化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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核反応のクーロン障壁とクーロン障壁の大きさ

核反応のクーロン障壁

入射粒子が標的核に入射し、複合核を形成する核反応を考える。

このとき、複合核を形成するために必要なエネルギーの最低値をQ値といい、さらに複合核を形成する段階で必要となる運動エネルギー分も考慮した核反応を起こすために必要な最小のエネルギーをしきい値という。

しかし、入射粒子が電荷をもった荷電粒子である場合には、入射粒子と標的核の原子核の正電荷どうしのクーロン反発があるため、標的核の電場を乗り越えるエネルギーがさらに必要となる。

この荷電粒子間に働くポテンシャル障壁のことをクーロン障壁 (coulomb barrier) という。

Q値が正である発熱反応の場合でも、入射粒子が陽子や重水素などの電荷をもった粒子である場合、クーロン障壁が存在し、核反応が起きるためにはクーロン障壁以上のエネルギーをもつ入射粒子が必要となる。

しかし、実際にはクーロン障壁を量子力学的トンネル効果によって通過することで、クーロン障壁よりも低いエネルギーで反応が起こりうることが知られている。

クーロン障壁の大きさ

ここで、標的核の原子番号をZ_1、入射粒子の原子番号をZ_2、標的核の半径をr_1、入射粒子の半径をr_2、標的核の質量数をA_1、入射粒子の質量数をA_2、電気素量をeとする。

このときクーロン障壁の大きさをVとすると、次のように表される。

\displaystyle V = \frac{Z_1 Z_2 e^2}{r_1 + r_2} = \frac{e^2}{r_0} \frac{Z_1 Z_2}{A_1^{\frac{1}{3}} + A_2^{\frac{1}{3}} }

ここでr_0はパラメーターであり、原子核の半径rと原子核の質量数Aを用いて次のように表される。

 r = r_0 A^{\frac{1}{3}}