化学徒の備忘録

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Langmuirの吸着等温式の導出

Langmuirの吸着等温式の導出

Langmuirの吸着等温式(Langmuir式、ラングミュアの吸着等温式)は吸着等温式の中でも古いものの一つである。

このLangmuir式の導出は、次の仮定からはじまる。

  1. 固体面に吸着席があり、そこには一つの分子(原子)のみが吸着する。また、吸着した分子は席をかわることはできない。(局在化という)
  2. 単分子層吸着のみが起こる。
  3. 吸着した分子間での相互作用はない。
  4. 吸着熱は表面の被覆率に依存しない。
  5. 気相は理想気体である。

これらの仮定によって、吸着平衡は吸着速度v_aと脱着速度v_dが等しいとして導出する。

圧力pにおける単位固体面積あたりの平衡の吸着量をn_a、単分子層としての飽和吸着量をn_mとする。また、吸着の活性化エネルギーをE_a、脱着の活性化エネルギーをE_dとする。

吸着の速度v_aは次の3つに比例すると考える。

  1. 気体分子が固体表面と衝突する速度
  2. 固体面の空いた席に衝突する確率
  3. 化学吸着の場合の活性化の項

これを式で表すと次のようになる。

  1. v_a \propto p
  2. v_a \propto \left ( 1- \frac{n_a}{n_m} \right )
  3. v_a \propto e^{\frac{-E_a}{RT}}

脱着の速度v_dは次の2つに比例すると考える。

  1. 固体表面の被覆率
  2. 化学吸着の場合の活性化の項

これを式で表すと次のようになる。

  1. v_d \propto \frac{n_a}{n_m}
  2. v_d \propto e^{\frac{-E_d}{RT}}

 吸着速度v_aと脱着速度v_dが等しいとすると次の関係が成り立つ。

v_a = v_d

以上より、k_ak_dを比例定数とすると次のような式が成り立つ。

k_a p \left ( 1- \frac{n_a}{n_m} \right ) e^{\frac{-E_a}{RT}} = k_d \frac{n_a}{n_m} e^{\frac{-E_d}{RT}}

ここで吸着熱 \Delta H_aは次の関係が成り立つとする。

 \Delta H_a = E_a - E_d

またa'を次のように定義する。

 a' \equiv \left ( \frac{k_a}{k_d} \right ) e^{\frac{- \Delta H_a}{RT}}

a'を用いて、吸着と脱着の関係は次のように表すことができる。

 \displaystyle a' p = \frac{ \frac{n_a}{n_m} }{ \frac{1-n_a}{n_m} }

この式は次のようにも書ける。

\displaystyle \frac{n_a}{n_m} = \frac{a' p}{1 + a' p} 

\displaystyle \frac{p}{n_a} = \frac{p}{n_m} + \frac{1}{a' n_m}

 Langmuir式に従う吸着である場合、 \frac{p}{n_a}pに対してプロットすると直線が得られる。傾きおよび切片から飽和吸着量n_mおよび吸着熱(固体と吸着分子の分子間相互作用)に関連したa'が得られる。

Langmuir式はいくつかの仮定に基づいて導出される。一般的に固体面は不均一であるため、固体と吸着分子の相互作用んも強い部分から吸着は始まると考えられる。このような場合、吸着による発熱は被覆率の小さいときの方が大きいと考えられるため、吸着熱は表面の被覆率に依存しないという仮定は成立しなくなる。また、吸着席間の距離が、吸着分子間相互作用が顕著になる距離よりも小さい場合、吸着した分子間での相互作用はないという仮定も成立しなくなる。また飽和蒸気圧付近では、気相は理想気体であるという仮定も成立しなくなる。このようにLangmuir式は、実際には仮定が成立しない場合もあるが、適用できる系も多いため利用されている。