銀鏡反応とは
銀鏡反応 (silver mirror reaction) は還元性有機化合物の検出反応の一つである。Tollensの反応ともいわれる。銀鏡反応を用いる検出法を銀鏡試験という。銀鏡反応を用いてアルデヒドの検出が行われる。
また、銀鏡反応によって金属イオンが析出した後に、溶液中に残っている過剰の銀イオンをヨウ化カリウムで電位差滴定することで、アルデヒドなどの還元性有機化合物の定量にも利用できる。
銀鏡反応を示す還元性有機化合物としては、ホルムアルデヒドやブドウ糖、果糖のような還元糖、酒石酸塩などがある。一方で非還元性二糖類であるショ糖 (砂糖) はこの反応を示さない。
銀鏡反応の手順
表面を清浄にした試験管などのガラス容器に硝酸銀溶液を加え、さらにアンモニア水を少しずつ加える。このとき一度、褐色沈殿が生じるが、この褐色沈殿が消失するまでさらにアンモニア水を加えて透明溶液にする。この試薬をTollens試薬ともいう。
これに還元性有機化合物などの試料を入れる。
その後、バーナーの小炎で加熱するか、水浴中で50~60℃に加温すると、容器の内面に銀が析出することで容器が銀めっきされ、鏡のようになる。これを銀鏡という。この反応が銀鏡反応である。
Tollens試薬は、使用直前に調製する。Tollens試薬を永く保存すると雷銀を生成し、突然激しく爆発することがある。
銀鏡反応の反応式
Ag+、Cu2+、Zn2+などの金属イオンはアンモニア溶液中で水酸化物の白色沈殿を生成する。しかしアンモニアが過剰になるとアンミン錯体を生成する。このアンミン錯体は通常無色透明である。
そのため硝酸銀溶液にアンモニアを加えたときに次の反応により白色沈殿が生成する。
Ag+ + OH- → AgOH
しかしながら、AgOHは次の反応によって脱水し、酸化銀が生成する。そのため褐色沈殿となる。
2AgOH → Ag2O + H2O
この褐色沈殿は過剰のアンモニアにより、銀アンミン錯体[Ag(NH3)2]+を生成して溶ける。
この銀アンミン錯体[Ag(NH3)2]+と還元性有機化合物であるR-CHOなどが次のように反応し、銀が析出する。
R-CHO+2[Ag(NH3)2]OH → R-COONH4+3NH3+H2O+2Ag