公開されてから、その機能が話題になっているChatGPTですが、その機能のスゴさを知っている人は、卒業論文(卒論)や修士論文(修論)でも使おう、もしくはすでに使っている人がいるのでは、ないでしょうか?
特に理系の卒論、修論の執筆の際にchatGPTを使う際の注意点や使い方の具体例について、解説します。
- ChatGPTの機能は?
- ChatGPTを卒論・修論で使っていいのか?
- ChatGPTを使う時のポイント
- chatGPTの使い方の具体例
- 謝辞の文章を考える際の補助ツールにする
- Tips
- 文献を引用した回答をAIに考えてもらうには?
- 参考リンク
ChatGPTの機能は?
ChatGPTは、こちらが投げかけた質問の回答っぽいものをAIが作成するツールと理解するといいと思います。
"っぽいもの"という点は重要で、この"っぽいもの"のクオリティが圧倒的に高いため、世界中で話題になっているワケです。
その一方で、正確性も求められる卒論や修論では、使い方に注意が必要になります。
ChatGPTを卒論・修論で使っていいのか?
このChatGPTを卒論や修論で使っていいのかは、おそらく世界中で議論になっているテーマです。そのため、厳密な回答は2023年1月現在では出ていません。
そのため、現時点では使っていいかどうかはグレーといえます。
ただし将来的には、一度は禁止されたとしても、最終的には「卒論や修論を書く際の補助ツールとして使う分には問題がない」となるのではないかと予想します。
むしろ、日本の研究者や社員の効率が悪い、生産性が低いと、官公庁などからも意見が出ている現在の環境では、こういった強力なツールを即座に使いこなせないほうが問題だと思います。
なぜ補助ツールとして使うのは問題ないと考えたか
補助ツールとして使う分には問題ないと考えている根拠ですが、卒論どころか、現在の学術論文や博士論文でも、Wordの校正機能や、DeepLなどの翻訳ツールの使用、Grammarly などの英語の文法などのチェックツール、EndNoteなどの文献管理や引用文献のリストを自動作成ツールの使用は特に問題になっておらず、むしろこういったツールを使って論文を書いたほうが効率が良く、推奨されているケースも多いです。
将来的には、AIによる文章作成の補助も、これと同じような扱いになると考えています。
また、卒論などでは、先輩や指導教員が学生の書いた文章を読んでチェックをし、手を加えたりした文章を、そのまま使用するといった例はおそらくあったと思いますが、これが大きく問題になったという話はほとんどないと思います。
アウトになる可能性がある使い方
逆に、ChatGPTで出力された文章をそのまま卒論や修論に使うこと(コピペすること)はアウトになる可能性があり、今の時点で禁止されていなくても、コピペすることはリスクがあると考えています。
そもそも卒論などは、学生が本人が自分の文章で書くということが前提であり、卒論代行などは使用してはならず、卒論代行は卒業の取り消しなどの処分が下されます。
また、研究者の倫理として、他人の論文の文章をコピペするといった剽窃や盗用、盗作などを論文で行うことは禁止事項となっています。
そのため、例えば審査が卒論より厳格な博士論文などでは、盗用や剽窃のチェックツールを使用して検査し、盗用や剽窃がなどの検査結果が30%以下でないといけないといった基準が設けられていることが一般的です。もちろん、30%は盗用や剽窃を行っていいというわけではなく、機械的にチェックしているため、論文などで頻繁に使われる文章や表現などが盗用や剽窃のように判別されるケースなどを考慮した基準となっています。
将来的に、ChatGPTのようなAIが作成した文章を判別するツールは開発され、大学などで共有されるようにもなるのではないかと思います。そうなると、一部の大学などでは、このChatGPT判別ツールを使って、使用率の検査結果がAIが作成したとされる文章が30%以下の卒業論文でないと、受理しないといったことが起こる可能性は予測できます。
そして、そのようになったときに過去の卒論もチェックするといったことが絶対に起こらないとはいいきれません。
そのため、今の時点から、ChatGPTの完全なコピペなどは行わないようにしておくべきだと思います。効率をよくするためにChatGPTを使ったのに、卒業の単位や学士が取り消しになっては元も子もありません。
ChatGPTを使う時のポイント
・一般的な内容に使う
ChatGPTは一般的な文章作成や、文章の修正、要約などの能力は非常に高度です。一般的な部分については、大学生と同じレベルだと考えて使うことができます。
・高度な専門性や高い洞察力、独創性が必要なものには使わない
・正確な情報を調べるためには使わない
一方で、現時点では、高度な専門性や高い洞察力が必要な点には使えません。
例えばChatGPTに"過去に出版されている文献を尋ねても、いかにも本当っぽい架空の論文を返答することがあるということは有名な話です。こういった点には注意が必要です。
・大学の指導教員や、学部、学科などが使用を禁止するなどのルールを設定した場合は、おとなしく従う
卒論や修論には学生の教育という目的があります。パソコンが普及しても、手書きの実験レポートが強制されている講義がありますが、教育のためなどがその理由となっています。
以上の点を踏まえて活用しましょう。
そして、いずれにしても出力された文章を、さらに卒論の著者(学生本人)が確認し、必要に応じて、さらに手を加えて修正してから、卒論の文章として使用しましょう。
・特に指導教員などがChatGPTを使ったことを認識している場合、方法、謝辞などにChatGPTを使用したことを明記するか確認する。
2023年1月24日の発表にあるようにNatureのガイドラインに、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)を使用した場合には、方法や謝辞などの欄に使用したことを明記するという内容が付け加えられました。今後、多くの学術誌が同様のガイドラインなどを作成する可能性があります。卒論なども、同様にそれに従う必要があるか確認をしておいたほうが無難でしょう。
chatGPTの使い方の具体例
ここからは、理系の卒論を想定して、使い方の具体例を挙げていきます。
構成を考えるときの補助ツールとする
イントロダクションや緒言の構成を考える際の補助ツールとして使うことができます。
卒業論文などは一般的な型があるため、こういった点はChatGPTが有用でな部分です。
他にもアイデアを考えてもらうことにも使えます。
次のように、研究背景の具体例をさらに挙げさせることもできます。
基本的には、卒業研究の過程で知っている内容になると思いますが、もしも取り上げ忘れている内容があれば、取り入れることで、さまざまな観点や視点を踏まえた文章にすることができます。
ただし、具体的になればなるほど、正しいのかどうかの確認を確実に行う必要があります。現在の時点の機能では、間違った内容や、最新の論文では否定されたり、修正されている内容が反映されていないといったことは想定されます。
図表や軸のタイトルなどを考える際の補助ツールとする
例えば図のタイトルを考えてもらう際に使用することが可能です。図のタイトルなどは比較的一般的な内容だからです。
図の軸なども尋ねることが可能です。ただし、一般的な測定方法などに限定される可能性が高いです。もちろん実験者はこういった点は尋ねなくてもわかっていることだとは思いますが、悩んだ場合は尋ねてみるといいでしょう。
考察の不足点を考えるための補助ツールとする
実験結果から自分の都合のいい結論だけを考えると、考察しないといけない点を見逃してしまう可能性があります。
一般的な反対意見などを尋ねてみることで、さらにその指摘点でも問題ないことを考察に書き加えることができます。
文章の校正や修正の補助ツールに使う
下の例は、かなり極端ですが、文章を一般的な学術論文のようになおすといった使い方はもちろんできます。
他にも、書きなおし方や、表現を嚙み砕く方法などがあるため、ここは工夫することもできます。
謝辞の文章を考える際の補助ツールにする
謝辞なども一般的な型がある文章ですので、ChatGPTがある程度は書くことができます。
Tips
まれに、明らかに文章の途中で出力が止まるときがありますが、その場合は続きを書いてくださいなどと書けば、続きを出力してくれます。
文献を引用した回答をAIに考えてもらうには?
ChatGPTは、架空の文献を回答したり、引用文献を教えてくれなかったりするため、卒論や修論のイントロダクションを書くには不便です。しかし、すでに世の中にはAIが実在の文献(論文)を検索し、質問に対する回答を返すサイト(サービス)が存在しています。
例えば以下のElicitなどがその例です。日本語そのままだとほとんど使えませんが、Google翻訳やDeepL翻訳などを使って英語に機械翻訳すれば、英語が苦手でも充分に利用可能です。
参考リンク
https://openai.com/blog/chatgpt/
Natureの記事
Nature 613, 612 (2023)