試薬を実験に用いる際や、未知試料の分析を行う際には、正確な濃度の測定が重要となる。この決まった濃度の溶液を調製するために、欠かせないものが測容ガラス器具である。ここでは、精密な測容器であるメスフラスコ、ホールピペット、ビュレットについて解説する
メスシリンダーや駒込ピペットは簡単に使用することができるため、便利であるが、測容器としては精度が低いため、定量分析を行う際の溶液の正確は調製には使用されない。
メスフラスコ(全量フラスコ)
メスフラスコは、一定の濃度の溶液を調製する際や、試料溶液を正確に希釈する際に用いられる。一般的には、10 mL ~100 mL程度のものが使用されることが多いが、サイズの種類は多い。
メスフラスコは決まった温度 (例えば20°C)でメスフラスコの首の部分にある標線に液面を正確に一致させたときの溶液の体積を保証するように製作されている。つまり、正確に溶液の体積を測定することができる器具である。このようなフラスコには受用(うけよう)やTC (TO CONTAIN)という記載がされている。
メスフラスコを使用する際には、希釈に用いる純水などの溶媒で洗浄を行う必要がある。
ホールピペット (全量ピペット)
ホールピペットは、一定の容積の溶液を移しとる際に用いられる。一般的に0.5 mL~ 50 mL程度のものが使用されるが、ホールピペットも多くのサイズのものが販売されている。
ホールピペットがメスフラスコと異なる点として、ホールピペットは移す体積を保証している。これを示すために、出用(だしよう)、TD (TO DELIVER)という記載がされている。
多くの外国の製品の場合は、ホールピペットの先端に溶液が少し残ることを前提に体積が保証されている。一方、日本の多くの製品は、すべての溶液を出し切ることが前提となっている。先端に溶液が残っている場合は、溶液を出し入れしない側である持ち手側の口を指などでふさぎ、膨らんでいる部分を握ると、溶液を出すことができる。
ホールピペットも、使用前に移す溶液を用いて洗浄 (共洗い)を行う必要がある。
ビュレット
ビュレットは任意の体積の溶液を正確に移しとるために用いられる。
特に容量分析や滴定に用いられ、滴定の終点に達するまでに必要であった標準液の体積を測定することができる。
ビュレットも使用前に標準液で洗浄(共洗い)を行う必要がある。