化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【Youtube100万回再生動画】博士課程に進学してはいけない理由

YouTube scientist であるYoutuberのSimon Clarkが博士課程に進学(D進)してはいけない理由を解説している動画です。
動画投稿は2018年4月で、今の世界状況はさらに博士課程への進学のリスクが高まっている懸念もあるかもしれません。

博士課程を意識している人は、海外の博士号取得者の状況についても、ぜひアンテナを張り巡らしておきたいものです。日本はともかく、外資系企業や海外の企業なら博士号取得者の採用が多いなどの噂だけを鵜呑みにすると痛い目を見るかもしれません。

youtu.be

内容はぜひYoutubeを視聴してほしいですが、内容は以下のようなものです。

博士号取得者の給料が高いという誤解

博士号取得者の平均キャリア収入は学部卒と比較するとキャリア全体で26%多いのは事実です。
しかし、実は修士号取得者も学部卒と比較すると23%多く稼いでいます。つまり、博士号取得者と修士号取得者のキャリア収入の差はほとんどありません。

アカデミア以外の進路の場合の周りからの誤解

企業などに就職しようとする場合、博士号取得者は専門化しすぎているために扱いにくいという誤解を受け、多くの仕事では博士号を持っていることが不利に働くことを語っています。また、なぜ教授になろうとしないのか?といった質問も受けることになります。

ワークライフバランス・健康の欠如

この方は、博士課程でメンタルに由来する呼吸障害を患ったことを告白しています。
そのように、健康を犠牲にして博士号を取得しても、その後のキャリアは何年も低賃金、長時間労働、引っ越しの連続になると語っています。

そもそも博士課程とは何か?

たしかに、博士号の取得の課程には多くのマイナス面があります。なかには教授となった人でも、博士課程の時には、早く博士号を取得して、早く博士課程が終われと願っていたそうです。

博士課程とは、そもそも何でしょうか?

博士課程とは、人間の知識の限界をほんの少し押し広げ、誰も学んだことのないことを学ぶことができる貴重な機会です。

そして、(海外の)博士課程は、社会から最低限の資金が支援され、生活するため最低限な資金があり、新しいことを学ぶことができるが、それ以上ではなく、その3~4年間の支援と引き換えに博士課程進学者が唯一やらないといけないことは、現在の人類の知識の限界を超え、その成果を社会に発表するというものです。

つまり、博士課程は、社会と博士課程に進む学生との契約のようなものであり、社会が学生に投資をするかわりに、あなたは社会の何かを良くするという形で社会にリターンを還元するものと語っています。*1

博士課程へ進学する人に必要なものは

彼は、博士課程への進学を受け入れる側の人が、学生に何を求めているかも聞いています。

博士課程へ進学する人が、科学技術、専門分野、研究の知見や能力を持っていることは当たり前ですが、博士課程に進学する人が必要なものは、以下の内容ではないかと語っています。

  • あなた自身が研究テーマに情熱を持っていること
  • あなたが研究をするつもりで、研究に取り掛かる準備ができていること
  • 純粋に人類の知識のフロンティアを押し広げたいと思っていること
  • その成果を社会に共有したいと思っていること
博士課程に進学する人に必要なもののチェックリスト

1. 学術的なテーマについて、あなたが情熱を持っていること

2. 博士課程に進学することが、あなたのベストな時間の使い方だと考えていること

この記事を読んでいる人が博士課程への進学を意識している場合は、ぜひ上のような内容も自問自答してみてください。

*1:日本においては、博士課程の受益者(メリットやリターンを受け取る人)は博士課程に進学した学生だというのが行政機関などの一般的な見解であるため、日本の学生とは状況が少しズレていることは踏まえておいてください。そして受益者負担の考えから、日本の博士課程では、学生が学費などを支払うかわりに、学生が博士課程の教育(リターン)を受けとれるという図式になっています。