化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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赤外活性とラマン活性・交互禁制則と判断の基準

赤外分光法とラマン分光法

分子の結合は熱運動をしており、その熱運動は伸び縮みをする伸縮運動や折れ曲がりをする変角運動などがある。この熱運動のエネルギー準位は量子化されている。この分子の振動運動のエネルギー準位間の遷移を測定する方法が振動分光法である。

また分子振動のエネルギーは赤外線のエネルギーと同じ程度のエネルギーである。そのため、分子振動のエネルギーを測定する振動分光法には、赤外分光法 (IR分光法)ラマン分光法の2種類がある。

赤外分光法は試料に赤外線を照射し、分子の原子間振動が反映された赤外領域の吸収スペクトルを測定する分光法である。

ラマン分光法は、振動数ν0のレーザー光を試料に照射したときに生じる振動数ν0±νiの散乱光を分光する測定法である。このνiは分子や結晶の固有振動数となる。

振動数ν0の電磁波を試料に照射したときに、同じ振動数ν0の電磁波が散乱される現象をレイリー散乱といい、振動数ν0±νiの電磁波が散乱される現象をラマン散乱という。またラマン散乱では通常、強度の強いν0iの散乱光であるストークス線を測定する。

赤外活性とラマン活性と交互禁制則

赤外活性 (IR活性)

赤外分光法では、双極子モーメントが変化する分子振動のみが赤外線を吸収する。この赤外分光法で観測できる分子運動を赤外活性という。

ラマン活性

ラマン分光法では分極率が変化する振動のみがラマン散乱を起こす。このラマン分光法で観測できる分子運動をラマン活性という。

交互禁制則

交互禁制則 (相互禁制則) とは、対称心をもつ分子では、同じ振動モードは同時に赤外とラマンの両方に活性であることはないという法則である。対称中心をもつ分子では、対称中心に対して対称な振動はラマン活性、逆対称な振動は赤外活性と赤外活性かラマン活性のどちらかに分類される。

これは、対称中心がある場合には、分極率が変化する振動では双極子モーメントが変化せず、双極子モーメントが変化する振動では分極率が変化しないということである。

赤外活性とラマン活性の区別

また、対称心に対する反転に対して振動の向きが変わらないゲラーデ(gerade)モードはラマン活性である。対称心に対する反転に対して振動の向きが反対になるウンゲラーデ(ungerade)モードは赤外活性である。

他に、群論を利用し、既約表現に属する振動が赤外活性からラマン活性かを判断することができる。この場合、指標表の右端の基底の欄に一次の項でx、y、zなどと書かれている既約表現は赤外活性となる。二次の項でz2、x2-y2、xy、yz、zxなどと書かれている既約表現はラマン活性である。