格子エンタルピーとイオン結晶の構造安定性
定温、低圧におけるイオン結晶の構造安定性は、結晶構造が各イオンから形成される際のギブズの自由エネルギー変化の大きさに依存する。しかしながら、格子形成は非常に発熱的であり、エントロピー項は相対的に無視できる。そのため、エンタルピー変化の大きさでイオン結晶の構造安定性を議論することができる。
格子エンタルピーはイオン結晶が気相イオンに分解する反応の標準エンタルピー変化で次の式に関連して定義することができる。
ここでsは固体、gは気体、Lは格子を表す。
この格子エンタルピーはボルンハーバーサイクルを用いて各段階のエンタルピー変化の値から間接的に見積もることができる。
例としてKClのボルンハーバーサイクルを示す。
つまり、単体からのイオン結晶標準生成エンタルピー変化()、固体元素単体の昇華エンタルピー、気体元素分子の乖離エンタルピーに対応する原子化エンタルピー変化
、陽イオン生成に必要なイオン化エンタルピーと陰イオン生成に必要な電子獲得エンタルピーに対応するイオン化エンタルピー変化
を用いて閉じたサイクルを形成する。
サイクル1周りのエンタルピー変化が0になることを利用して、次の式のように格子エンタルピーが求められる。