化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【分析化学】難溶性固体の溶解度積と共通イオン効果・異種イオン効果

難溶性の塩と共通イオン効果

難溶性の塩の場合、溶解平衡は以下の式の左側に非常に大きく偏った溶解平衡と考えることができる。

 \rm MX \rightleftharpoons M^+ + X^-

難溶性の塩の溶解度積は \it S = \rm [ M^+ ] = [ X^- ] とすると、以下のように取り扱うことができる。

 K_\rm{S} = [ M^+ ][ X^- ] = \it S^\rm{2}

溶解度積は、それぞれのイオンの濃度が変化した場合でも一定である。つまり、溶解度積が大きな別の塩MYを添加することで、 \rm M^+の濃度をC増加させた場合、 \rm MXの溶解度は次の式で表される S'に減少することになる。

 K_\rm{S} = [ M^+ ][ X^- ] = ( \it S' \rm+ \it C \rm ) \it S'

このことからわかることは、難溶性の塩から生じるイオンと共通のイオンを加えると、難溶性の塩の溶解度は減少するということである。

このことを共通イオン効果という。

異種イオン効果

難溶性の塩が存在する溶液に、共通イオンがでない塩 \rm NYを添加する場合を考える。

 \rm NYの濃度が非常に小さい場合は、溶解度積にはほとんど影響がない。

一方で、 \rm N^+ \rm Y^-の濃度が大きく、共存するイオンである \rm M^+ \rm X^-との反対符号のイオンとの引力などの静電相互作用などが無視できなくなる場合、活量が減少することによって溶解度が大きくなる。

これは式で表すと下のように表すことができる。

 K'_\rm{S} = \it a \rm ( M^+ ) a (X^- )

このように他のイオン種の共存によって、難溶性の塩の溶解度が大きくなることを異種イオン効果という。