27Al MAS NMR
アルミニウムは地中殻中に最も多く存在する金属であり、そのため多くの化合物に含まれています。
このアルミニウムの局所構造の解析において強力な方法の一つが27Al NMRスペクトルの測定です。特に固体では、NMRはX線回折や電子線回折、赤外分光法と相補的であり、NMR Crystallographyという考えも提唱されています。
アルミニウム(Al)は磁気的に活性な元素で、27Alという同位体があります。この核種は天然存在比100%で総合相対感度おも大きいため、容易にNMRを測定することができます。しかし核スピンはl =5/2 と1/2よりも大きく四重極モーメントQ = 0.14 × 10-28 m2であるため、この原子核は外部磁場B0のみならず、周囲の環境から生じる電場勾配 (electric field gradient, EFG)とも相互作用します。そのため、2次の四極子相互作用の影響を受ける中心遷移(CT)と1次の四極子相互作用の影響を受けるサテライト遷移(ST)によるNMR共鳴スペクトルは通常幅広くなることや、重なり合うことがあります。
この影響が現れた例を下のNMRスペクトルで示します。これはアルミノケイ酸塩の27Alと29Si(l = 1/2 D = 2.09 13C比)ですが、29Siと比較すると27AlのNMRスペクトルは幅広いブロードなスペクトルになっていることがわかります。一方でS/N比(シグナル/ノイズ比)を見ると、27Alのスペクトルはノイズが少なく、高感度であることがわかります。
27Alのケミカルシフトの範囲は液体、固体どちらも比較的広く、0 ppmの基準となるAl(H2O)63+に対して、約-100 ppmから300 ppmまでの400 ppmの範囲をとります。具体的に27Alのケミカルシフトを図2に示します。アルミニウムは3、4、5、6配位を取ることができます。一般的な傾向として、6配位のアルミニウムより4配位のアルミニウムの方が、高磁場側にシフトし、5配位のアルミニウムは6配位と4配位のピークの中間程度に表れます。そして3配位のアルミニウムのピークは最も低磁場側に表れます。
参考文献
(1) Haouas, M., Taulelle, F., & Martineau, C. (2016). Recent advances in application of 27Al NMR spectroscopy to materials science. Progress in nuclear magnetic resonance spectroscopy, 94, 11-36.