化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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原子間の結合領域と反結合領域と共有結合をわかりやすく解説

有機化合物の骨格となる部分を形成する結合のほとんどが共有結合である。この共有結合は、2つの原子の間で、それぞれの価電子を互いに共有してできた結合である。

この価電子の共有によって結合ができるということについて、もう少し深くわかりやすく考えてみる。

1951年にベルリンらが共有結合について報告をしている。これは、2中心1電子系における原子核一電子間のクーロン力と結合力を考察したものであり、核間に引力が働くか反発が生じるかは、電子の存在する領域に依存するという内容である。

この領域は、それぞれ核間に引力が働く領域を結合領域、核間に反発が生じる領域を反結合領域といった。結合領域と反結合領域のイメージは次の図のようなイメージである。

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核間の結合領域と反結合領域

2つの核の間が結合領域であり、それ以外の領域は反結合領域である。イメージ図の中の曲線は、その結合領域と反結合領域の境界線である。

結合領域に電子が存在する場合、2つの原子核を繋ぎ止める”のり”のように働き、原子核同士の反発力と釣り合うことによって、ある原子間距離が保たれる。

一方で、反結合領域に電子が存在する場合、原子核同士の反発と同じように働き原子間距離を広げるようになる。

結合領域では、電子が存在することによって結合が強くなる。逆に反結合領域では、電子が存在することで結合が弱くなる。反結合領域の「反」はこういった結合が弱くなるイメージから付けられている。

このように電子が1個でも結合が生成する。実際に、H2+という分子が存在する。しかしその結合は共有結合と比べると弱い結合である。

次に電子が1個ではなく、2個になった場合について説明する。電子が2個以上になった場合、厳密な取り扱いはできなくなる。しかし。定性的には結合領域に2個の電子が存在する場合、結合領域に電子が1個存在した場合よりも結合が強くなるということができる。

これが、各原子が価電子を共有して電子対を生成し、共有結合ができるという考え方である。

水素分子の構造式H-Hは間の"-"が2つの水素原子間に存在する電子対による共有結合ができていることを表わしており、2つの電子が原子を繋ぎ止める"のり"の役割をしている。