化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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電気浸透流:キャピラリーに電圧を印加すると生じる流れ

 

電気浸透流とは

電気浸透流 (electro-osmotic flow, EOF) とはキャピラリーの両端に電圧を印加したときの溶媒自体の流れのことである。特にキャピラリー電気泳動において起こる。

キャピラリーとして用いるフューズドシリカキャピラリーにアルカリ性の溶液を満たすと、管の壁面はシラノール基のプロトン (H+) が解離するため、負に帯電する。

負に帯電した壁面に、溶液中の正の電荷をもった遊離イオンが集まり、電気二重層が形成される。

このとき、キャピラリーの両端に電圧を印加すると、正電荷をもつイオンが陰極に向かって移動する。そのとき、溶液もイオンとともに移動する。このため電気浸透流が起こる。

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この電気浸透流は、分離した成分を検出部へ移動させるために利用されることもある。また、この電気浸透流を利用した電気浸透ポンプもある。

電気浸透流速度 (v_{eo}) は、溶液の誘電率を\epsilon、キャピラリー内壁と溶液間の電位差であるゼータ電位を\xi、溶液の粘度を\eta、印加された電場の強さをEとすると、Smoluchowskiの式によって次のように表される。

v_{eo} = \left( \frac{\epsilon \xi_1}{\eta} \right) E

電気浸透流速は印加電圧、泳動溶液の塩濃度、pH、温度によって変化する。