化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【有機化学】カルボン酸の解離と共鳴構造・アルコールとの比較

カルボン酸の解離と酸性

酢酸CH3COOHのようなカルボン酸RCOOHは、水溶液中では下に示すような化学平衡によって解離し、酸性を示す。

CH3COOH ⇄ CH3COO- + H+

多くのカルボン酸は水に対する溶解度が小さいが、アルコールのような有機溶媒中でも、同じように解離することが知られている。

解離の程度を示す酸解離指数pKaは酢酸で4.86であるように、大きい値ではないが、エタノールなどのアルコールのpKaは17程度であり、アルコールに比べればかなり大きい値を示す。

このカルボン酸とアルコールを比較すると、酢酸の解離指数は12桁ほど小さく、酢酸の解離平衡はエタノールの解離平衡よりも、右辺に偏っている。その理由は共鳴によって説明することができる。解離の結果生じるカルボキシレートイオンCOO-に下の図のような共鳴式を書くことができる。つまり、カルボキシレートイオンが共鳴によって安定化するためであると考えられる。

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酢酸の共鳴構造

この図では非共有電子対を黒丸で表している。またやじりが二つある曲がった矢印は電子対の移動を表している。

カルボキシレートイオンの共鳴式は酸素に負電荷があり、化学的にも安定なものと考えれる。この2個の共鳴式はベンゼンの2個のケクレ構造共鳴式と比較できる。

一方でエタノールの解離によって称しるエトキシドイオンには、このような共鳴式はないため、特別な安定性ももっていない。