化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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オストワルトの希釈律:弱電解質の濃度と電離度の法則

オストワルトの希釈律とは

オストワルトの希釈律 (オストヴァルトの希釈律、希釈律、希釈の法則) とは弱電解質の濃度と電離度に関する法則である。

ドイツのF・W・オストワルトによって提唱された。

弱電解質の電離していない電解質分子と電離したイオンの間には電離平衡が成立し、そこには質量作用の法則が成り立つ。そのため、2 個の 1 価イオンを生じる弱電解質の希薄溶液の濃度cと電離度tex:\alpha]、電離定数Kには次の関係が成り立つ。

\displaystyle \frac{ c\alpha ^2 }{1-\alpha} =K(定数)

上の式から、弱電解質では希釈していくと電離度が大きくなることがわかる。これは電解質溶液を希釈していくと、水に溶けた電解質分子がさらに電離して電離度(イオンになる度合い)がさらに大きくなることを意味する。

また、右辺は電離定数であり、溶質濃度に無関係で一定となる。

例えば、酢酸の場合、水に溶かすと、下の式のように酢酸分子の一部はイオンになり電離平衡に達する。
CH3COOH ⇄ H++CH3COO-
各分子、イオンの濃度を[ ]で表すと、次のようにオストワルトの希釈律を導くことができる。

\displaystyle \frac{ [ \rm{H^+} ] [ \rm{CH_3COO^-} ]}{ [ \rm{CH_3COOH} ] } =K = \frac{\alpha ^2 c^2}{c(1- \alpha)} = \frac{\alpha^2 c}{1-\alpha}

ただし、オストワルトの希釈律の式は溶質および解離で生じたイオンの活量係数を考慮していないため、定数Kは熱力学的に正しい平衡定数ではない。そのため、濃度とともに多少変化する。