化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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学振の評価書(推薦書)を「自分で書いて」と言われた場合の方法

博士課程に進学を予定している学生であれば、日本学術振興会 特別研究員(DC1・DC2)(通称 学振、がくしん)の申請書を申請すると思います。
むしろ博士課程で申請する資格があれば、学振を出さないというのは、資金を得る貴重な機会を逃すという点でも、申請書を書く能力を鍛えるという点でも、ありえないと考えるべきだと思います。

学振の申請書はもちろんですが、学振には研究指導者(指導教員)が執筆する評価書があります。この評価書の執筆に関しては、おおむね以下の4パターンがあると考えております。

  1. 指導教員が全て執筆し、提出してくれる
  2. 指導教員から申請者(学生)へ「原稿を書いて」と言われ、その原稿を指導教員が訂正して提出してくれる
  3. 指導教員から申請者(学生)へ「原稿を全て書いて」と言われ、その原稿がそのまま提出される
  4. 指導教員が忙しいなどの理由で評価書を書いてくれず、学振の申請ができない

各パターンの講評

1. 指導教員が全て執筆し、提出してくれる

まず、1の指導教員が全部執筆してくれるパターンですが、これは一切問題がないと言えるでしょう。ただし、指導教員の負担が多い場合、相談して2のようにアイデアなどをサポートすることで、評価書の内容が、さらに質が高くなるというチャンスはあるかもしれません。

2.指導教員から申請者(学生)へ「原稿を書いて」と言われ、その原稿を指導教員が訂正して提出してくれる

このパターンは少なくはないと思います。指導教員としても、学振が取れるかどうかが学生にとって大きいことは理解している方が多く、学生の学振の申請を積極的に支援する指導教員も多いです。ただ、それでもこのパターンを取るケースは少なくありません。
この記事の後半では、この2のパターンについて具体的に対処法を提案いたします。

3.指導教員から申請者(学生)へ「原稿を全て書いて」と言われ、その原稿がそのまま提出される

このパターンの場合、可能であれば、原稿を執筆したうえで、一度、指導教員に見てもらうことが良い選択肢になると思います。特に多くの学生は他人の推薦書や評価書を書いた経験が少ないことが多く、その状態で自分ひとりで、指導教員の視点からすべて執筆すると、どうしても違和感のある部分もでてくると思います。

また、直接の指導教員に見てもらえない場合は、他の助教やポスドクであったり、他にも博士課程や就職した先輩などに一度見てもらいコメントをもらうと、質を高くすることができると考えております。

4.指導教員が忙しいなどの理由で評価書を書いてくれず、学振の申請ができない

このパターンが申請ができないという点で最悪のパターンです。ただ、自分が、その研究室やその指導教員を選んだのであれば、ある程度は自分の選択の責任だという点も踏まえておいてもいいかもしれません。

そこで、特に早めに執筆をお願いしたにも関わらず「忙しいので」などの漠然とした理由で、具体的にいつ執筆してもらえるか目途が立っていないような場合、ただ待つのではなく、自分で原稿を準備する3のパターンを提案し、まずは学振を申請できる状態にもっていくという努力は必要かもしれません。

「原稿を書いて」と言われた場合どう考えるか?

当然ですが、指導教員と内容について最初に相談ができるのであれば、相談や打ち合わせをしておいた方が確実です。ただし、タイミングや状況によっては詳しい相談をできないケースもあるかもしれません。

ここで、少し考えてみましょう。おそらくほとんどの指導教員は、過去に指導した学生や、研究室でポスドクなどとして深く関わった研究者などの推薦書や評価書や、自分自身の評価書などを書いた経験があるはずです。本当に、過去の推薦書や評価書のコピペや継ぎ接ぎであれば、誰にでも当てはまるような、当たり障りのない評価書であれば、学生にお願いしなくても作成できるのではないでしょうか?
また、ほとんどないと思いますが、研究室のあなたの先輩の博士課程の学生やポスドクに評価書の原稿を書いてと依頼することも選択肢とはあるかもしれません。

では、わざわざあなた自身に「原稿を書いて」と依頼する場合はどういった観点が求められているのでしょうか?

可能であれば、直接、指導教員に聞いてみるといいと思いますが、そういったことができないケースの場合は、以下の観点を踏まえるといいのではないかと思います。

・本人の申請書の内容と矛盾しない点を取り上げる

・具体的なエピソード(根拠)を取り入れる

本人の申請書の内容と矛盾しない点を取り上げる

学振の申請書には、【研究遂行力の自己分析】という項目で、
(1) 研究に関する自身の強み
(2) 今後研究者として更なる発展のために必要と考えている要素
を記入する欄があります。

評価書にも同様に、

(1)研究者としての強み
(2)今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素

があります。

これらは、言い換えると他の申請者より優れている部分と、博士課程やその後を通して能力を鍛える必要がある部分を記入することになります。
例えば、学生の申請書には、問題解決力が非常に高いと書いてあり、一方で指導教員の評価書で問題解決力を今後鍛える必要があると書いてある場合、両方に目を通した審査員の評価が高くなることは、非常に考えにくいのではないでしょうか?

申請書を書いている学生が、矛盾しない内容を取り上げることで、申請書と評価書のギャップを無くすことができるメリットがあります。

具体的なエピソード(根拠)を取り入れる

博士課程に進学するような学生の場合、非常に熱心に研究に取り組んでいると思います。当然、その姿を指導教員も目にしてはいると思います。しかしながら、忙しい指導教員が常に学生を見ているというケースは、ほとんどありません。
同じ時間帯に研究室にはいても、実際には学生のいる学生部屋と指導教員で部屋が違ったり、学生は実験室などにいる期間が多く、学生の具体的な研究活動に関するエピソードなどを、指導教員があまり熟知できていないケースもあります。

当然、完全に嘘のエピソード(根拠)を考えることは、手間もリスクもありますが、例えば学生が問題解決力を発揮してエピソード(根拠)を、実際はまだ指導教員知らない状態だったとしても、指導教員が知っているように原稿を執筆して問題はないでしょう。

原稿を書くことで、場合によっては申請者(学生)本人しか知らないエピソードを指導教員に伝え、評価書に取り入れてもらうチャンスとなります。

特に研究室に配属された後のエピソードに焦点を当てて、具体的なエピソードを取り入れてはいかがでしょうか?

また、この評価書のエピソードは逆に、学振の申請書とは別の内容を記入することで、評価の根拠を多くアピールすることにも繋がります。