核反応のクーロン障壁
入射粒子が標的核に入射し、複合核を形成する核反応を考える。
このとき、複合核を形成するために必要なエネルギーの最低値をQ値といい、さらに複合核を形成する段階で必要となる運動エネルギー分も考慮した核反応を起こすために必要な最小のエネルギーをしきい値という。
しかし、入射粒子が電荷をもった荷電粒子である場合には、入射粒子と標的核の原子核の正電荷どうしのクーロン反発があるため、標的核の電場を乗り越えるエネルギーがさらに必要となる。
この荷電粒子間に働くポテンシャル障壁のことをクーロン障壁 (coulomb barrier) という。
Q値が正である発熱反応の場合でも、入射粒子が陽子や重水素などの電荷をもった粒子である場合、クーロン障壁が存在し、核反応が起きるためにはクーロン障壁以上のエネルギーをもつ入射粒子が必要となる。
しかし、実際にはクーロン障壁を量子力学的トンネル効果によって通過することで、クーロン障壁よりも低いエネルギーで反応が起こりうることが知られている。
クーロン障壁の大きさ
ここで、標的核の原子番号を、入射粒子の原子番号を
、標的核の半径を
、入射粒子の半径を
、標的核の質量数を
、入射粒子の質量数を
、電気素量を
とする。
このときクーロン障壁の大きさをとすると、次のように表される。
ここではパラメーターであり、原子核の半径
と原子核の質量数
を用いて次のように表される。