化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

格子比熱と格子比熱の式

格子比熱

格子比熱とは、固体の比熱のうち格子振動の寄与する部分のことである。

固体の比熱を考える場合、固体の内部エネルギーが温度に対してどのように変化するかを考える。この固体の内部エネルギーは格子振動のエネルギーと電子系のエネルギーに分けられる。しかし、電子系のエネルギーは格子振動のエネルギーに比べると温度による変化が小さい。そのため、比熱への寄与については、電子系のエネルギーの比熱への寄与は小さく、格子比熱を考える方が重要となる。

格子比熱の式

まず、格子振動のエネルギーについて考える。

フォノンの波数ベクトルをk、縦音響モードや横光学モードなどのフォノンのモードの数をs、格子振動の角振動数を\omega、フォノンの個数をn、換算プランク定数を\hbarとする。

N原子系からなる格子振動のエネルギーは次のように表される。

 \displaystyle U = \sum_k \sum_s \left( n_{k, s} + \frac{1}{2}  \right) \hbar \omega_{k, s}

また、温度Tで、フォノンの個数がnである確率P_nは次の値に比例する。

\displaystyle P_n \propto \exp\left( {- \frac{ \left( n + \frac{1}{2} \right) \hbar \omega_{k, s}}{k_B T}} \right)

よって 、フォノンの個数n_{k, s}の期待値は次のようになる。

 \displaystyle \langle n_{k, s} \rangle = \frac{\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} nP_n}{ \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} P_n} = \frac{\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} n \exp\left( {- \frac{ \left( n + \frac{1}{2} \right) \hbar \omega_{k, s}}{k_B T}} \right)}{ \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \exp\left( {- \frac{ \left( n + \frac{1}{2} \right) \hbar \omega_{k, s}}{k_B T}} \right)} = \frac{1}{ \exp\left( { \frac{ \hbar \omega_{k, s}}{k_B T}} \right) -1 }

次に比熱について考える。物質の温度を\Delta T 上げるために必要な熱量をQとする。このとき、温度が\Delta T 上がることによって、物質の内部エネルギーの増加量は\Delta U = Qとなる。

そのため、比熱Cは、\Delta T \rightarrow 0の極限を求めることで、次のように表される。

 \displaystyle C = \lim_{\Delta T \rightarrow 0} \frac{Q}{\Delta T} =  \lim_{\Delta T \rightarrow 0} \frac{\Delta U}{\Delta T} = \frac{\partial U}{\partial T}

この式に、格子振動のエネルギーに関する式を代入すると次のようになる。

 \displaystyle C = \frac{ \partial }{ \partial T } \left( \sum_k \sum_s \left( \frac{1}{ \exp\left( { \frac{ \hbar \omega_{k, s}}{k_B T}} \right) -1 } + \frac{1}{2}  \right) \hbar \omega_{k, s} \right)

ここで、\frac{1}{2}は温度Tの微分によって0となる。そのため、次のように、格子比熱の式が得られる。

 \displaystyle C = \frac{ \partial }{ \partial T } \sum_k \sum_s \frac{ \hbar \omega_{k, s} }{ \exp\left( { \frac{ \hbar \omega_{k, s}}{k_B T}} \right) -1 } 

しかし、この式はksの総和を求める式であるため、解析的に扱うことが難しいため、3次元の周期的境界条件を考え、比熱の式を得る場合や近似を行った比熱の式の近似式を利用することも多い。