化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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【物理化学】ギブズの相律と自由度・ギブズの相律の導出

自由度

物理化学や熱力学において、系の状態は温度T、圧力p、モル分率などの組成などの示強性変数によって決定される。こういった変数の中で、系の状態を決定するために自由に(独立に)定めることのできる示強性変数の数を自由度という。

ギブズの相律の導出

ここで \rm C個の成分を含む系において、\rm P個の相が共存しており、平衡状態にある場合を考える。

このとき、各相( \rm 1, 2, 3, ・・・,P)は \rm C個の成分を含んでいる。そのため、各相の組成(例えばモル分率x_iなど)はx_1 + x_2 + x_3 + ・・・ + x_C = 1である。よって( \rm C-1)個のモル分率を指定する必要があるということになる。

つまり、各相の状態は、これに温度Tと圧力pの合計2を加えた、( \rm C-1+2 = C+1)個の示強性変数によって決定することができる。ここで相の数が \rm P個あるため、全体としては \rm P(C+1)個の示強性変数が存在する。

ここで平衡状態であることを考慮する。

まず、熱的平衡によって、各相の温度が互いに等しくなるため、以下の条件が成り立つ。

 T^1 = T^2 = T^3 =・・・=T^\rm{P}

力学的平衡によって、各相の圧力が互いに等しくなるため、以下の条件が成り立つ。

 p^1 = p^2 = p^3 = ・・・=p^\rm{P}

物質的平衡によって、各成分の化学ポテンシャルが各相間で互いに等しくなるため、以下の条件が成り立つ。

 \mu _i ^1 = \mu _i ^2 = \mu _i ^3 = ・・・= \mu _i ^\rm{P}

これらの結果、各変数ついて、以下の通り、 \rm (C+2)(P-1)個の等式が成り立つ。

 \rm (P-1)+(P-1)+C(P-1) = (C+2)(P-1)

よって、自由に決定することのできる示強性変数の数である自由度 \rm Fは以下のように導くことができる。

 \rm F=P(C+1)-(C+2)(P-1)=C-P+2

これは、ギブズの相律といわれる。

ただし、これは、化学反応が系内で起こらない場合である。化学において、系内で化学反応が起こる場合、各成分間に成り立つ化学平衡式によって、独立成分の数が決定される。