化学徒の備忘録

化学系の用語や論文をわかりやすく紹介していきます

光学顕微鏡・分解能と顕微鏡の種類(一般顕微鏡・実体顕微鏡・蛍光顕微鏡・偏光顕微鏡)

光学顕微鏡とは

人間が見ることのできる光は可視光といわれ、その波長は380 nm~780 nmの範囲である。光源としてこの可視光を用いる顕微鏡を光学顕微鏡という。

また、人が識別可能な二点間の最小距離は75 μm程度といわれる。これは髪の毛の太さ程度であり、これ以上離れていないと二つの物体は接触しているように見える。

この離れているとわかる最小間隔を分解能という。

光学顕微鏡では試料側の対物レンズと目視側の接眼レンズの2個の凸レンズを通して、観察をするため物体は拡大されて見える。ただし、どのように凸レンズを組み合わせても分解能dは次の式で求められる値以下にはできないことが示されている。

 \displaystyle d = \frac{\lambda}{2NA}

ここで\lambdaは試料に照射する可視光の波長であり、NAは対物レンズの明るさまたは解像度を表す開口数という値であり、可視光の場合には最大1.4である。

そのため、光学顕微鏡は波長の短い380 nmの光を用いた場合でも、その分解能は140 nmとなり、それ以下の大きさの試料を判別することはできない。実際は単色光で観察することはないため、光学顕微鏡の分解能は最大で200 nm程度となる。

試料表面の凹凸を観察する場合、顕微鏡の焦点をある高さに合わせたときに、その上下方向の特定範囲にのみ焦点が合う。このように焦点が合って見える上下の距離を焦点深度 (depth of focus) という。この焦点深度は対物レンズの倍率によって変化し、高倍率ほど小さくなる。

光学顕微鏡には生物顕微鏡や金属顕微鏡のような一般顕微鏡、実体顕微鏡、蛍光顕微鏡、偏光顕微鏡などの種類がある。

一般顕微鏡

一般顕微鏡では凸レンズを2枚利用して物体を拡大観察する。

まず試料を対物レンズによって虚像に拡大し、これを接眼レンズによってさらに拡大して観測する。

そのため光学顕微鏡の倍率は次のようになる。

光学顕微鏡の倍率 = 対物レンズの倍率 × 接眼レンズの倍率

一般的に、対物レンズは5~100倍のものが、接眼レンズは5~20倍のものが使われる。

観察する試料の性質により、光を透過するものと、しないものがある。そこで、試料を透過した光を観察する顕微鏡を生物顕微鏡(透過型顕微鏡)、試料から反射される光を観察する顕微鏡を金属顕微鏡(反射型顕微鏡)という。

生物顕微鏡(透過型顕微鏡)

試料の透過光を観察する顕微鏡であり、微生物の観察などに使われることが多い。光は試料を透過した後、対物レンズ、接眼レンズを通り目に入る。

観察は透過光の強弱によって明暗が生じることを利用している。

観察試料は光を透過するものはそのまま観察し、試料が厚く光を通さないものを観察する場合は、薄く切断することで観察する。

金属顕微鏡(反射型顕微鏡)

金属やセラミックスは光を通さないため、光の反射を利用して観察を行う。

光を接眼レンズと対物レンズの間から試料に照射し、その反射光によって試料表面を拡大観察できる。

観察は反射光の強弱によって明暗が生じることを利用している。

像のコントラストは光の反射率の違いによって生じるため、試料の前処理として表面を鏡面研磨したり、研磨面の酸腐食が行われる。

また、金属はセラミックスより光の反射率が大きいため明るく見え、セラミックスは灰色の見える。この違いにより像にコントラストが生じ、金属とセラミックスの混合状態がわかる。

実体顕微鏡

実体顕微鏡は試料を立体的に観察する装置である。

生物顕微鏡と実体顕微鏡では、ともに両目で観察しているが、実際は光路が異なる。生物顕微鏡は試料からの一つの光路を両目で観察しているのに対し、実体顕微鏡では左目の光路と右目の光路が異なり、通常人間の目で景色を観察する場合と同じような状態になっている。そのため、実体顕微鏡では試料を立体的に観察することができる。

観察は反射光を利用する。

また、実体顕微鏡の観察倍率は5~100倍程度と、あまり高くはない。

蛍光顕微鏡

生物試料に紫外線や短波長の可視光を照射すると、組織に含まれる有機化合物の違いによって異なる色の光が発生する。このような、物質に紫外線などを照射したときに発する特定の波長の光を蛍光という。また、蛍光を発しない組織でも、蛍光色素を付けることで光を発するようになる。

この蛍光を観察する装置が蛍光顕微鏡である。

偏光顕微鏡

岩石中の鉱物組織を解析するときに使われる顕微鏡が偏光顕微鏡である。

岩石はそのままでは光を通さないが、10 μm程度に薄くすると光が透過するようになる。この岩石試料を生物顕微鏡で観察した場合、有色鉱物は色づいてい見えるが、これは鉱物に含まれる不純物によるものである。そのため、この色から鉱物を特定することは難しい。

一方、偏光顕微鏡は光源からの光を偏光ニコルとよばれるプリズムによって偏光のみを試料に照射し、この偏光に垂直な振動方向の偏光のみを通す偏光ニコルを通し観察する。こうすることで、試料の光学的特性 (屈折率) に応じて色が変化し、その色より鉱物を推定することができる。

また偏光顕微鏡では試料ステージが回転できるようになっており、ステージを回転させると鉱物の色と明るさが変化し、ある角度で黒くなる。この角度は消光角といわれ鉱物によって異なるために、これより鉱物の特定をより正確に行うことができる。