有機物の共有結合
有機物を構成する結合は、ほとんどが共有結合である。
共有結合とは、結合する2つの原子が、互いに1つずつ電子を出し、その2つの電子を結合電子雲とする結合である。
簡単にいうと、2つの原子に対して、電子雲がのりとして接着するようなものである。
結合の数によって、単結合、二重結合、三重結合といった分類がある。
単結合
2つの原子がそれぞれ1つの電子を出し、2つの原子が2つの電子 (1つの電子対) を共有する結合が単結合である。
化学結合の基本的な結合であり、二重結合や三重結合と区別して、一重結合という場合もある。
単結合はσ結合である。
二重結合や三重結合とは異なり、結合軸の周りで自由回転が可能である。ただし、2つの原子に結合している原子団によって立体障害を受ける場合はある。
二重結合
2つの原子が4つの電子 (2つの電子対) によって、共有結合を2つ形成している結合を二重結合という。
同じ原子の組み合わせによる結合の場合、二重結合の結合エネルギーは単結合の結合エネルギーよりも大きい。また、二重結合の結合距離は単結合の結合距離よりも短い。
二重結合は一方はσ結合で、もう一方はπ結合である。
二重結合は結合軸の周りの回転が自由ではない。そのため、二重結合によって幾何異性 (シス-トランス異性) が現れる。
三重結合
2つの原子が6つの電子 (3つの電子対) によって、共有結合を3つ形成している結合を三重結合という。
同じ原子の組み合わせによる結合の場合、三重結合の結合エネルギーは二重結合の結合エネルギーよりも大きい。また、三重結合の結合距離は二重結合の結合距離よりも短い。
三重結合は1つのσ結合と2つのπ結合によって構成されている。
単結合、二重結合、三重結合と結合の強さ
同じ原子の組み合わせによる単結合、二重結合、三重結合の場合、単結合の結合が最も弱く、三重結合の結合が最も弱い。
ただし、単純に二重結合は単結合の二倍強いというような関係ではない。
まとめると、結合の強さは次のような関係となる。
三重結合の結合の強さ > 二重結合の結合の強さ > 単結合の結合の強さ
また、ベンゼンなどの共鳴状態のような場合には、単純にこの関係が成立しない。例えば、単結合と二重結合の共鳴では、1.5重結合のようにみなすことができ、結合の強さは単結合と二重結合の中間となる。
単結合、二重結合、三重結合と結合距離
同じ原子の組み合わせによる単結合、二重結合、三重結合の場合、単結合の結合距離が最も長く、三重結合の結合距離が最も短い。
これは結合が強い方が、原子同士の引力が強いため、結合距離が短くなっていると考えることができる。
まとめると、結合距離は下のような関係になっている。
単結合の結合距離 > 二重結合の結合距離 > 三重結合の結合距離
結合の強さと同様に結合距離も共鳴状態では、変化する。例えば、単結合と二重結合の共鳴では、1.5重結合のようにみなすことができ、結合距離も単結合と二重結合の中間となる。