル試薬の応用

ビアル反応の応用として、ホルムアルデヒドの検出への応用も報告されています。
ビアル試薬にホルムアルデヒドを数滴加えると、色が薄黄色から濃い黄色になることが報告されていました。(参考文献1)

そこで、オルシノールを使用して、紫外/可視光分光法と組み合わせて使用することによって、ホルムアルデヒドを定量的に検出する方法が考案されました。(参考文献3)

ビアル試薬と各濃度のホルムアルデヒドを90°Cで10分間加熱し、室温で30分間冷却した結果が次の通りです。

ホルムアルデヒドの初期濃度が左から右で、0.006 mM、0.06 mM、0.12 mM、0.6 mM、6 mM。Aは加熱5分後、Bは加熱30分後。

ホルムアルデヒドの濃度に応じて、さまざまな黄色の色調に変化し、吸収スペクトルからもその傾向が確認できます。検量線を見ると定量分析も可能であることがわかる。ただし、ホルムアルデヒドが高濃度の場合には、茶色の沈殿が形成され、分光光度中の光散乱効果を引き起こし、検量線の関係からズレが生じる原因となっている。

Aは1.2 mM (赤)、0.6 mM (橙)、0.45 mM (青)、0.3 mM (緑)、および0 mM (黒) のホルムアルデヒドをビアル試薬と反応させた場合の吸収スペクトル。Bはホルムアルデヒドの検量線。

参考文献

参考文献1
JSumner (1923) THE DETECTION OF PENTOSE, FORMALDEHYDE AND METHYL ALCOHOL. J Am Chem Soc 45(10): 2378-2380.

参考文献2
EBaldwin, D Bell (1955) Cole's Practical Physiological Chemistry, Heffer.
注、ブログ筆者は参考文献2は未読

参考文献3
Arthur Phillip Omran, Charles Brian Coughlin (2020) Bial’s Test, A Simple Method for Formaldehyde Detection, Methods, 27(3).
http://dx.doi.org/10.26717/BJSTR.2020.27.004515

参考リンク1

https://dept.harpercollege.edu/chemistry/chm/100/dgodambe/thedisk/carbo/bial/bials.htm