固体表面では、2次元の周期性を維持したまま原子間距離が固体内部の値とは変化する表面緩和という現象や、原子配列が固体内部と表面で変わり、新たな周期構造が現れる表面再構成が起こることが知られている。
他にも表面への原子や分子の吸着において、吸着子自身の秩序構造形成や吸着に誘起された下地表面の緩和、再構成が起こることがある。
こういった表面原子の2次元規則的配列は、低速電子線回折法(Low Energy Electron Diffraction、LEED)という手法によって調べることができる。低速電子とは10~500 eV程度のエネルギーの電子のことを指す。このエネルギーの電子は物質との相互作用が強いため、物質内部に深く侵入することがなく、表面数層まで侵入する間に一部は吸着され、残りは真空中に反射されることになる。この反射電子は表面による回折を受けるため、表面数層の原子配列を調べることができる。つまり原理は電子線の回折現象を利用するものである。
簡潔に説明すると、10~500 eVのエネルギーの電子線を固体表面に衝突させることで、散乱して戻ってきた電子の回折像から表面の格子点や周期構造を調べる。
蛍光面にはブラッグの条件に従った回折点が現れる。この回折点は表面原子に対応するわけではなく、周期性を表す逆格子に対応する。周期性が高く、規則的であるほど、シャープな回折点が現れる。
表面の格子の形や大きさといった表面構造の対称性は、回折パターンから求めることができ、表面再構成や緩和が起きた時の表面原子の絶対位置や格子定数は低速電子線回折法によって得られた回折強度の理論的解析によって精密に測定することができる。