固体表面のモデル
固体触媒では、表面構造によって、触媒活性が大きく変化するということがよくある。そこで、表面構造を考え、実験を行うことは非常に重要となる。
一般的にモデルを考える場合は固体触媒は、表面構造が均一な単結晶の表面が露出していると考えることが多い。そこで、まずは金属の単結晶の表面構造を考える。
金属の単結晶の代表的な結晶構造は面心立方格子(fcc)、体心立方格子(bcc)、六方最密充填構造(hcp)がある。また、実際の粒子の形状は、特に微粒子では球形ではなく、平坦面が露出している場合が多い。そこで、単結晶の金属粒子を特定の方向に切断し、低指数の面が露出しているとすると、その面はミラー指数で表すことができる。
結晶面、つまり格子の切り出し方によって、表面の原子の密度も変化する。例えば、面心立方格子(fcc)の場合は、各面で切り出し、その面の上から原子の並びをみると、おおむね図のようになる。そのため、表面原子数の密度は(111)>(100)>(110)の順番となる。
体心立方格子(bcc)の場合は、おおむね図のようになる。そのため、表面原子数の密度は(110)>(100)>(111)の順番となる。
固体表面の構造
しかし、こういった金属の単結晶の表面構造が、そのまま触媒表面に反映されているわけではない。表面はテラスといわれる平坦部分以外にも、ステップといわれる階段部分や、2つのステップが交わるキンクといわれる部分、アドアトムといわれる表面の最外層部分、空格子点ともいわれる表面の格子欠陥部分などが存在している。こういったステップやキンク部分の原子は平坦な部分よりも配位不飽和となるため、触媒の活性点として働く場合があると考えられている。
固体表面の再構成
固体表面の構造は、固体内部の(バルク)構造が連続しているというわけでもない。表面はエネルギー的に安定な表面構造となるように、表面の構造が変化する。こういった表面におこる表面の再構成によって、表面原子の配列が変化する。
結晶の内部の構造がそのまま表面に反映されると考えると、Au(100)、Pt(100)、Ir(100)は、結晶内部の面心立方格子(fcc)構造から表面構造は正方格子なると考えられるが、実際には(111)のような六方格子(5×20構造、Irは5×1構造)に再構成される。転移温度以上に加熱された場合は再構成は解除され、(100)面に戻る。Au(110)、Pt(110)、Ir(110)、Pd(110)では2×1と呼ばれる構造に再構成される。この構造は原子列が一つおきに欠損した(missing row)構造になる。W(001)、Mo(001)はc(2×2)構造に再構成される。
固体表面の表面緩和
表面の原子間距離の変化によってエネルギー緩和が起こる表面緩和も表面では起こる。表面の1層目と2層目の原子間の間隔は縮まり、逆に2層目と3層目の原子間の間隔は広がる傾向にあり、理想的な結晶の格子間隔と1~10%程度異なるといわれている。
金属酸化物表面のランプリング
金属酸化物の場合、表面外にあった電子が、表面原子間のすきまに平滑に分布しようとすることで、正の電気を帯びる陽イオンが固体内部側へ引き込まれ、陰イオンが表面原子側に突き出すランプリングが起こる。