化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【量子化学基礎】光電効果と仕事関数・光量子説

光電効果

光(電磁波)が物質に当たったとき、物質から電子が飛び出る現象を光電効果という。またこのとき飛び出した電子は光電子という。

光電効果を起こす限界となる波長を限界波長という。限界波長\lambda_tに対応する振動数 \nu _t =\frac{c}{ \lambda _t} 限界振動数という。この限界波長や限界振動数は物質の種類に依存する。限界波長はアルカリ金属やアルカリ土類金属とその合金では可視光線の領域にあるが、他の多くの物質では紫外線の領域となる。

限界振動数\nu_tは光電管につないだ電気回路に流れる電流(光電流)iを調べると、求めることができる。光電子を出す電極(陰極)と光電子を受け取る電極(陽極)の間に負の電圧をかけ、その電圧Vを徐々に大きくしていくと、ある大きさの電圧V_0で光電圧の流れが完全に阻止され、光電流が0になる。このとき、電子1個がもつ電気量の大きさe (電気素量もしくは素電荷 e= 1.602×10-19 C) と阻止電圧V_0との積e V_0は電極から飛び出た直後の光電子の運動エネルギー(電子の質量をm、光電子の速度をvとすると、 \frac{1}{2}mv^2 )の最大値[tex:E_{max}に等しくなる。

これを式にすると以下のようになる。

 E_{max} = e V_0

様々な振動数の光を用いて光電子がもつ運動エネルギーの最大値E_{max}の大きさを調べると、次の関係が成り立つことがわかっている。

E_{max}= h \nu -W

上記の関係式はアインシュタインが発表した光電効果の公式である。式の\nuの係数hはプランク定数であり、W仕事関数といわれる各物質に固有の量である。

物質中に拘束されている電子を物質の外に取り出すには、仕事関数Wに等しい大きさのエネルギー(仕事)を加える必要がある。まだ、物質中の電子には光のエネルギー量子h \nu (光量子もしくは光子)が加えられ、Wを差し引いた残りが飛び出した光電子の運動エネルギーになる。

光子1個と電子1個の間のエネルギーのやり取りでは、全体のエネルギーが一定であるというエネルギー保存則が成り立っていることを表している。

物質中の電子のエネルギーと仕事関数

物質中に電子がある場合は、電子を取り出すためにW以上の仕事が必要であるため、電子は-W以下のエネルギー状態にある。ここにWよりも大きなエネルギーをもつ光子のエネルギーh \nuが加わる。そのため、物資中の電子のうちエネルギー状態が最も高い部分である-Wのところから飛び出る電子が、運動エネルギーの最大値E_{max} = h \nu -Wを持つ。アインシュタインの提唱したこの考え方は光量子説と呼ばれている。

光電効果が起こるギリギリの場合には、E_{max} = 0となるため、限界振動数\nu_1は次の式で表される。

 \nu_1 = \frac{W}{h}

一般的に仕事関数Wは遷移金属よりアルカリ金属の方小さく、アルカリ金属の方がが限界振動数も小さく、限界波長は長い。