ヘリウムの特性と利用
周期表の18族の希ガスの中で最も軽いガスがヘリウムです。ヘリウムは軽いことや、不活性であることや、熱伝導性が高いことが特徴です。
このヘリウムを液化させた液体ヘリウムは原子量が小さく、原子間引力が弱いため、量子力学的零点振動の効果が大きいことから、量子液体ともよばれています。
この液体ヘリウムは沸点が-296 ℃ (4 K)とあらゆる物質の中で最も沸点が低いため、極低温を得るための冷却材として用いられています。
ヘリウムは極低温で行われる超伝導実験の冷却材以外にも、化学分析に用いられる核磁気共鳴装置 (NMR) などの超伝導磁石を利用する装置の冷却やガスクロマトグラフィー (GC) のキャリアガスにも利用されています。
また、身近なところでは病院の核磁気共鳴断層撮影装置 (MRI) にも使用され、工業的には光ファイバーや半導体製造などヘリウムは幅広く利用されています。
そして最近では、新興国のMRIの設置台数の増加や通信インフラ整備による光ファイバー市場の拡大などによって、世界的なヘリウムの需要は増加しているといわれています。
ヘリウムの産出と供給
このヘリウムは地球上の大気にはわずかにしか含まれておらず、地下の天然ガスから分離、精製して生産されています。実際には、採算性からヘリウム単独では採掘が行われておらず、天然ガスの採掘時の副産物として生産が行われています。そのため、ヘリウムの生産量は天然ガスの生産状況に影響されます。また、ヘリウムは日本国内では産出が無く、100%輸入されている資源となります。
ヘリウムの主な産出国はアメリカ、カタール 、アルジェリア、ロシア、ポーランド、オーストラリアであり、日本は主にアメリカとカタールから輸入しています。
しかし、アメリカはヘリウムを戦略資源と位置づけ国家的備蓄を進め、国外販売は終了へ向かっています。また、中東には情勢不安定という問題があり、カタールは周辺国との国交断絶などにより、カタールからは安定的な供給ができていません。
そのため、日本国内へのヘリウム輸入量の減少や、ヘリウムの価格の高騰が起きています。
ヘリウム危機・ヘリウムショック
こうして天然資源であるヘリウムの供給が不足する問題は"ヘリウム危機”や”ヘリウム問題”、オイル・ショックになぞらえて”ヘリウム・ショック”といわれています。
ヘリウムの供給不足は2012年頃に世界的な問題となり、その後供給不足は解消されたものの2017年頃に再び問題となりました。そして2019年に再びヘリウムガスの価格の高騰や、供給の遅れとして問題が生じています。
ヘリウムは天然ガスに微量含まれる希少資源であることを改めて認識する問題です。