SciSpaceとは?
学生や研究者にとって、論文を読むという作業は過去の知見を得るうえで非常に重要な活動です。一方で、論文を読みなれていない学生にとっては、論文を読んで理解するということは少しハードルがあると思います。
こういった論文を読みなれていない方をAIで支援するサイト(サービス)がSciSpaceです。
上記がTOPページのスクリーンショットですが、以下の文章が書いてあります。
Your AI Copilot to decode any research paper
つまり、このサービスは研究論文の読解をサポートするAI副操縦士(Copilot)です。
当然論文を読みなれている研究者にとっては、副操縦士など必要ないでしょうが、経験の少ない人にとっては、非常に強力なツールとなるケースがあります。
論文を読んだ経験の少ない人や、論文を読むことに苦戦している学生であれば、ぜひ一度触ってもらいたいサービスです。
おすすめの機能
SciSpaceには、論文検索エンジン(データベース)と類似した論文を探す機能が下記のスクリーンショットのようにあります。ただし、この機能については、分野などによって違いがあるかもしれませんが、筆者の確認時点(2023年2月)に使った感想では、Google scholarやSciFinderといった検索データベースやElicitなどの他のAIサービスやResearchRabittの方が強力だと感じています。
AI対話型論文読解サービス
ChatGPTで有名なようなAIに対してチャットのような機能で質問をすることができるサービスがありますが、SciSpaceはある論文に対して、チャットベース(対話ベース)で質問をしていき、論文の内容の読解を補助する機能があります。
この機能は論文を読んだ経験の浅い人にとっては、非常に強力にサポートしてくれる機能ですので、活用してみることをオススメします。
この機能は論文のPDFファイルをアップロードすることで、どんな論文でも活用することができます。現在はほとんどの論文でPDFファイルがダウンロードできますし、ブラウザで閲覧できる論文であれば、ブラウザの印刷機能などからPDFファイルを作成することができるため、PDFファイルの準備は非常に簡単だと思います。
下記では、この機能の使い方に焦点を当てて説明します。
SCISPACEの論文読解の使い方
SCISPACEを使うためにはアカウントの作成が必要です。(登録は簡単ですが、記事の後半で方法を解説しています。)
論文の読解補助機能を使う場合は、SciSpaceのUpload a PDFをクリックしてください。
開始すると下記のような画面になります。
そのままでもすぐに使うことができますが、左のCOLLECTIONSからファイルをアップロードするフォルダを作成して分けておくと便利です、。
下記のようにフォルダの名前を入力して、下のCreateをクリックするとフォルダが作成できます。
次に右側のUpload PDFsをクリックしてPDFファイルをアップロードします。
browseをクリックしてPC上の論文を探すか、ここにPDFファイルをドラッグアンドドロップするとアップロードできます。
Upload 1 fileをクリックするとアップロード作業は完了です。
実際にアップロードしたファイルをクリックして補助機能を使用してみます。
見ての通りですが、左側にアップロードしたファイル、右側にチャットできるスペースがあります。
チャットの使い方
右側のWrite your questionに質問を書くとChatGPTと似た感じで、この論文から情報を読みとり、質問の回答をAIが返してくれます。
またSuggestions(提案)されたデフォルトの質問をクリックしたり、Brainstorm Questionsから質問を考えてもらうことで、質問を考えなくてもある程度論文の読解を進めることが可能です。
このチャットは英語以外にも日本語なども選択できます。
日本語を選択したい場合は、チャットの右上の言語でデフォルトではおそらくEnglishになっている部分からJapaneseを選択してください。
ただし、下のように日本語で回答を返してくれる場合と、日本語で質問すると、まだ回答が得られないケースがあります。
現時点では、機能を充分に使う場合、Google翻訳やDeepL翻訳などを活用して英語で利用することをオススメします。
回答については、下記の一番左の部分をクリックするとクリップボードにコピーできるので、翻訳サイトへのコピーアンドペースは非常に簡単です。
回答はSave as noteでnote(メモ)に保存しておくことができます。
また、Ask a follow up questionで回答に対して、さらに質問を加えることもできます。
論文の要点のまとめなどに利用することはもちろんですが、他にも論文の途中で出てきた訳語(略語、場合によっては論文内で定義されたオリジナルの略語もある)の意味がわからない時なども、質問をすると下記のように回答を得ることができます。
論文中をブラウザなどの検索機能で、その単語が出てきた箇所を検索して定義を探す場合と比べると効率が上がるケースも多いと思います。
AI補助解説機能
左の論文の本文をドラッグアンドドロップでハイライト(今回は紫色)にして選択し、Explain textを選択すると、その部分の文章をAIが補助して解説してくれます。
実際の回答を以下の貼り付けます。
"The highlighted text discusses the electrochemical properties of calcium-tin (Ca-Sn) alloy anodes for Ca-ion chemistries. The SEM images in Fig. 4a-d indicate that the as-prepared pristine Ca x Sn aggregates have a typical particle size in the range 1-30 μm. After discharge and charge in the initial cycles, the alloy particles exhibited porous microstructure, as shown in the images for the samples from the 20th cycle. The image for the sample from the 3000th cycle shows that uniform rod-shaped crystalline solids (100-300 nm in width) appeared upon prolonged cycling. In addition, increased boron (B) containing species were detected with energy-dispersive X-ray spectroscopy (EDX), implying the decomposition of the electrolyte over 3000 cycles (Fig. 4d). The compositional changes after cycling were further tracked by ex-situ XRD (Fig. 4e), showing the presence of Ca x Sn was not detectable in the 20th cycle and the intensity of the Bragg peaks at 14.9° and 17.2° assigned for CaSn 3 varied at the discharge and charge states.
The Bragg peaks are the points of maximum intensity in the diffraction pattern of a crystalline material. The Bragg equation is used to calculate the angles for which the peak intensity occurs. The Bragg equation is given by nλ = 2d sinθ, where n is the order of the peak, λ is the wavelength of the X-ray, d is the interplanar spacing of the crystal lattice, and θ is the angle of incidence. The Bragg peaks at 14.9° and 17.2° assigned for CaSn 3 indicate that the material is composed of CaSn 3, a compound of calcium and tin.
The remaining Sn should originate from the decalciation of the excessive amount of the Ca x Sn anode material used for the cell construction. Decalciation is the process of removing calcium from a compound. XRD diffraction patterns for the samples from the 3000th cycle imply that the redox reaction at the anode side mainly depended on the reversible alloying/dealloying of the CaSn 3 phase. Redox reactions are chemical reactions in which electrons are transferred from one species to another. Alloying is the process of combining two or more metals to form an alloy. Dealloying is the process of separating the metals in an alloy.
Based on these results, it is proposed that the decalciation of the bulk Ca x Sn active material is a kinetically favorable process while the reverse process is largely restrictive; and the in-situ formed Sn preferably form CaSn 3 in the subsequent recalciation process, which is most likely due to its the low volume change (7.3% 29 ) during dealloying and alloying. Furthermore, dealloying Ca x Sn and CaSn 3 might simultaneously occur during discharge until the active Ca x Sn in the anode completely transformed to Sn. These results indicate that the Ca x Sn alloy can undergo highly reversible redox reactions and may possess unique structural flexibility enabling circumvention of the structural stress during the electrochemical processes, which render them as promising candidates for use as anodes in Ca-ion batteries."
選択した部分にどのような内容が書いてあるかの説明はもちろんですが、今回のケースですと、上記の下線を引いた部分には、選択した文章には詳しい説明がないBraggピークの話も追加されています。Braggピークなどは、固体化学などでX線回折などを扱う人にとっては教科書レベルの内容なので、当然通常の論文では細かい解説はありませんが、AIが解説の補助をしています。(ただし内容は検証や確認が必要な場合もあると思います)
他にも論文中の単語や用語などをAIが言い換えてくれるケースもあるため、一般的にこの機能を使うことで、論文を読みなれていない人は理解が捗ると思います。
SCISPACEの始め方
SCISPACEを始める際は、左上のSign Upからアカウントを作成します。2回目以降はLog inからログインすれば利用できます。
アカウントは、Googleアカウントを利用する方法と、メールアドレスを登録する方法があります。
今回はメールアドレスで登録する例で紹介します。
下記のように
Name::名前 (現時点では絶対に本名である必要はありません)
E-mail:メールアドレス(フリーメールで問題ありません)
Password:パスワードを考えて入力してください
最後に一番下のCreate accountをクリックすると完了です。