化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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フォルハルト法:銀滴定法

フォルハルト法とは

銀滴定の一つにフォルハルト (Volhard) 法がある。

フォルハルト法は銀と沈殿を形成する陰イオン(Cl-、Br-、SCN-)を定量する間接的な滴定方法である。

フォルハルト法は酸性溶液(HNO3)中で行われ、チオシアン酸塩の標準液を用いて銀イオンを滴定し、Fe3+ を指示薬に用いて終点を検知する。

銀の定量の他に、銅や塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオンの定量に用いられることもある。

フォルハルト法では、AgNO3を過剰量となるように加えて陰イオンを沈殿させる。その後、チオシアン酸カリウム標準液による逆滴定によって、過剰のAg+を定量する。

まず陰イオンをX-とし、過剰のAg+が存在すると次のような反応が起こることになる。

X+ Ag→ AgX + Ag+

Ag+ SCN- → AgSCN

終点は、硫酸アンモニウム鉄(III) (鉄ミョウバン) を加えることで、Fe3+を加え、過剰となった滴定剤と可溶性の赤色錯体が生成されることによって、検出を行う。

Fe3+ + SCN- → Fe(SCN)2+

陰イオンがI-、Br-、SCN-のような、沈殿AgXがAgSCNより溶解しにくい場合や、溶解度が同程度の場合は滴定を行う前に沈殿を取り除く必要はない。また、I-はFe3+によって酸化されるため、I-がすべて沈殿するまで指示薬は加えずに行う。

陰イオンがCl-のような、沈殿AgXがAgSCNより溶解しやすい場合は、次のような反応が進行し、陰イオンが滴定剤と反応してしまうため、終点が不明瞭となる。

AgCl + SCN→ AgSCN + Cl-

そのため滴定前にろ過などで沈殿物を取り除く。