化学徒の備忘録

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絶縁体について

絶縁体について

固体はその電気伝導性によって、金属、半導体(semiconductor)、絶縁体(insulator)の3種類に分類される。

ダイヤモンドは絶縁体である。ダイヤモンドは原子軌道同士の相互作用がゲルマニウムやケイ素よりもさらに強いためバンドギャップが大きい。よって、一般的に室温で電子励起は起こらず、キャリヤーが生じないためダイヤモンドは絶縁体となる。

炭素の同素体である黒鉛は金属的な電気伝導性を示す。黒鉛はsp2混成の炭素の平面六角形が無限に連なったシートが積み重なった層状構造をもつためである。このシートの面に垂直なp軌道同士の重なりによる\pi結合が面全体に渡って非局在化し、幅広いエネルギーバンドを形成している。このうち半分の結合性軌道が電子で占有されているので、金属的な電気伝導性を示す。ただし、電気伝導性には異方性があり、シートの面に平行な方向では金属的な伝導性を示す。しかし、垂直方向での伝導性は半導体的である。

イオン結晶と絶縁体について

イオン結晶は絶縁体である場合が多い。

イオン結晶では、価電子帯は陰イオンの軌道どうしの相互作用によって形成され、一方伝導帯は陽イオンの軌道どうしの相互作用によって形成される。例えば塩化ナトリウムNaClの結晶ではCl-の3s軌道と3p軌道がイオン間で相互作用し、価電子帯が形成される。同様にNa+の軌道どうしも相互作用して伝導帯を形成する。これらの軌道相互作用は弱いため、バンド幅は狭い。また、塩素とナトリウムとで電気陰性度に大きな差があるため、塩素の軌道から形成される価電子帯はナトリウムの軌道から形成される伝導帯よりも下にある。室温の熱エネルギーではこのバンドギャップを超えることができないため、塩化ナトリウムは絶縁体となる。

有機化合物と絶縁体について

有機化合物は多くの場合絶縁体である。

ほとんどの有機化合物は分子性結晶を形成し、分子間での軌道相互作用がほとんど起こらないため、幅広いバンドが形成されない。そのため絶縁体となる。しかし、\pi電子を多数もつ多環式芳香族化合物やフタロシアニン、電荷移動錯体などは黒鉛と似た層状構造をとることによる\pi電子系の相互作用によって、有機半導体となる。