物理センサーと化学センサー
温度変化や圧力変化などの物理的な現象に応答して、電気的な信号を発するデバイスを物理センサーという。人間の五感の中では、視覚、聴覚、触覚の代わりになるセンサーは物理センサーということができる。また、理センサーは化学物質や化学物質の量には依存しない。
特定の化学物質に特異的、選択的に応答し、信号を発するデバイスを化学センサーという。例えば、空気中のプロパンガスの量が一定以上になると信号を発する、ガス漏れセンサーは化学センサーの一種である。人間の五感の中では、味覚と嗅覚の代わりになるセンサーは化学センサーということができる。
化学センサーは、化学構造に特異的に応答する必要があるため、化学センサーは測定対象と接する部分に分子認識機能を有している。
代表的な化学センサーとして、半導体ガスセンサー、イオンセンサー、バイオセンサーがある。
半導体ガスセンサー
半導体ガスセンサーでは、センサーとなる部分に半導体が使われる。
例えば、酸化スズ(SnO2)を使用する半導体センサーの原理は次のようなものである。半導体である酸化スズを200℃程度に加熱しておき、そこに可燃性ガスが接すると、表面に吸着している酸素イオンと反応して吸着酸素量が変化する。このとき表面の電気抵抗が変化するため、その変化を電流計で測定することで、気体に含まれる可燃性ガス濃度を測ることができる。
半導体である酸化スズに白金(Pt)などの貴金属や他の金属酸化物を加えることで、プロパンガスなどの可燃性ガス、水素ガス、アルコール性ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニアガスなど、さまざまなガスに対する選択性をもたせることでができ、ppmの濃度で検出が可能である。
イオンセンサー
イオンセンサーの代表的なものとして、pHセンサーがある。
ある特定のイオンのみを透過する膜を、そのイオン濃度が異なる溶液の間に置くと、両方のイオン濃度を同じにしようとする力が働き、その膜の両側の溶液に電位差が生じる。イオンセンサーは、この電位差を計測することで、イオンを検知する。
pHセンサーは、イオン選択膜としてガラス電極といわれる厚さ100 μm程度のガラス膜が使われており、イオン選択電極の内側と外側の水素イオン濃度の差に比例して生じた電位を計測している。
特定のイオンと対を形成するイオン交換体や難溶性塩などの分子を膜に含ませておくことによって、水素イオン以外にも、様々なイオンのセンサーとなる。
イオンセンサーの膜はガラス膜や難溶性無機塩が使われる固体膜型以外に、液膜型が用いられる場合がある。液膜型は、さらにイオン交換液膜型やニュートラルキャリヤー型などの種類がある。
イオン交換液膜型では、目的とするイオンと特異的に反応するイオン交換体を高分子膜に含浸させて、応答膜として利用する。ニュートラルキャリヤー型は、ニュートラルキャリヤーやイオノフォアといわれるイオン輸送担体を利用している。
例えば、大環状化合物であるクラウンエーテルは、分子の中心に空孔があるため、そこにイオンが取り込まれるが、空孔の大きさによってイオンの選択性をもたせることが可能である。
バイオセンサー
生物のもつ分子認識能を利用し、化学物質を選択的に定量分析しようとするものがバイオセンサーである。
生物中では、酵素と基質、酵素と補酵素、抗原と抗体など互いに親和性の強い物質が存在し、実際に目的物だけを選択して反応を行っている。バイオセンサーはこれを利用しており、例えば、ある酵素は特定の基質だけと反応するため、その反応の生成物を検出することで基質濃度を検出することができる。
一般的なバイオセンサーは、まずセンサーの感応部である分子認識部位に、目的物が結合し、反応する。その反応生成物を電極などを利用して検出し、信号へと変換する。
例えば、グルコースオキシダーゼという酵素はグルコースを選択的に酸化して過酸化水素を発生させるため、この過酸化水素を白金電極で酸化し、流れる電流を検出することで、グルコースの定量分析を行うことができる。