バーフォード反応とは?
スウェーデンの Christen Thomsen Barfoed によって考案された生化学試験がバーフォード試験 (Barfoed’s Test) です。また、このバーフォード試験で用いられる化学反応をバーフォード反応といいます。
バーフォード試験は、還元性をもつ単糖類と二糖類を区別するために使用されています。特に、アルデヒド基を含む単糖類と、アルデヒド基を含まない糖類を区別するために使用されています。
このバーフォード試験は、酸性溶液中の銅イオン (Cu2+) を還元する能力を活用することで、単糖類と二糖類を区別します。
この区別が可能となるのは、グルコースやフルクトースなどの単糖類には、酸性、高温条件下で銅(II)イオン (Cu2+) を銅(I)イオン (Cu+)に還元する酸化還元反応を起こすことが可能である遊離アルデヒドもしくはケト基が含まれているためです。
一方で、二糖類では、遊離アルデヒドもしくはケト基がないため、この還元反応は容易には起こりません。
バーフォード反応の原理
バーフォード試験は、還元性の単糖類および二糖類による酢酸銅の還元を利用しています。酢酸銅が糖類によって還元されると、酸化銅が生成し、次の引用画像のようにレンガ色の赤色沈殿が生じます。
バーフォード反応は、弱酸性条件下で、酢酸と酢酸銅(II)の混合物を試験溶液へ加えて、沸騰させます。
この場合、次のような化学反応が起こります。
RCHO + 2Cu2+ + 2H2O →RCOOH + Cu2O + 4H+
還元性をもつ単糖類は二糖類と比べて非常に速くバーフォード試薬と反応します。
特に酸性は還元に不利な条件です。しかし強力な還元剤である単糖類は1~2分程度で反応し、3分以内に大量の酸化銅(I) (Cu2O)の赤色沈殿物が生成されます。
一方で、二糖類は弱い還元剤です。そのため反応速度が遅くなります。二糖類とバーフォード試薬の反応が遅いのは、まず二糖類の加水分解が起こり、次に糖類がバーフォード試薬の酢酸銅と反応し、酸化銅を生成する必要があるためです。
よって、7~8分と長い時間が反応にかかります。
これらの還元性の違いによって、沈殿物が出現するまでの時間で、還元性単糖類と二糖類を区別することが可能となります。
バーフォード試験の手順
バーフォード試験の手順例を示します。
1. 蒸留水中の酢酸銅一水和物 7 g を氷酢酸 1 ml と混合し、最終液量を100 mLにします。
2. 試験で確認する 2% 糖溶液 1 mL をバーフォード試薬 3 mL に加えます。
3. 試験管を沸騰湯浴に入れ、1 ~ 2 分間加熱します。試験管を湯浴から取り出し、冷却します。
4. 赤い沈殿物が形成されると、還元性の単糖類が確認できます。
上記のように、バーフォード試薬を加えて、15分間程度放置して観察すると、単糖類の場合は、5分以内にオレンジ色または赤色の沈殿物が生じます。一方で、二糖類の場合には、沈殿が生じるまでに7~12分程度かかります。
よって、陽性を+、陰性を-で表すと次のような観察結果が得られます。
バーフォード試験の注意点
尿にはバーフォード反応を妨げる可能性があるCl-イオンが含まれています。そのためバーフォード反応は尿中の糖の検出には適していません。
また、サンプルに高濃度(≧ 5% w/v) の二糖類が含まれている場合には、陽性の結果が観察される可能性があります。
そのため、二糖類溶液の濃度は1% (w/v)を超えないように注意が必要となります。
また、バーフォード試薬の沸騰時間が長くなると、二糖類が加水分解され、陽性の結果が観察される可能性があるため、注意が必要となります。
バーフォード試験で区別ができない他の糖類を検出する手法は こちら の記事も参照ください。
参考文献
参考文献1
Jain, A., Jain, R., Jain, S. (2020). Basic Techniques in Biochemistry, Microbiology and Molecular Biology. Springer Protocols Handbooks.
https://doi.org/10.1007/978-1-4939-9861-6
参考文献2
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https://pubs.sciepub.com/wjce/6/2/1
参考文献3
Tiwari, A. (2015). Practical biochemistry: A student companion. LAP Lambert Academic Publishing.