放射線の比電離度とは
放射線が単位長さ進むときに生じるイオン対の数を比電離度という。比電離度は、1 mmや1 cmあたりの値を用いる。比電離度は放射線の種類やエネルギーによって変化する。α線の場合は、α線が1 atmの空気中を進む場合、1 cm進むときに約104個の気体分子と衝突する。α線が気体分子と衝突したとき、気体分子の軌道電子を励起する以外に、軌道電子をはじき気体分子を正にイオン化する。
α線の線源から、α線が空気中に飛び出したとき、しばらくの間はα線の速度は大きく、比電離度は小さい。空気中を進むにつれて、α線のエネルギーが低くなり、生じるイオンの数が増え、比電離度は増加する。エネルギーの低下が進むとイオン化が加速し、比電離度にピークが現れる。その後、急激に比電離度は低下する。α線は中性ヘリウム原子となって止まる。この現象はα線が線源から放出されてから10-8秒の間に起こる現象である。
α線の飛程とは
α粒子の質量は、電子の質量に比べて非常に大きい。そのため、物質中で進路を曲げられずに、ほぼ直進する。α粒子などの荷電粒子が物質中を進み、停止するまでの到達距離を飛程という。
α線がある物質中を通過するとき、α線の個数がどうなるか、つまり吸収体物質に対してα線が物質にどう吸収されるかを考える。
物質を通過するα粒子の個数はα線が静止する直前まで減少はしない。そして、α粒子が止まる直前にα粒子の個数は急激に減少する。
α線と阻止能について
α粒子などの電荷をもつ粒子が物質中を進むとき、単位距離あたりに失う平均のエネルギーを、その物質の阻止能という。阻止能は入射α線の進行を阻止しようとする物質の能力といえる。
α粒子の運動エネルギーを、α粒子の移動距離をとすると、阻止能は次のように表される。
阻止能を物質の密度で割ると、質量阻止能が得られる。質量阻止能は物質の種類や状態にあまり依存しないものである。
α線の飛程はエネルギーが0になるまでにα線が進む距離なので、質量阻止能とは以下の関係が成り立つ。