化学徒の備忘録(かがろく)|化学系ブログ

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胃のレントゲン写真の撮影でバリウムを飲む理由

病院の検査ではレントゲン写真が使われる。

このレントゲン写真はX線を物質に照射し、透過したX線の透過像を撮影したものである。そのため、レントゲン写真は物質のX線の透過しやすさや吸収しやすさが反映される。そして、X線が物質に吸収された部分は白い影となってフィルムに撮影される。

一般的に電子を多くもつ原子ほどX線を吸収する。逆に電子が少ない原子はX線をあまり吸収しない。

そのため、水素H、炭素C、窒素N、酸素Oなどの原子はあまりX線を吸収せずに透過する。

一方でカルシウムCaなどは電子を多くもつためにX線を吸収する。

そのため、レントゲン写真を撮影すると、水素H、炭素C、窒素N、酸素Oで構成されている皮膚や内臓はX線を透過するために、レントゲン写真にほとんど映らず、カルシウムCaで構成されている骨はレントゲン写真に映ることとなる。

胃も通常はX線を透過するために、ほとんどレントゲン写真には映らない。

そこで、人体に無害であり、電子を多く持つ原子を含む物質としてバリウム (硫酸バリウム) などの造影剤を胃に入れる。

こうすることで、電子を多く持つバリウムがX線を吸収することで、レントゲン写真に白い影となり、胃の様子がレントゲン写真に撮影できる。