化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【錯体化学】配位子・リガンドの基礎

リガンドとは?

リガンド(Ligand) は中心のものなどと強く結合するものという意味があります。
そのため、リガンド(Ligand) という概念は、化学の分野以外でも使われています。たとえば、生体分子とのリガンドによって形成される複合体は、イオン結合や水素結合などの弱い非共有結合性相互作用も含まれており、こういったリガンドは生物学などで用いられています。生物化学などにおいても、こういったリガンドという言葉を目にすることがあります。

リガンド(配位子)とは?

一方で、錯体化学では、リガンド (配位子) は中心原子に結合 (もしくは共有結合) できる適切なドナー基を持つ分子またはイオンです。
また、錯体の配位の中心となる中心原子は金属であることが一般的ですが、半金属原子も同様の役割を果たすことがあります。
ちなみに厳密な話としては、分子やイオンに結合する前はリガンドとはいえません。そこで、区別して、結合する前のものをプロリガンド (Proligand) と呼ぶこともありますが、一般的には結合する前ものもリガンドと呼んでいることが多いです。

配位子として金属イオンと結合できる化学種は、無機の原子、イオン、分子だけでなく有機分子や有機イオンなども含まれます。

配位子が結合できることが知られている分子や、配位子として結合できる分子の数は非常に多く、またほとんどの有機分子は直接配位子として機能するか、配位子として機能する分子に変換することができます。
このように多くの分子などが配位子として機能できる大きな理由は、シンプルな原子価結合モデルでは、少なくとも1つの孤立電子対があれば原子や分子が配位子として機能するからです。非共有電子対をもつ原子はドナー原子ともいわれます。
また、配位子がアミン (R-NH2)やカルボン酸 (R-COO-) などの官能基である場合でも、金属に結合している原子は1つとなるため、どの原子が結合しているかは大事な点となります。

配位子は結合すると、中心の金属イオンに大きな影響を与えることや、結合した配位子が独自の化学反応を起こすことも知られています。

配位子は金属イオンに結合するための非共有電子対をもつドナー原子を表すために、Mn+←:L (配位子はL、孤立電子対を:で表している) といった表記をすることがあります。この場合のように、1つの配位部位のみを占有している配位子は単座配位子といいます。

単座配位子の例としては、アンモニア (:NH3)や水(:OH2)、塩化物イオン(:Cl-)などがあります。ただし実際には、水や塩化物イオンはドナー原子上に複数の孤立電子対を持っています。つまり、多くのリガンドは複数のドナー基をもっており、それぞれのドナー基が同じ金属に結合できる非共有電子対であるため、多座配位子になる可能性があります。
一般的に、有機分子内のヘテロ原子 (特にO、N、S、P) は、1つもしくは複数の孤立電子対を有機分子にもたらしていることになります。これは、配位子内のドナー原子となるための重要な要素でもあります。そこで、有機分子中にO、N、S、Pといったヘテロ原子が存在するかどうかは、有機分子がリガンド(配位子)として機能し、有機分子が金属イオンとの結合を形成するためのドナー基があるかどうかを考える際に考慮する要素の最初のステップとなります。ただし、原子の位置、局所環境、他のドナーになりうる基などの影響によって、配位は変わるため、配位については、さらに多くのことを考慮して考える必要があります。