化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

色中心とその種類(F中心・V中心)・形成方法・天然の色中心の例

色中心とは

本来は透明な結晶が、光を吸収して琥珀色や紫色、青色などの色が着いた結晶のようになることがある。これは、結晶の局所構造に由来し、この着色を示す由来となるもとを色中心 (color center)もしくは着色中心という。

色中心は、イオン結晶中の格子欠陥に捕らえられた電子や正孔(ホール)が、光を吸収することに由来している。捕獲された電子は、ある準位から別の準位へ遷移するために固有のエネルギーが必要である。このエネルギーが可視光領域の光 (電磁波スペクトル)であり、色中心に相当する。

色中心の種類

格子中の欠陥に束縛された電子に由来するものをF中心(F型中心、電子中心)という。格子中の欠陥に束縛された正孔に由来するものをV中心(V型中心、正孔中心)という。

F中心が複数集まったものはF-aggregated centersともいわれ、F中心が2個集まったものはM中心、F中心が3個集まったものはR中心、F中心が4個集まったものはN中心といわれる。また、F中心のまわりの金属イオンの一つが異種金属で置き換わった場合をFA中心という。

V中心も、さらにVk中心、H中心、V1〜V4中心などに分類される。Vk中心とH中心は電子スピン共鳴 (ESR) の研究によって、その構造が確かめられている。

Vk中心はハロゲン化アルカリ結晶 (アルカリハライド結晶) では隣り合う2個のハロゲン化物イオン (ハライドイオン) (X-)2に共有された1個の正孔からなっている。全体としては、X2-分子を形成している。Vk中心が自由電子を捕らえることによって緩和励起子が形成され、その状態からの発光が結晶固有の発光となる。

H中心は、格子間位置に押し込められた中性のハロゲン原子に由来している。

他に不純物によるものはU中心という。

色中心がつくる色は、母結晶に固有のものである。NaClはの色中心の色は深い黄色がかったオレンジ色(こはく色)である。KClは紫色、KBrは青緑色である。

色中心の形成方法

透明なハロゲン化アルカリ結晶 (アルカリハライド結晶) に室温でX線を当てると、明るく着色することが知られている。また、X線以外にも紫外線、中性子線などの高エネルギー光を照射すると、色中心を形成することがわかっている。放射線による着色ではF中心とV中心が同時に形成され低温では安定である。しかし、光や熱によって電子と正孔の再結合が容易に起こり色が無くなる (退色する) ことがある。

結晶をアルカリ金属とともに加熱することでも色中心が形成される。この方法を、付加着色という。付加着色の場合、F中心のみが形成され着色は安定である。

付加着色の際は、過剰のアルカリ金属原子は結晶中に拡散し陽イオンサイトに収まり、同時に同数の陰イオン空孔が生成する。アルカリ原子のイオン化によってできる電子は、このイオン空孔に捕獲される。どのアルカリ金属を使用するかは問題ではない。NaClをカリウムと一緒に加熱しても、色中心の色は変化しない。それはハライド母結晶中の陰イオン空孔に捕獲された電子に特有の色だからである。

しかし、光や熱によって、中心間に相互変換が起こる。例えば、NaClは加熱によって、赤色から青色へと変化する。

また、先のとがった陰極を用いて電解電流を流した後に、急冷することでも色中心が形成される。この方法を電解着色という。

 NaCl結晶をCl2気体中で加熱するとH中心が形成される。この場合は、[Cl2]-イオンが形成され、一つの陰イオンサイトを占める。また、F中心とH中心は完全に補色であり、2つが出会うと互いに打ち消し合う。

天然の鉱物の色中心

天然の鉱物や結晶の色は、色中心によるものがある。

煙水晶の色は色中心によるものであり、煙水晶は少量の不純物を含むシリカ (SiO2) の結晶である。煙水晶はシリカに少量のAl不純物が含まれている。格子中でAlはSiを置換し、Alと当量のH+が存在することで電気的中性が保たれている。そして、イオン化光と[AlO4]5-単位の反応によって放出された電子がH+によって捕獲されたときに色中心が生じる。これは次の反応である。

[AlO4]5- + H+ → [AlO4]4- + H

この結果 [AlO4]4-単位は電子不足となり、その中心は捕獲された正孔をもっていると考えられる。この単位が色中心であり、光を吸収して煙のような色を出している。

アメジストの色も色中心による。アメジストは紫水晶ともいわれ、シリカ (SiO2) 結晶に不純物が含まれるものであり、含まれる不純物はFe3+である。アメジストに光を照射すると[FeO4]4-が光を吸収して、特徴的な紫色を出す色中心が形成する。

天然に産出する青い岩塩 (NaCl) は、付加着色によってF中心が形成されることによるものである。

鉱物の蛍石CaF2は青蛍石として産出される。この青紫も色中心の存在によるものである。