化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【化学学生向け】実験ノートの書き方の原則とポイント

実験ノートとは

実験ノートは、実際に行った実験の記録をするものである。そして、この実験ノートに記載された内容にもとづいて、実験レポートや論文を執筆する。また、実験ノートに記載された情報に基づいて同じ実験を行い再現性を確認する場合もある。

よって、実験ノートには実験操作や観察した内容について、必要な情報だけでなく、必要となる可能性のある情報をできるだけすべて記録することが好ましい。

当然、よい実験ノートとは、レポートや論文を書くために必要な情報がわかりやすく記録されているものである。大学での演習実験や大学の研究室の習慣などによって実験ノートの書き方のルールが存在する場合もあるが、基本的に共通の決まったルールは存在しない。

実験ノートは実際に行った実験の計画、過程、結果など実験にかかわる様々な事柄を記録する。また、卒業研究などで特許に関わる発見をした場合には、その発見(発明)がいつ、だれによって行われたかを証明する証拠となる。また、倒錯や捏造が疑われた際の身を守るための法的な根拠にもなりうる。

そのため、実験ノートは絶対に紛失してはいけないことは心に留めておくべきである。卒業研究では基本的に研究室から持ち出さないようにするべきである。

また、実験ノートには耐久性の高さ改ざんが不可能(困難)であることが要求される。

実験ノートは大学や研究室で指定されている場合はそれを購入すると良い。また、実験ノートとして販売されている専用のノート(ラボノート等)もあるため、指定がない場合はそういったものを購入するとよい。

逆に大学ノートやルーズリーフ式のノートは実験ノートとしては適していない。

耐久性の高さ

実験ノートは長期間の保存が必要なため、劣化しにくい良質な紙であることが好ましい。また、実験室で実験を行いながら規制するため、耐薬品性や耐水性も求められている。紙の厚さはインクで書いた文字が裏側ににじまない程度のものが望ましい。またハードカバーのものは一般的に耐久性が高いが、保管のスペースも多く必要になる。

改ざんの困難な工夫

特許権の取得を目的としていない場合でも、証拠能力をもつために、ページの差し替えなどができない、糸綴じ製本され、ページ番号が記入されているノートを利用することが好ましい。

実験ノートの注意事項

  • 実験ノートは紛失してはいけない
  • ページを破る、差し替える、追加するなどは行ってはいけない
  • 黒(もしくは青)のボールペンを用いて書く。書き換えが可能な鉛筆などでは記入してはいけない
  • 修正が必要な場合は、修正箇所に二重線を引き、書き直す。修正前の文字がわからないように塗りつぶしたり、修正液などを使ってはいけない
  • 自分にしかわからない記号や略号はなるべく使用せず、どうしても必要な場合は巻末などに略語表などを記入する
  • 空いたスペースに後から記入できないように、大きな空白があり改ページをする場合は、以下余白と記入するか、大きなバツ印などを記入するとよい
  • 測定結果などの生データは、ノートにのり付けして、張り付けておく。感熱紙は劣化が早いため、コピーを張り付けておいたほうが良い。
  • アイデアも含めて、自分が行ったことと他人が行ったことは区別できるように記載する

 

表紙の記入

表紙には最低限記入しておく内容として以下のようなものがある。

学生実験の場合:学部学科、学籍番号、氏名、科目名、使用開始日

卒業研究の場合:氏名、ノート番号(巻数)、ノート使用開始日

とくに卒業研究の場合の実験ノートは研究室全体で管理するため、ノートに番号をふり、実験ノートの配布と返却を管理しているケースが多いため、研究室の指導教員に一度、確認しておくとよい。

目次

必須ではないが、巻頭に目次を作成しておくと、あとから見直したときに大きな時間の節約になる。

各ページの記入

一例として記入していく内容例を以下に示す。

題目

まず、実験に当たって、行った実験の題目を書いておくとよい。

目的

次に、その実験を行う目的や意義がわかるように記載しておく。例えば再現性を確認する実験の場合は、その内容を目的欄に記入する。

反応式・物質収支の式

特に化学反応を伴う実験では、その反応式や反応物、生成物などを記入しておく。さらに実験に用いる量について物質量だけでなく、モル数なども書いておき、反応式の量的関係から、使用する試薬の量が妥当であるかどうかもわかるように記載しておく。

有機化学反応などでは、反応機構として検討される機構も記載しておくとよい。

注意点・文献

試薬の取り扱いの注意事項や、実験の参考文献などを記入する。特に危険な試薬を用いる場合は事故が起きたときの対処法なども記載されていることが望ましい。

他にも、実験の手順の計画などを記載しておくと、スムーズに実験に取り組める。

実際の実験中の記入

日付・気温・湿度・天候

実験を行った日付を記入する。また、気象条件が実験や測定に影響を及ぼす可能性もあるため、気温や湿度、天候なども記入する。

共同実験者名

共同実験を行う場合は、その相手の氏名を記入しておく。

実験操作

用いた試薬の企業名や純度、秤量した使用量などを記入しておく。

実験操作は行った操作を随時記入していくことが望ましい。反応中の試薬の色の変化なども記入しておく。

考察・まとめ

実験が一通り終了したあとは、その実験を振り返り、考察事項をまとめることが望ましい。

具体的には

  • 実験目的に沿った実験を行うことができたか
  • 実験計画は妥当であったか
  • 実験目的は達成できたか
  • 実験結果からどのようなことがいえるか
  • 実験の精度や誤差は妥当であるか
  • 改良すべき点はあるか
  • 次にどのような実験を行うべきか

などが挙げられる。